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地球の安莉奈とグリーン王国のアリナ


 みんなで手を合わせていただきます。といっても手を合わせたのはわたしと真来とうさっぴーだけだ。


 モフにゃーはもぐもぐタイム中でギャップは「丸呑みタイムをしたいぞ」と舌舐めずりをする。日焼けは、「ぐふふ、美味しそうだな」と言って長い舌でパイを舐めている。もふもふ達よ、いい加減にしなさい!!


「あ、そうだ。真来にうさっぴーちゃん、桜餅をお土産に持ってきたよ」


 わたしは桜餅の入っているカゴをテーブルに置いた。すると、懐かしい桜の香りが部屋の中に広がる。


「アリナ……桜が懐かしいよ……」


 真来は桜餅をじっと眺め目を細めた。その目はいつかの地球にある日本を見つめているかのようなそんな表情だった。真来の目の前に桜の花びらがふわふわと舞い降りた……そんな風景が浮かぶ。


 会いたかった真来がそこにいた。幼いわたしと真来は手を繋いでいる。真来の手は大きくてあたたかくてそして、わたしを守ってくれるそんな手だった。


 お父さん……真来あなたはやっぱりわたしのお父さんだよ。


「わたしも懐かしいよ。日本で一緒に桜を見たね」

「ああ、見たよ。紺色のブレザーの制服に身を包んだアリナとピンク色の桜懐かしいな……」


 真来は今グリーン王国にいるわたしと地球の日本にいた安莉奈を重ねて見ている。


 わたしはアリナなのか安莉奈であるのかわからなくなってきた。


「安莉奈いただくよ」

「へ? いただく?」

「この桜餅をだよ」

「あ、桜餅ね。うん、食べて〜。うさっぴーちゃんも食べてね」

「いただきます」


 真来は頬を緩め桜餅に手を伸ばし口に放り込む。


「いただきま〜す」とうさっぴーも可愛らしい手を伸ばそうとしたその時、「いただきますにゃん」と食いしん坊な真っ白な手が桜餅に伸びた。


「あ、モフにゃ〜」

「うにゃん?」


 首を傾げたモフにゃーのお口の中に桜餅がで~んと鎮座していた。


「あはは、モフにゃーちゃんのもの凄い勢いに負けたよ」


 うさっぴーはお口に手を当てて笑う。


 そのうさっぴーが笑っている隙にギャップと日焼けが手掴みで桜餅をゲットし口に運んでいる。


「わっ、またまたすごい勢いに負けちゃったよ」


 うさっぴーは赤のお花を付けている長い耳を可愛らしい手で触り笑った。ああ、可愛い。真来はこんなにキュートで優しい聖獣うさぎのうさっぴーと住んでいるんだからきっと、幸せだよね。


 そんなこと考えながら真来に視線を向けるとそれはもう幸せそうに桜餅を食べていた。遥か昔日本に住んでいた安莉奈もこうして真来とぱくぱく桜餅を食べていたと思う。


『真来と食べる桜餅は最高だよ』

『俺も安莉奈と桜餅を食べると美味しさが倍増するよ』


 こんな会話をしながら桜餅を食べる父娘だったのかもしれない。


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