わたしの宝物
わたしは、もこもこした茅葺き屋根が可愛らしいほのぼのにこにこカフェ食堂の店内に戻る。
小さな休憩室のテーブルに腰を下ろし先ほど真来が書いてくれた宝物をじーっと眺める。モフにゃーとギャップも可愛らしくちょこりんと座った。
真来の住んでいる家が気になる。うさ聖獣うさっぴーもだ。
「もふもふした聖獣うさぎってめちゃくちゃ可愛いだろうな〜」
ふわふわもふもふな聖獣うさぎは垂れ耳かな? それとも立ち耳かな? なんてことを考えるだけで幸福感に包まれる。
「にゃぬ。わたしの方が可愛いにゃん」
「モフにゃーってば猫ちゃんとうさぎちゃんはまた違った可愛さがあるよ」
「わたしは猫ちゃんと違うにゃん」
「うふふ、モフにゃーは猫聖獣だったね」
わたしは宝物の地図をテーブルに置きぷくっと膨れているモフにゃーの頭を優しく撫でた。
「にゃはは、なんか気持ちいいにゃん」
モフにゃーは目を細めうっとりした表情になる。もうめちゃくちゃ可愛いよ。愛くるしい奴め。モフにゃーともふもふタイムを満喫していると視線を感じた。ギャップだ。
「ギャップちゃんも可愛いよ〜」
わたしはギャップの頭に手を伸ばし撫でた。
「お、俺は可愛いじゃなくてカッコいいんだ」とギャップは文句を言いつつもうっとりした表情だよ。わたしか可愛らしいもふもふ達ともふもふタイムを楽しんでいた。
その時、誰かがテーブルの上に置かれている『わたしの宝物』を見ていることに気づかずにいた。
「おい、アリナ。これはなんだ?」
もふもふなモフにゃーとギャップの頭を撫で撫でしていたわたしの頭上に声が降ってきた。
「ん?」と顔を上げるとお父さんが不満顔でわたしを見下ろしていた。
一体どうしたのかな? 「あっ!!」とわたしは声を上げる。よく見るとお父さんはわたしの《《宝物》》である真来の家の地図を握りしめていた。
「アリナ、この真来の家とは先程のお客さんだよな?」
「う、うん、そうだよ……」
わたしは悪いことなんてしていないのになぜだか胸がドキドキチクッとした。
「あのお客さんと随分親しくしていたね」
そう言ったお父さんのその声はいつもの甘たらしい声と違っていた。
「そっかな」と答えてからお父さんに真来のことをなんて言えばいいのかな? と考える。
「まあ、悪い人ではないと思うが……」
「うん、真来はとっても良い人だよ」
「真来か……それで、アリナはこの真来さんのお家に遊びに行くのかな?」
お父さんは渋っ面でわたしを見る。
「うん、もふもふなうさ聖獣がいるんだって!」
わたしは心を弾ませながら返事をする。けれど、「心配だな」と呟きお父さんの顔は曇ったままだ。
「わたしが付いて行くから大丈夫にゃん」とそれまで黙っていたモフにゃーが言った。
「俺も付いて行くぞ。アリナちゃんを任せておけ」
ギャップもそう言って得意げに胸を張る。
頼もしいもふもふさん達だよ。




