文化祭一緒にまわろうよ!
雪岡君はわたしの好きなひとだ。
クラスで一番かっこいい。
親友のゆりとちかは、
「何言ってるのよ」
と笑い飛ばすけれど、男性の見る目がないよ、二人とも。
今日こそは雪岡君に「文化祭一緒にまわって」と誘うんだ。
こっそりと三人で雪岡君が一人になるチャンスを待つ。
そして放課後にそのチャンスがやってきた。
「さあ、行くぞ」
と小さくわたしがつぶやけば、
ゆりとちかはわたしの背中を遠慮なく叩き、
「いけ!えり!!」
送り出してくれた。
わたしは雪岡君の背中に向かって駆け出した。
一歩足を踏み出すたび、その背中が近づいていく。
胸の鼓動が高鳴る。高鳴る。高鳴る。
心臓がつぶれるんじゃないかと思うくらい。
たぶん顔は真っ赤になっているはずだ。
雪岡君の背中に手が届く距離まで来た時、わたしの足は勝手に回れ右をしてしまった。
ゆりとちかの罵声が聞こえる。
「この根性なし」
「何してんのよ」
わたしは行きより速いスピードで駆け戻り、
「大丈夫よ、文化祭までにはまだ日があるわ」
ゆりとちかに頭をポカポカ叩かれた。
了