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解術師はティーパーティに招かれる④

いつもありがとうございます!

話はまだまだ続きます!



(はぁ?! 皇太子殿下って?! そんなの聞いてないわ!!)


 ルディアナが皇太子殿下を知らせる声に驚くと、ティーパーティに来ていた貴族達も色めき、扇子の下で騒ぎだした。


「ーーっ、な、なんて幸運なの! 何としても、殿下にお声をかけて頂かなくては!!」


「皇太子殿下は、忙しくてなかなか御目にかかれないのよ! あぁ、なんてこと!!」


 今までルディアナを馬鹿にしてきた令嬢達の視線は、一斉に突如ティーパーティに参加してきた皇太子に釘付けになった。


(うわぁ…っと! 何にも事件が起こらなければ良いけれど…)


 ルディアナは予定にはない皇太子の登場に顔が青ざめた。しかし、幸か不孝か今日のティーパーティには皇族に敵対する勢力はほとんど参加していない。

 ルディアナは今一度、貴族夫人と令嬢達の様子を観察したが、危険分子はいなさそうで、とりあえず安堵のため息をついた。


「「まぁ!!」」


『ーー、落ち着いてるところ悪いけど、ルディ? あんたに向かって、コーエンのボンボンが真っ直ぐ歩いて来てるわよーー』


 突如周りが騒がしくなったと感じたルディアナが、アノンの言葉に顔を上げると、こちらに歩いて来たノアレイアスと目があった。


「あぁ! ノアレイアス様が、今、こちらを!!」

「いえ! 私を見ていたのよ!!」

「もう! 私だってば!!」


 同じテーブルの令嬢達が慌てふためいて、興奮の声を上げ出した。


「ねぇ、まさか、こっちに、きてる?」


『その、まさかね。ルディに向かって来ているに決まってるじゃない』


 ルディアナが恐る恐るアノンに確認すると、アノンはあっさり肯定した。

 皇太子の側近であるコーエン公爵子息のノアレイアスが、皇太子と共に皇宮の庭園で開かれているティーパーティへ一緒に現れてもおかしくはない。

 けれども、皇太子は皇妃に挨拶をしに上座に向かい、何故かコーエン公爵子息のノアレイアスは下座のルディアナへ向かってきている。何が起こっているのか、ルディアナにはさっぱり理解が追い付かなかった。

 ルディアナは、恐ろしいものでも見るように、ずんずんとこちらに歩いて来るノアレイアスを見つめた。


「こんにちは、レディの皆さん。急に現れて、場を壊してしまったかな?」


「「いいえ!!!」」


 テーブルにやって来たノアレイアスに、かなり食い気味に令嬢達が否定する。令嬢達の目は獲物をギラギラと狙う獣のようで、ルディアナにとってはとても恐ろしい。ノアレイアスが現れたことで、令嬢達が色恋や策略といったオーラを纏い出したのだ。

 令嬢達は我先にと頬を紅潮させて、ノアレイアスに自分を売り込もうとどんどん話しかけ出した。

 けれども、令嬢達のそれとは逆に、ルディアナは次第に気分が悪くなり、顔色も酷いものになってきた。


(うー。やっぱり、令嬢達のオーラは気分が悪くなるわ……)


 キラキラと王子様オーラを振り撒くノアレイアスは、貴族令嬢にチヤホヤされるのも、受け流す事も長けている。

 ノアレイアスとは幼馴染みで、この見慣れた光景にルディアナはうんざり気味になった。


(ノアってば、早くここから立ち去ってくれないかしら……!! オーラ酔いしてしまうわ!!)


『このテーブルで、しかめっ面してるのはルディくらいよ…』


 どうせ他の令嬢達はノアレイアスを見ているのだ、ルディアナの態度を咎める人間はいない。

 そう、思っていたルディアナは遠くから視線を感じた。ふいに視線をそちらに回せば、上座で微笑みながらこちらを見ている皇妃と皇太子と目が合う。


(何か、とーっても、嫌な予感がするんですけれど…?)


「ルディも、久しぶり」

「……」


(聞き間違えよ…。ノアは私の名前を呼んでなんか……)


 直ぐ近くでルディアナは名前を呼ばれたが、視線は皇妃と皇太子の上座にある。聞こえなかった事にして、ルディアナはノアレイアスを遣り過ごしたかった。

 そんな強張った顔のルディアナを皇妃と皇太子は面白そうに眺めていた。


「おい、ルディ?」

『ーーちょ!ーーっ、ルディ!!』


 アノンに耳元で呼ばれて、壊れた人形みたいに、ぎぎぎ…と首を前に戻せば、いつの間に距離を詰めたのか、目の前にノアレイアスが立っていた。周りの令嬢達の妬むような視線を痛いほど感じて、ルディアナは冷や汗が出る。


(ヤバい…、ノアってば、何でこんなに近いのよ…!?)


 ルディアナが公の場で目立ちたくないために、ノアレイアスを知らんぷりすることはこれまでも数えきれない程あった。だから、今回もノアレイアスがルディアナに執拗に近づいて来ることはないと、ルディアナは油断をしていた。

 なのに、今日はルディアナを逃がす気持ちはないらしい。

 冷や汗をかくルディアナとは対照的に、ノアレイアスは、小憎たらしい程に爽やかな様子で、嬉しそうにルディアナに再度声をかけた。


「ルディは、しばらくぶりのティーパーティーで、私の声も届かない程に疲れてしまった様子だ」


「あ、あ、あ…。ノア、レイアス久しぶり…」


 黄金の髪をさらさらと風に靡かせながら、ルディアナに優しく話しかけるノアレイアスとは真逆に、令嬢達の顔は悪魔のように段々と恐ろしくなる。


「コーエン公爵家のご子息を呼び捨てとは…」

「子爵令嬢ごときが、声をかけられて、付け上がって…!」


 扇子の下から漏れ出るルディアナに対する罵倒にルディアナは逃げ出したくなった。解術師として、この場を監視する以上、目立たないように遣り過ごすつもりが、ハイスペックな幼馴染みの登場で予定が台無しだ。


(私、悪目立ちしちゃってる!!)


「おや? 私の親しい友人は、ますます顔色が悪くなったようだ…。失礼、レディ達。親しい友人をお借りしても…?」


「え…!? えぇ…。体調が、優れないのでは、仕方ありませんね…」

「うっ…。そうですわ、ね…。どうか、お大事に…」


 アワアワと慌てるルディアナをしれっと無視し、ノアレイアスはルディアナを席から立たせた。令嬢達の悪態はノアレイアスにも聞こえていたのか、微笑みながらも、目が据わっている。

 同じテーブルの令嬢達も、異議を唱えたいと思いながらも、皇族でもあるノアレイアスを怒らせるのは得策とは思えず、頷くしかなかった。


『はぁーー。親しい、親しい、って、必死にアピールし過ぎよ…。ほら、皇妃も笑ってるわ…』


 アノンのため息混ざりの言葉に、ルディアナが抜けかけていた意識を奮い立たせた。


(はっ?! 皇妃様の許しなく、この場を離脱するなんて!!)


 上座で微笑みながら様子を見ている皇妃に、ルディアナがカバっと目を向けた。すると、皇妃はにこやかに扇子を揺らした。


(あぁ、先程までのボロボロに割けた扇子は、交換されたのね…)


「良い。アルム子爵令嬢、ルディアナ。気分が回復するまで、ノアレイアスに庭園でも案内させなさい。なんなら、そのままノアレイアスに帰りを送って貰いなさいな」


 ルディアナが皇妃の扇子に意識を飛ばし、現実逃避している隙に、皇妃はノアレイアスとルディアナでパーティーを離れることをあっさり許可してしまった。


「かしこまりました。さぁ、ルディ。手を」


「う、へ? 手? あぁ、手、手ね…」


 ノアレイアスのエスコートの申し出に、もはやティーパーティー参加者全員の視線を集めているルディアナは挙動不審になりながら手を預けた。

 解術師として令嬢達のオーラをチェックするはずが、嫉妬に顔を歪める令嬢達が怖くてオーラチェックもままならない。

 自分はまだまだ修行が足りないな、と落ち込みながら、ルディアナはノアレイアスに引かれるようにその場を後にした。

読んで頂きありがとうございました!

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