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解術師は舞踏会が嫌い④

いつもありがとうございます!


「本当に、ルディが無事で良かった……!!」


 アマリアは控え室に戻るとすぐに、ルディアナをぎゅうぎゅうに抱き込んだ。

 潜入捜査に当たる3人には、アノンから思念が飛ばされた。控え室にいる間に、不審者がルディアナの元を訪れたと知らせたのだ。そのため、アマリアは捜査中も、ルディアナの事が心配で生きた心地がしなかった。


「まぁ、ルディアナも無事だと分かったことだし…、ほら、アマリア落ち着いて……」


「で、でも、ユーリ、ルディをこんな目に会わせてしまうなんて…」


「分かったから、とりあえずここからの撤収が先だよ? もちろん、ルディアナの安全のためにもね? さぁ、無事にこの屋敷から、不正の機密文書も手に入れたしーーそれに、この書類が消えたと、いつ彼らが気がつくとも限らないだろう? 舞踏会が終わる前に、そろそろ引き揚げよう」


 ユーリナスはそう言うと、ルディアナにぎゅうぎゅうに抱きついてるアマリアを、ぺりっと引き剥がした。


「ルディアナは俺が連れて引き揚げる。アマリアとユーリナスとは別ルートで皇宮に戻ろう」


 怪我1つなく部屋に戻ってきたカイルアンは、素っ気なくそう言うと、いそいそとルディアナの手を引いて部屋を出ていこうとした。


『『ちょっと、あんた、留守を守ったのを感謝くらいしたらどうなの?』』


「アノン様、ありがとうございます!!」


 アノンがルディアナの手を引いたカイルアンを面白くなくて引き留めた。すると、アノンの思案とは裏腹に、ルディアナを酷く心配していたアマリアが大きな声で感謝を述べた。


(『カイルアンも、妹のアマリアを見習って、私をもっと敬いなさいよ!』)


「ちょっと、カイルアン、待ってよ! アノンも、リアもユーリナスもお疲れさま、あと!ありがとう! また後で、皇宮でね」


 アノンの機嫌の悪さを一日中感じていたルディアナも、慌ててアノンに御礼を伝えた。すると、カイルアンが再び、ルディアナを引っ張って歩き出したので、ルディアナは引き摺られるようにして部屋を後にした。



 ◇◇◇◇◇



 舞踏会の行きは、皇宮の職員寮に迎えに来たナダリア侯爵家の馬車にルディアナは乗ってきた。車中では、ルディアナとナダリア侯爵家のメイドとの2人で和やかに世間話をしながら、ママル家まで送ってもらったのだ。

 ルディアナのパートナーはカイルアンだったのだが、侯爵家の嗣子であるカイルアンは、皇宮の職員寮になど住んでいない。そのため、舞踏会での現地集合になったのだ。

 しかし、帰りの馬車では、カイルアンとアノンの小言を聞きながらの帰宅となってしまった。カイルアンは無口で、アノンの浮遊しているであろう場所を睨んでいるし、馬車の雰囲気は最悪だった。長々と続くアノンの口撃にルディアナは、ほとほとウンザリし耐え続けた。




「ーーげっ…!」


「おい! その態度はなんだ!! お前、ルディを勝手に舞踏会に連れていったそうだな? カイルアン=ナダリア!!」


 皇宮の高職管理課の部署の入り口の前では、鬼の形相をしたルディアナの兄のスダナ=アルムが、潜入捜査隊の帰りを待っていた。カイルアンはスダナの姿を見た瞬間、急いで踵を返そうとしたが、一足遅れ、アルム家特有の直感により見つかってしまったのだ。


「あれ? 兄様、どうかしたの? 高職管理課に何か用事が?」


 ルディアナは何故、自分の兄が怒って、高職管理課の前で立ちはかっているのか、全く分からない。そのため、今日は家族で食事する日だっけ? と検討違いの考えにたどり着いていた。


「ーールディ、今日はカイルアンのエスコートで、ママル家の舞踏会に出掛けたんだって?」


「へ? そうだけど…。兄様、なんで知ってるの?」


 ルディアナは兄が自分の行動を把握している事に素直に驚いた。


「アノン様から、連絡をもらったんだ! カイルアン、無断でルディアナを舞踏会に連れ出すなど!! エスコートするならアルム家の当主に許可を採るのが筋であろう?!」


(なるほど!アノンから思念が兄様に届いたのね! ーーでも、、)


「ーーあ、兄様、でも、任務なのよ?」


「任務でもだ! お前も、貴族令嬢ならそれくらい覚えとけよ!」


 カイルアンをフォローするように見えたのか、ルディアナの言葉に兄のスダナは怒りの矛先をルディアナにも向けた。


(あー、兄様を怒らせちゃった…怒ると長引くのよね…)


「ーーあれ? でも、そもそもカイルアンなら女の子達をエスコートするのも多いでしょう…? なんで、アルム家への連絡忘れちゃったの? 忙しかった?」


 カイルアン=ナダリアは侯爵家の嗣子なので、いくら他者が恐れる高職管理課の所属でも、貴族令嬢にとっては花婿にしたい有望株なのだ。なので、未婚女性のエスコートの仕方なら、完璧に把握しているのではないのか、とルディアナは不思議に思った。


「アルム家に連絡したら、俺のエスコートを反対するだろう? だからーー」


「ーーっ! お前!!」


 まるで、アノン家のせいだと言わんばかりのカイルアンの言い訳に、スダナはとうとう頭に血が上り、カイルアンの胸ぐらを掴んだ。


(まずい! いくら気心知れていても、こちらは子爵家。カイルアンの侯爵家を敵に回すのは!)


 鈍いルディアナにも、この状況の不味さが理解出来た。けれど、どうやって2人の苛立ちを収めれば良いのか見当もつかない。


「ーースダナ殿、この度は申し訳ない。後で、こちらからも詫びを正式に入れよう……。今日は潜入捜査帰りで、2人とも大変に疲れておる。申し訳ないが、今日はお引き取りを願う…。ーーカイルアン、急いで、事の報告を」


 廊下での騒ぎを聞き付けてか、ドリナス侯爵が執務室から駆け付けたらしい。2人のやり取りに肝を冷したルディアナは心底ほっとした。


「こんな遅くまで、ドリナス侯爵閣下がいらっしゃるとは…。ルディ、この件は日を改めるよ。僕は帰って、父上に報告をさせてもらう」


「ーー兄様、お気をつけて」


 スダナはそう言うと、カイルアンをひと睨みして皇宮の馬寄に向けて歩き出した。

 なんとか、挨拶を返したルディアナにスダナはプイッと視線を背けた。今回の件に対して、スダナの怒りは収まっていないようだ。


(父上に報告をするなんて。エスコートって言っても、業務の一貫なのに…)


「ーールディアナ=アルム、君は疲れているだろうから、寮に戻っても良いぞ」


 兄を怒らせて、色々と頭を悩ませているルディアナを舞踏会で酷く疲れていると、勘違いしたドリナス侯爵はルディアナに帰宅許可を出した。


「ーーっ! すいません。私からは、特に変わったオーラや呪詛は見当たりませんでしたので、お言葉に甘えて、失礼させて頂きます」


 上司であるドリナス侯爵を前にして、考え事をするなどもってのほかだ。これ以上、失態を晒す前に撤収した方が良さそうだ。


「あぁ、お疲れさま」

「ちゃんと、まっすぐ寮に戻れよ」


 ルディアナは、ドリナス侯爵への報告をカイルアンに託すことにした。皇宮で会おうと約束したアマリアには申し訳なく思ったが、ルディアナはそそくさとその場を後にした。

読んで頂きありがとうございます!

まだまだ話は続きます。

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