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解術師は舞踏会が嫌い③

いつもありがとうございます!


「良いこと? ルディはこの部屋からは出ては駄目だからね!」


 しばらくして、アマリアとユーリナスと合流した、ルディアナとカイルアンは作戦通り、控え室に移動した。そこは、本来なら恋人たちが秘密の会瀬を楽しむ場所であり、大きなベットまで備え付けられている。

 そんな如何にもな部屋で、気心知れた幼馴染み4人が潜入捜査に向けて、最終確認をしていた。


「大丈夫よ? 子供でもあるまいし。ちゃんと、部屋に鍵をして待ってるって」


 ルディアナが2つ歳上のアマリアに軽く返事をしても、アマリアは心配で堪らないっといった表情のままだ。ソファに座るルディアナに、引っ付いてなかなか離れない。


「でも、ルディに何かあったりでもしたら…! あぁ、なんでカイルってば、ルディをこの作戦に担ぎ出したの? …自分がルディと踊りたいだけじゃない…!」


(へ? 最後の方が良く聞こえなかったけれど…)


「ごほんごほん! リア、君がルディアナを心配するのも無理はない。けれど、もうすでに作戦中なんだ、落ち着こう?」


「だって! ユーリ! 心配なんだもの!」


 アマリアが未だ、カイルアンを睨みながらぶつくさ言っているが、本人はそっぽを向いて知らんぷりをしている。

 このままでは埒があかないと、いつまでもルディアナの側から離れようとしないアマリアをユーリナスがぺりっと引き離した。


「リア、私は大丈夫よ? アノンも側にいるから、3人はごゆっくり任務を遂行してきてちょうだい」


 もう一度、アマリアにルディアナが声をかけてもアマリアの表情は優れない。

 ユーリナスがなんとかアマリアの腕を掴んで立たせても、アマリアは後ろ髪引かれるように、ルディアナの側に戻ってくる始末だ。


「っ! ルディ! 絶対、私達が戻るまでドアを開けては駄目よ!! アノン様も、くれぐれもルディをよろしくお願い致します!!」


「はぁー、いいから、早くしないと作戦遂行出来ないんだけど?」


 アマリアは見えてはいないはずのアノンに、必死にルディアナを頼んだ。そのやり取りをカイルアンが面倒臭そうに突っ込む。


「カイル! ルディを作戦に巻き込むなんて! 帰ったら、覚えときなさい! アノン様、どうか!」


『『はい、はーい! ちゃんとルディと留守番してるわ!』』


「よろしくお願いします!!」


 アマリアはカイルアンに強く当たると、アノンにもう一度ルディアナを頼んだ。

 ユーリナスは今度こそ、アマリアを掴まえて、部屋を出ていった。


(ーーこの作戦に私を巻き混んだのは、ドリアス侯爵じゃなくて、カイルアンが言い出したって事なの?)


「ルディアナ、ドア、ちゃんと閉めろよ。 何かあれば、俺等を気にせず、逃げていいからな」


 カイルアンはそう言うとルディアナの頬を撫でた。ルディアナがきょとんとすると、少しだけ笑って部屋を出ていった。


『ーーカイルアン、あの小僧…』


「アノンも、この作戦に巻き込まれたの、嫌だった?」


 急にイライラし始めたアノンに、ルディアナが検討違いの質問をすると、アノンは頭を抱えた。


『違うわよ…、カイルアンの態度が気になるの!ーーどうすんの、この鈍い頭…』


 以前からカイルアンは、高職管理課の業務時間やそれ意外でも、ルディアナにちょっかいをかけていた。

 アノンはカイルアンと仲良さげなルディアナに、カイルアンが好きなのか何度も聞いた。しかし、いつもルディアナは、カイルアンとはただの幼馴染みだと答えていたのだ。

 そう、ルディアナ当人は、カイルアンを全く異性として1ミリも気にしていなかった。

 一方、アノンは今回の潜入捜査から、カイルアン=ナダリア侯爵嗣子は、ルディアナに御執心だと確信した。


『ナダリア侯爵家がコーエン公爵家を敵に回す事はないと思っていたけれど…』


「っ! えっ! なに?! その両家って本当は仲が悪いの?!」


(『本当に解術と除霊意外はポンコツね…』)


 カイルアンが自分に気があることなど、想像もしていなさそうなルディアナを、アノンはとりあえず無視をするとこにした。そして、ルディアナに代わり思念で部屋の鍵をかけた。



 ◇◇◇◇◇



 コーエン公爵がアルム家にルディアナとの縁談を持ちかけたのは、だいぶ前の事。当時は、ルディアナが解術師の駆け出し中であったため、アルム家の当主ーールディアナの父親が縁談を保留にしていた。全ては、ルディアナが1人前の解術師として成長した時に、本人に伝えるとコーエン公爵に返答していたのである。


(『皇帝も、解術師を皇族であるコーエン公爵に縁付かせることに、もろ手を挙げて賛成してるのに…』)


 まさか、ナダリア侯爵家がルディアナを次の侯爵夫人に狙うとは、アノンも驚きである。


「ーーねえ、アノン? 聞いてるの!?ーー」


 ◆コンコンコン…◆


「ーーすいません、もしよろしければ、部屋を少しだけ、お借りしたいのですが……」


 アノンが考えに耽っていると、部屋の外からノックが聞こえた。

 若い女性の声であるが、アノンにはこの女の他に3人の屈強な男の姿が見えた。


(『もしかしたら、高職管理課の4人が仲良く部屋に入ったことを見ていた人間がいたのかも?!ーーママル家が偵察に来た?!』)


『ーールディ! これは、ヤバイかも! 女の他に3人の大男が見えるわ!! 探りが来たのかも!!』


「ーー!!ーーど、ど、どうする?ーー! あっ、そうだ!!」


 アノンの慌てた返答に、ルディアナは素早く状況を把握した。

 ルディアナは急いで部屋のバスルームに駆け込むと、扉を開けたまま大量のシャワーを流し始めた。そして、いきなり1人で大声で話し始める。


「ーーきゃー! ちょっと、もう!! あーー」


 バスルームに反響するシャワーの音と女の声。部屋の外には、仲睦まじく、控え室を使っている様子が伝わるだろう。


「ーーこの部屋では、ないようだな。次の部屋を当たろうーー」


 アノンは、部屋の外から、先ほどの問いかけの女とは違う、男の低い声を拾った。そして、4人が部屋の扉から離れて行くのを感じた。


『時々、ルディの奇想天外の働きが上手くいくのよね…』


「ーーねえ? 上手くいったかな?ーー」


 色恋など全く興味ない癖に、見事な芝居っぷりを見せたルディアナは小さな声で、アノンに訊ねた。

 部屋の外の人間が、他所に行ったのか自信がないのだ。


『上手くいったわよ? 他の部屋を当たるみたい…それにしても、そんな猿芝居、良く通用するもんだわ』


「もう! 猿芝居って、酷くない? ほんとアノンは辛口たんだからーー。でも、これでママル家の関係者が黒ってことになるわね。カイルアン達の調査は無駄ではないってことだわーーって、いけない!! ちょっと、勿体ないから、私シャワー止めてくるわ」


 律儀に水の節水のため、シャワーをいそいそと締めるルディアナを見て、アノンはルディアナが変な所が真面目だなとつくづく思った。

読んで頂きありがとうございます!

まだまだ話は続きます。

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