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解術師は皇太子の執務室で休む②

いつもありがとうございます!

話はまだまだ続きます!



「ずいぶん、周りに見せつけるようにして登城してきたんだね? この窓から見えるだけでも、周りの人間の動揺が伝わってくるよ」


「まぁまぁ、ノアレイアス殿にとっては、ルディアナ嬢との待ちに待った念願のご婚約なのです。余程、嬉しかったのでしょう」


 ルディアナを皇太子の執務室に送るなり、直ぐにノアレイアスは高職管理課へと、報告に出向いてしまった。

 執務室に置いていかれたルディアナに、皇太子のロイドレアンは面白そうにからかった。そして、側近のシャーウッド侯爵の後嗣、ハリーもまた追い討ちをかけるように更にルディアナをからかった。


「…、あの、お騒がせをしまして、ごめんなさい?」


 ルディアナはハリーとの接点がなく、そのからかいに怒っても良いのか悪いのか判断がつかない。恥ずかしさと混乱で、助けを求めるように、ロイドレアンに目をやれば楽しそうに笑っている。


「あはは! 僕より、ハリーへの対応に困ると見える!! ーーハリー、ルディは僕の幼馴染みだ。公式な場面でない限り、ルディには砕けた口調で接するよう許可をしている」


 からかいに挙動不審になったルディアナに、なるほどとハリーは納得した。

 そもそも次期コーエン公爵夫人になる予定の人間であるルディアナは、皇太子との私的な会話で畏まらなくても良いとハリーは考えていた。


「分かりました。では、私にも、砕けた口調で接するようお願いします。許可をされている皇太子であるロイドレアン殿下の側近である私に、敬語は不要ですので」


 ハリーはそう言うと、ペコリとルディアナに頭を下げた。ルディアナは侯爵家の中でも、皇帝の信頼が厚いシャーウッド侯爵家の後嗣が頭を下げたことに酷く動揺した。


「…あっ、あの! シャーウッド侯爵家の方に! 馴れ馴れしくは出来ません!!」


 どうにか存続しているアルム子爵家と比べると、雲泥の差の身分に、ルディアナは縮こまる気分だ。


『…ルディ、あんた、皇太子を敬わず、侯爵家の人間を敬うことになるわよ…』


「ぷはっ!!」


 アノンが見かねて、ルディアナの耳元で囁けば、その言葉が聞こえていたロイドレアンは堪らずに吹き出した。


「殿下…?! まぁ、ルディアナ嬢には、追々慣れて頂きましょうか」


 急に吹き出したロイドレアンにハリーは戸惑いを見せた。シャーウッド侯爵家は飛ぶ鳥を落とす勢いがあるが、皇族との血縁は限りなく薄い。そのため、アノンの姿も思念も分からないのだ。

 アノンも、ルディアナが混乱に陥ると考え、側で大人しくしていたが、ルディアナのダメダメ具合に耐えかねず、突っ込みを入れたのだ。


「そうだ! ルディに、珍しいお菓子を用意してあるんだ!! ハリー、ティーセットを4人分用意を」


 一頻り、笑った後、ロイドレアンはハリーにお茶の指示を出した。ハリーは、直ぐに侍女に指示を出すも、何だか納得していない表情になる。


「殿下、ノアレイアス殿の分は後で準備をさせた方が…」


「構わない、4人分で良い」


 ハリーはノアレイアスが執務室に戻るまで、お茶が冷めてしまうと言いたいのだが、ロイドレアンは訂正をしなかった。


『分かってるわね、ロイド!』


 その対応にぷよぷよと浮遊していたアノンはご機嫌だ。元皇女であるアノンは珍しいお菓子には目がない。

 アノンはご機嫌な様子で、ふんふんと鼻歌交じりに、侍女によって準備されていくティーセットを眺め始めた。




 ロイドレアンが毒味もなくティーセットに手を出した事に驚くハリーを尻目に、ルディアナも美味しそうなお菓子と紅茶に舌鼓を打った。

 ルディアナはティーセットを準備した侍女とハリーのオーラ、ティーセットの様子を見て問題ないと判断し、ロイドレアンにこっそり目配せをしていたのだ。


「…あの、ロイド? カレンディア様のご様子を聞いても良い?」


 紅茶を飲んで一息ついた後、ルディアナは皇女の事件後の様子を尋ねた。皇女の兄であり、皇太子のロイドレアンならば、事件の詳細を1番に報告されているはずである。

 昨日の皇女の様子では、取り乱すこともなく落ち着いているように見えたのだが、自身の婚姻先に関わる事件に胸を痛めているのではないかと思っていたのだ。


「うーん。僕の妹を案じてくれるのはとても嬉いんたけれどね? 僕としては、ようやく婚約に進んだルディアナとノアレイアスとの報告を聞きたいなぁ…」


「そうでございますね。皇女様の件では、皇女様のご無事よりも、ルディアナ嬢がどうして茶席に同席されていたのか、怪我はないのかばかりで…。繰り返し護衛騎士に尋ねて、困らせていらっしゃいましたから」


「それも、ものすごーく、必死でな! 騎士達もあまりの勢いに驚いていたよ!」


 ルディアナの質問にロイドレアンは答えることなく、ハリーと2人で昨日のノアレイアスの様子を思い出してクスクス笑い始めた。ルディアナは恥ずかしさで、いたたまれない。


「…、本人に重々注意しておきます…」


「いや、面白いものが見れたから。ルディには感謝しているよーーで、カレンディアの様子だったかな? それとも、事件の詳細を説明した方がいい?」


 ルディアナが穴があれば入りたいと、うつむき始めたところで、ロイドレアンが急に話を元に戻した。

 ルディアナはビクッとして顔を上げると、ハリーも驚いた様子でロイドレアンを見ていた。


「誘拐未遂のあらましを知りたいんだろう? 昨日の今日で、全てを把握してる分けてはないけれど…。ルディには今後関わると思うから、耳にしておいた方が良いかもね」


「しかし! ルディアナ嬢はその場に居合わせて、ただ巻き込まれただけでは? ご令嬢にご負担になるようなこと…!」


 ロイドレアンが事件の詳細をルディアナに説明するのが意外だったのか、ハリーが慌ててロイドレアンに意見した。

 ロイドレアンはそれを手で制すると、ハリーも諦めたように再度口を開くことはなかった。


(ハリー様は私が解術師だと、聞かされてないのね)


 ロイドレアンの側近であるハリーはルディアナが解術師であると聞かされているのではと、考えていたが違うらしい。なぜ、ロイドレアンがルディアナに詳細を伝えるのか理解に苦しんでいる様子だった。


「ーーゾイド国が数年前に、王政から共和国になったのは知ってるよね?」


 ロイドレアンのいつにない真剣な表情に、ルディアナにも緊張が走る。


「えぇ、もちろん。その後、共和制が上手くいっていないことも。旧貴族が共和制のトップに立ち、不正が横行しているとか」


 ルディアナが真剣にロイドレアンの質問に答えると、その的確な内容にハリーは目を見張った。

 しかし、ロイドレアンとルディアナの割って入れない空気感に口をきゅっと結んだ。

 ロイドレアンはそんなハリーに満足そうに頷き、ルディアナに視線を戻した。


「さすがルディだね。その通りーーゾイド国は民の不満が爆発寸前なんだ。旧王家をもう一度、担ぎ出そうとするほどにね」


 ゾイド国は東の島国の集合体で、貿易を中心に発展して来た国だ。国民の力が比較的強く、いつかは反乱が起こると、高職管理課にも報告がされていた。

 けれど、旧王家を政権に復帰させるのは無理だとルディアナは思った。クーデター後に王族は全て処刑になったはずである。


「ゾイド国の王家は既に粛清され、クーデター後に処刑になったと聞きましたが? もしや、生き残りがいるのですか?」


 ルディアナの言葉にロイドレアンは頷き、ルディアナは理解が早いねと褒め称えた。


「さすがルディ。その通り。王家の隠し子、カトレア王女が見つかった。ゾイド国の首脳はバラン国の王子とその姫の縁を結びたいらしい」

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