解術師は次期公爵に恋われる③
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『はぁ、ルディは、もう少し自分が周りにとって大切な存在だと、自覚すべきね…』
状況を全く理解出来ないルディアナにアノンは軽くショックを覚えた。
「えぇ? それは、大丈夫よ? お父様もお母様も、スダナ兄様も、サルマ夫人も私の事を大切にしてくれているわ!」
『なら、その人間が今回の事件を知ったら? ルディが危険な目に合ったと知ったら? 心配するでしょうに…』
「っ! ヤバい!!」
アノンの話にようやくルディアナは、実家のアルム家が心配してる可能性に辿り着いた。
今になって大慌てで、侍女を呼ぼうと腰を上げる。
『…もう、、、アルム家には私から思念を送っておいたわ。ルディは怪我もなく無事で、しばらくコーエン公爵家にこのまま残るって』
思ってもみなかったアノンの言葉に、呼び鈴を持ったままルディアナは硬直した。
「えぇ? それで、家は納得したの? それに、私、もう、そろそろ皇宮の寮に戻ろうかと…」
体調不良も治ったのだ。幼馴染みの家にいつまでも居候はしていたくない。ましてや、社交界きっての婿にしたい男ナンバーワンのノアレイアスと1つ屋根の下なんて、世間から何を言われるのか怖くて堪らない。
けれども、アノンは無性にも、そんなルディアナの考えを撃ち砕いた。
『無理ね。カレンディアが許さないわ。あの子も、コーエン公爵家にしばらく居座る予定なのよ。その側付きにルディを指名してきたわ』
「ーー?! 皇女の側付き?! って、カレンディア様、皇宮に戻られたのでは?!」
急な話の展開にルディアナはついていけない。そもそも、コーエン公爵家に皇女が居候するなんて意味が分からない。
『大丈夫、カレンディアの予定がどこで漏れたのか、分かるまでの期間限定よ。皇宮にカレンディアを置くよりも、コーエン公爵家に置いて、ちょうど居合わせたルディに見張らせるのが良いと陛下が判断されたわ。既にカレンディアには皇宮は安全ではないと判断したんでしょうよ』
(ーー陛下の裁断がなされてしまったの…?)
「あの…、でも、私は子爵家の娘なのよ…? カレンディア様にお仕えするには身分が低すぎるし。普通なら、伯爵家の令嬢達がお側でお世話をするんじゃない? それに、護衛ならアマリアの方が側付きに適任よ」
ルディアナはいくら皇帝陛下の命令でも、突拍子過ぎる内容に理解が出来ない。同じ高職管理課の人間なら、ナダリア侯爵家のアマリアが側付きに適任だと思った。
ナダリア侯爵家の人間は幼い頃から、護衛や護身術を叩き込まれている。誘拐未遂があったカレンディア皇女の護衛にはもってこいだ。
『もちろん、ナダリアの娘もカレンディアの護衛にあたるわよ? ルディが、皇女の護衛なんて出来ないって、ノアレイアスも陛下に言っていたし』
「…そうでしょ! どうしても解術師の能力が必要なら、皇宮から私が毎日通えば良いと思うわ!」
暗殺業に秀でたナダリア侯爵家が護衛に当たれば、カレンディアの守りは完璧ではないのかと思われる。
アマリアがカレンディア皇女の側に常に立つならば、今日のように、なにかしら動きがあっても、カレンディア皇女に危害はないだろう。
黒幕を知りたいならば、後で証拠品を検査するなりして、ルディアナが動いても良いような気がしてならない。
『ノアレイアスが粘ったのよ。ルディは公爵家にそのまま置いておきたいって』
「ーーはっ?? なんで、私?」
(ー?! もしかして、カレンディア様とノアレイアスとの秘められた恋…とか噂にならないように…!!)
ノアレイアスは未婚の王族に連なる人間だ。カレンディア皇女とも歳が近いため、2人が同じ屋敷で過ごすとなれば要らぬ憶測を呼ぶことになるだろう。カレンディア皇女は同盟国のバラン国の王子との婚約をしている。噂は厄介な火種に成りかねない。
「じゃぁ、私は、2人の距離が近くならないようにする緩衝材か何か、ということ? あっ、でもアマリアもコーエン公爵家に住むのよね? それはそれで、ちょっと嬉しいかも」
アマリアはルディアナの解術師の能力を知る中でも、歳が近く仲の良い友人だ。アマリアもコーエン公爵家で過ごせば、ミニ旅行みたいで楽しそうだと、ルディアナは単純に考えた。
けれども、またアノンの言葉にルディアナは撃ち砕かれてしまう。
『ルディの思考が違う方向へどんどん突き進んでいるのは良く分かったわ。はぁ…、詳しくは、ノアレイアスに聞きなさいなーーちなみに、アマリアはコーエンの屋敷に住まないわよ』
「なんで!!」
せっかく、コーエン公爵家での楽しみを見出だしたと言うのに、ルディアナの希望は尽く叶わない。
『アマリアはドリアス侯爵家の嗣子と婚約中なのよ! コーエン公爵家に泊まれば変な噂がついちゃうじゃない』
「えぇ! 私も未婚の一応貴族令嬢なのに…くそぅ! ユーリナスめ!」
いつもは、ドリアス侯爵家のユーリナスには悪態をつかないルディアナも、アノンに希望を全て否定されるため、かなり面白くない。
「もう良いわ。ここは、弱小子爵家が犠牲になりましょう…! これで、嫁に行けなかったら、良い嫁ぎ先を宛がえと、コーエン公爵家とカレンディア様に泣きついてやるわ!」
ルディアナはベッド脇のグラスから水をぐびぐひ一気に飲むと、やけくそまみれに言い放った。
アノンは未だにぶつぶつと悪態をつくルディアナを残念そうに見ていたが、コーエン公爵家に近づいてきた一騎に気がついた。
そして、ある程度のこれからの概要をルディアナに伝えた事に満足し、一方的にルディアナとの思念を切った。
『…まぁ、ルディの嫁ぎ先は、決まってるんだけれど。私から伝えるのは良くないわね…』
馬に蹴られてはならないと、これからルディアナの部屋に乗り込んで来よう人間に思いを馳せた。そして、ルディアナに気がつかれないように、そっと壁へと姿を消した。
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