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解術師は次期公爵に恋われる②

いつもありがとうございます!

話はまだまだ続きます!



 あっという間の不審者の捕縛に、残されたルディアナは焦っていた。


(キャロラインはコーエン公爵家の令嬢だから、解術師の能力を知ってるけれど…)


 明らかに動揺しているルディアナとは逆に、キャロラインはとても落ち着いていた。


「とりあえず、ルディアナお姉さまです…!! 曲者の前に立ちはだかるなんて、何て危険な振る舞い。お兄さまからお叱りを受けると覚悟してくださいませ、ね?」


「っ! えぇ、分かったわ」


 キャロラインの有無をいわせない強い口調とオーラに、ルディアナは返す言葉が見つからなかった。


「ソニア様は、この度の事、決して口外なさらぬように。ゾイド国とバラン国の要らぬ争いにつながる故」


「もちろんよ。誰にも言わないわ! でも、どうしてルディアナ様は、侍従が違うと気がついたの…?」


 キャロラインの言葉にソニアは直ぐに口外しないと約束したが、どうしても、直ぐに曲者だと反応したルディアナの行動が気にかかるようだ。


「ルディアナお姉さまについては、極秘事項でございます。お訊ねになさりたいならば、皇帝陛下にお願い致しますわ!」


 ソニアの問いをピシャリと撥ね付けるようなキャロラインの言い様に、ルディアナはヒヤリとしたが、言われた当の本人のソニアは呆気なく引き下がった。


「そうですね。ルディアナも、高職管理課の人間でしたわ。その人間に根掘り葉堀り、私としたことが…。キャロライン、申し訳ありませんでしたね。ルディアナも、答えられないことを問いただして、ごめんなさい」


 ソニアはその場の緊迫してた雰囲気を柔らかな笑みで壊した。キャロラインも、ソニアがこれ以上追及してこないと踏んだのか、表情を和らげ、ティータイムを終了する旨の指示を出す。


「ソニア様に、我がコーエン公爵家の庭園をゆっくり拝見して欲しかったのに…。こんなことになり、申し訳ないと思っています。ーー後日、改めて謝罪と招待をお送り致しますわ」


 ルディアナよりも年下のキャロラインがてきぱきと侍女達に指示を出していく中、ルディアナは何となく気まずさを感じていた。

 確かに、キャロラインはコーエン公爵令嬢なので、夫人が退席したこの場を仕切るのは可笑しくはないが、年長者として落ち着かない。

 そんなソワソワしたルディアナをソニアは優しく眺めていたが、帰りの馬車の連絡に、静かに席を立った。


「キャロライン、本日はお招きありがとう。こんなことになり、とても残念だけれど、コーエン公爵家の美しい庭園に心が和んだわ。どうか、コーエン公爵夫人にもよろしくね。ーーふふ……、ルディアナも、ゆっくり休んでーー、ノアレイアス様と仲良くね?」


 最後にルディアナをからかいながら、ソニアはマーシャル公爵家へと帰って行った。





(ノアと、仲良くって…。もともと、幼馴染みなのだから、今さら……)


 コーエン公爵家の庭園を後にし、与えられた客室でぼんやり過ごしていると、ノアレイアスと自分の関係性が気になってきた。


(皆は、まるでノアが私を気に入ってるかのように振る舞うけれど…)


 ノアレイアスは、コーエン公爵家の嗣子と言うことで、社交界ではトップの人気の高さである。

 そんな人間が、幼馴染みであるとは言え弱小子爵家の令嬢を相手に考えているとはルディアナには思えなかった。


(高職管理課の何が極秘任務中とか…? でも、それなら私に連絡があっても良い筈だし…)


 そもそもコーエン公爵家のノアレイアスは高職管理課に属してはいない。

 では、この待遇は何なのだとルディアナは延々と答えのない無限ループを繰り返していた。


『…何やら、思案中の所悪いけれど、今帰ったわよ? ルディ、無事で良かったわ』


「っ! アノン!! 遅かったじゃない!!」


 ぽんっと壁から現れたアノンに、ルディアナは駆け寄った。アノンは今日1日、ルディアナの身に何があったのかお見通しのように、やれやれと首をふった。


『皇宮の高職管理課にも、連絡が入ったわ。コーエン公爵家にいたカレンディアの誘拐未遂が発生したって。良くやったわね、ルディ。ドリアスも異変を察知し、ルディが止めたと喜んでいたわよ。でも…、、』


 ルディアナにとっては、異変を指摘しただけで、大した働きはしていなく、どちらかと言うと、コーエン公爵夫人カトリーヌやキャロラインの働きが全てのような気もするが、誉められて悪い気はしない。


 もしかして、皇女カレンディアがコーエン公爵家でティータイムを過ごすという情報がどこからか漏れて、ゾイド国の反乱因子が事件を仕掛けたのではないかとルディアナは考えていた。そして、そのためにルディアナが療養と名目打って長期間、コーエン公爵家に留め置かれたのではないかと。

 ルディアナが皇女が出席するティータイムに同席するには、身分が低すぎる。けれども、幼馴染みを公爵家で療養させていたとならば、ルディアナが同席してもギリギリ違和感はないのだから。


『おーい! ルディ、聞いてる?! のんびりしてるのも今のうちよ!!』


 ルディアナが深く考えている時も、アノンは話続けていたようだ。全く反応をしないルディアナに少々不機嫌気味にアノンは最大限の思念を送った。


「あっ、ごめんね。ちょっとだけ、引っ掛かる事があって…」


 ルディアナが申し訳なさそうに返事を返すと、アノンは可愛そうな子を見るように溜め息をついた。


『いいわ、別に。どのみち、今回の事件を阻止するためにルディがコーエンに置かれたーーなんて、考えていたんでしょ?』


「ーっ! なんで、わかったの?!」


 今、正にルディアナの考えていたことをズバリとアノンに当てられてルディアナは眼を丸くした。アノンは思念を送るだけではなく、他の人の考えまで読めるのかと本気で疑ってしまう。


『はぁ…。ルディの考えることは、いつも少しズレているのよ。皆の意見を素直に受けないというか…。まぁ、いいわ、直ぐに、違うとわかるから』


「? それって、どういう…??」


 アノンの含みのある言葉にルディアナは全く見当がつかない。うーん、と悩むルディアナにアノンはニヤリと笑った。


『ふふん。優しいアノン様がルディにヒントをあげるわーーーーカレンディアの誘拐未遂の報告を受けたとき、皇太子も側にいたのよ。もちろん側近のノアレイアスもね。私は経緯を確認して直ぐに、こっちに来たんだけれど。今頃、ノアレイアスが血相を変えて屋敷に戻ろうとしていると思うわ』


「それは…、自分の屋敷が事件現場になったら、誰だって急いで帰ろうとするもんじゃないの?」


 相も変わらず、斜め方向の考えをするルディアナにアノンはガクッとしたが、珍しくめげずに粘った。


『違うわよ。ちゃーんと、報告で、カレンディア皇女、コーエン公爵夫人とその令嬢、マーシャル公爵夫人の無事は伝えられたの。もちろん、屋敷に被害もなかったと、ね?』


「あぁ、そうなの? じゃぁ、なんで? そんなにノアってば、心配性だったっけ?」


 ルディアナには、皇宮に上がった報告に不備はないように思えた。それなのに、アノンは残念そうにルディアナを見つめている。


「ーー??」


『はぁーー。わかんない? 報告には、ルディの事は安否が入っていなかったの! 事件を身を挺して阻止したとは報告に上がってたけど!!』


「あぁ! うち、弱小貴族だし、子爵家だもの。しょうがないわ」


 アルム家がなくなっても、帝国には痛くもないだろう。解術師の血縁が途切れるのは痛いかもしれないが、解術師の能力を知る人間はほとんどいない。報告に上がらなかったのも納得できるはずだった。


『でも、ノアレイアス違うわ。あんたの安否が分からないと、報告に来た騎士に掴みかかって。大変な事になってたわよ』


「ーー?? なんで?!」


『なんで?! 分かんないの?!』


 正直、アノンもノアレイアスも何を苛ついてるかルディアナにはピンと来ない。カレンディア皇女が無事なら万々歳ではないのだろうかとルディアナは本気で思った。

読んで頂きありがとうございました!

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