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解術師は次期公爵に恋われる①

いつもありがとうございます!

話はまだまだ続きます!



(一体、何がどうして、こうなったのかしら…?)


 ルディアナは、ルクサリア帝国の華と、うたわれる皇女カレンディアと新婚のマーシャル公爵夫人、コーエン公爵令嬢キャロライン、公爵夫人カトリーヌらと共に、コーエン公爵家の自慢の庭園で優雅にティータイムを楽しんでいた。


 ルディアナが暑さで倒れてから3日たった。ルディアナを心配したノアレイアスの指示により、昨日まで、寝たり起きたりの堕落した生活を送っていたルディアナはすこぶる体調が良い。

 

 そんな暇をもて余すルディアナを見通して、キャロラインが天気が良いから庭でお茶でも飲もうと、声をかけてきたのだ。

 ルディアナもいよいよ客間で過ごすのも飽きてきた所だったので、あまり考えもせずにキャロラインの誘いに乗ったのだ。


(まさか、こんなメンバーが揃うとは思ってもみなかったんだもの!!)


 ルディアナは、キャロラインの勧めるがまま、コーエン公爵家で準備された高貴なドレスを身に纏い、高貴な貴婦人、高価なティーセットや菓子に囲まれド緊張を強いられていた。


 アノンはティータイムには興味が湧かなかったらしく、早々にルディアナの側を離れた。暇なので皇宮の高職管理課の様子を見てくるらしい。


 アノンの自由さを羨ましく思いながら、ルディアナは渋々ティータイムの席についていた。

 程よく天気に恵まれ、爽やかな風が吹いているというのに、ルディアナは身分の高い同席者に粗相をしてはいけないと、動悸が静まらない。


「ーーねぇ、ルディアナはこのコーエンの屋敷で不自由はないかしら? 何かあれば、何でも良いから、教えて頂戴ね? 特に、ノアレイアスの態度とか」


「そうそう! お兄様ったら、ルディアナお姉さまをずっと閉じ込めて、自分ばかりルディアナお姉さまを独占して!!」


 のんびりとした口調でノアレイアスの母、カトリーヌがルディアナに問いかければ、キャロラインも直ぐにノアレイアスの態度に不満をもらした。


「…あの、良くして、もらっています…。体調もすっかり良くなりましたし…」


 2人の、何とも表件しがたい圧に、ルディアナがしどろもどろで答えると、皇女カレンディアがクツクツと笑い出した。


「カトリーヌおば様もキャロラインも、ノアレイアスを応援したいのか、したくないのか…。ルディアナも言葉に困ってしまいますよ」


(いえ、困っているのは貴方様とのティータイムです)


 カレンディアの言葉にルディアナは心の中でひっそりと呟いた。

 カレンディアは幼い時より同盟国への輿入れが決まっているルクサリア帝国のただ1人の皇女だ。金髪碧眼の皇族特有の色彩に加えて、大切に育てられ、滅多に姿を表さないその美しすぎる姿に、国民はルクサリアの宝石と呼び、崇めている。


「まぁ、それはもちろん。早くコーエンの義娘としてルディアナを迎えたいと思っておりますのよ」


「そうよ! ルディアナお姉さまが本当のお姉さまになるよう、ノアお兄様にも急かしてるんだから!!」


 カレンディアの言葉にコーエン公爵夫人とキャロラインが淀みなく答えたが、その内容にルディアナは居心地の悪さを感じた。


(ーー! まただ…、コーエン公爵家のみんなが私を娘として望んでいるかのように…)


 ルディアナが倒れた翌日から、コーエン公爵夫人はもちろん、公爵当主を始め、屋敷全体でルディアナを家族のように接して来るのだ。

 幼い時よりコーエン公爵家とは往来があるアルム家の令嬢だからといっても、"娘"扱いには戸惑いがある。

 それに加えて、コーエン公爵家の皆がノアレイアスがルディアナを伴侶として望んでいるかのように掘る舞うのだ。


(ノアからは、そんな言葉を貰った覚えもないのに…)


 ルディアナが戸惑って顔を真っ赤にしたまま固まっていると、最近マーシャル公爵家に嫁いだソニアが見かねて口を出した。


「まぁまぁ、皆様。可哀想に、ルディアナ様が困っておりましてよ? ノアレイアス様はとてもルディアナ様を大切にしていらっしゃるとのこと。ルディアナ様を困らせるようなことをすれば、後からノアレイアス様に怒られてしまうのではなくて?」


(ーー! 助け船になってないーー!)


「そっ、ソニア様…」


 恥ずかしさに更に追い討ちをかけるようなソニアのセリフに、ルディアナがすがるようにソニアの名前を呟けば、テーブルに笑いが広まった。


「そうね! お兄様ったら、ルディアナお姉さまの事になると心が狭くなるから! 何時もなら、皇宮の控え室にお泊まりになることも多かったのに、今ではどんなに遅くなろうとも、ルディアナお姉さまのお顔を見に帰宅するんですよ!」


(ーー! へ? ノアってば、毎日帰るのが普通じゃなかったの?!)


 キャロラインの言葉にルディアナはドキッとした。確かに、昨日も夜遅く、お休みを伝える為だけに部屋を訪れていたのだ。


「あんまり、この屋敷に寄り付かなかったのに、ルディアナのお陰か、朝もゆっくりとするようになって」


 カトリーヌまで、ノアレイアスの変貌ぶりにクスクスと笑いだし、ルディアナはいた堪れさなすぎて、胸が苦しくなった。





「あら…?」


 カレンディアの声に顔を上げれば、侍従が慌てて書簡を手に走ってきた所だった。


(皇宮の侍従の制服を着てるけど、何だか、おかしい…。どこか違和感を感じるわ…)


「皇女殿下、なにか問題でも?」


 ルディアナが探るように侍従を見つめていることに気がついたカトリーヌは、カレンディアに何があったのかと声をかけた。


「あぁ、東の島国ゾイドと同盟国のバランが戦になりそうだ、と」


「まぁ!!」


 同盟国のバランと言えば、カレンディアの婚約先である。そのため、カレンディアに急ぎ皇宮まで戻るように連絡がきたようだ。


(ーー!? 違う!! これ、偽の書簡だわ!!)


 カレンディアの手にある書簡は、何やら渦のようなものが見え隠れしている。そして、ルディアナの解術師の眼には、ゾイド国特有の文字まで浮かんで見えた。


(ソニア様は、解術の能力をご存じない! どう、カレンディア様にお伝えすれば…!!)


 偽の書簡を使って、皇女カレンディアを拉致するつもりなのかもしれない。ルディアナは、側にアノンがいないことを心の底から嘆いた。


(アノンがいれば、思念でカレンディア様にお伝え出来るのに!!)


「皇女殿下、さぁ早く、皇宮にお戻りを!!」


 見かけたことのない侍従がカレンディアの退席を促した。ルディアナはソニアに能力がバレてしまっても、皇女カレンディアを守るべきだと決心をする。


「お、お待ちくださいませ! カレンディア皇女殿下!! その侍従は偽者でございます!!」


 ルディアナが席を立ち、侍従とカレンディアの間に立った。ルディアナは、厳つい風貌の侍従に恐怖を感じたが、みすみすカレンディアを引き渡してはならないと必死だ。


 そして、ルディアナの顔色が悪くなったことに、カトリーヌとカレンディア2人も早くから気がついていた。

 意を決してカレンディアを引き留めるために声をあげ、立ちはだかったルディアナにカトリーヌは素早く屋敷の人間に指示を出した。


「曲者です!! 直ぐにこの侍従を捕まえよ!!」


 カトリーヌの一言で、影に控えていた騎士達が一斉に現れて、侍従の背後をとった。あっという間に、書簡を届けた侍従は捕縛され、調べのためにカレンディアとカトリーヌが席を立つ。


「一体、何が起こったのです…?」


 怒涛の如く過ぎ去った捕縛劇に、残されたのは呆気にとられたソニアとキャロライン、それにルディアナだった。


(一体、ソニア様に何と言って、誤魔化せば…)

読んで頂きありがとうございました!

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