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解術師は公爵家で倒れる④

いつもありがとうございます!

話はまだまだ続きます!



「…あの、ノア? ごめんね。お世話になります……」


 いまだに、むすっとした表情のノアレイアスに恐る恐るルディアナが声をかけた。ノアレイアスはそんなびくびくするルディアナを見て、イライラが収まったのか、少しだけ表情を和らげた。


「あぁ、ゆっくり過ごしてくれて構わない。キャロラインの言葉は…、まぁ、今は気にしないでくれ」


 そう言って、キャロラインのいた枕元の椅子にノアレイアスが座ると、寝ているルディアナとの距離がかなり近くなる。互いに大人になってからは、あまり慣れていない距離の近さに、ルディアナは少しだけドキッとした。


(…怒ってはいないようね…)


「…あの、さっきから、アノンがいないようなの……、ノアはアノンがどこに行ってるのか、知ってる?」


 ノアレイアスもキャロラインも、幽霊のアノンを肉眼で確認できる皇族の人間である。そのため、ルディアナの側にアノンが長時間いないのは、不自然と気がつくはずだ。2人がアノンがいないのを追及してこないのは、おそらくアノンの行き先を知っているに違いない。


「あぁ、アノンは、アルム家に連絡を入れに出ている。しばらく、ルディはコーエンの家で療養するから、その手配も頼んだ」


「へ? なんで?? 私が、コーエンのお屋敷に? 冗談じゃなく?! …ごほっ!! ごほっ!!」


「…! 落ち着け!!」


 てっきり侍女達とキャロラインのからかいの戯言だと聞き流していたルディアナは、驚いてむせかえってしまった。

 ノアレイアスが慌てて、ルディアナの背中を擦ってくれ落ち着かせようとするが、間近に迫ったノアレイアスの顔に余計にルディアナは動揺してしまう。


(ちょっと! 距離! 近い!!)


「あの…、少し休めば体調も良くなると思うわ…それに! 高職管理課の仕事もある、し…?」


 ルディアナは、恐る恐るノアレイアスの体を押し返した。そして、何気なくを装ってノアレイアスの顔を伺えば、ようやく和らいだ表情が無表情になっていた。


(ーー! 何故?! 怒ってるの??)


「ーー今回の体調不良も、仕事の詰めすぎが原因かもしれない。そんな場所に、直ぐにルディを戻すことは俺としては到底できないーーそれに…」


 ナダリア侯爵家が何を考えているのか、分からない…と、小さな声でノアレイアスは呟いた。聞き取れるかどうかという声だったので、ルディアナは聞き直すのを躊躇い、ノアレイアスを見上げた。


(ーーナダリア侯爵家が何か…?)


 そんな戸惑うルディアナにノアレイアスはため息をつきながら、髪をかきあげ部屋の天井を睨んだ。

 他の貴族令嬢であれば、きゃぁきゃぁ騒ぐほどのノアレイアスの溢れる色気をルディアナは諸ともせず、ノアレイアスの言葉をひたすら思案した。


(カイルアンに何かあったの? もしかして、アマリアに何か…?!)


 高職管理課の仕事は危険と隣り合わせだ。任務遂行で何かあったのかと、ルディアナは心配になった。


「ルディ、アノンが戻ってきた」


 ルディアナの頭の中が悪い方に悪い方に傾くのを止めるように、ノアレイアスがルディアナの頭を優しく撫でた。

 ノアレイアスが無駄に色気を巻き散らかし、ルディアナの髪の束を自身の口に運んだ。そこで、ようやく色恋に鈍いルディアナも、意識がノアレイアスに戻った。


(へ? ノア…? 何して…?!)


 一体何事かとルディアナが目を丸くすると、同時に天井からポンっとアノンが顔を出した。


『…せっかくのノアレイアスのお色気も、ルディアナには、全く効果なしよね…、っ、て、て、待って! あらあら? ルディの顔が赤いわ! ノアレイアス、良かったわね!!』


 妙に興奮しながらも、いつものようにふわふわとルディアナの側までアノンが浮遊してきた。ノアレイアスの様子に戸惑いながら、ルディアナの顔が赤くなったのがとても嬉しいらしい。


「あっ、アノン! こっ、これは、その!!」


 ルディアナがアワアワと慌てる様子に、今度はノアレイアスまでもにやにや笑い出す。


「ルディに、俺を意識して貰わない限りは、全く話が進まないーーとりあえず、アノンは、アルム家の了承を得たと見て良いのか?」


 何の意識を向けるのかルディアナには良く理解出来なかったが、後に続いたノアレイアスの言葉にルディアナは引っ掛かりを覚えた。


(アルム家の了承って、コーエン公爵家に滞在すること、よね…?)


『もう、本当に! 私はあんたの使い走りじゃないのよ?! えぇ、もちろん、アルム家の了承はしっかり貰ってきたわ。ちゃんと、あんたもアルム家に正式に挨拶しなさいよ?』


「あぁ、それはもちろん。父上に相談の上、良い日にちを選んで正式に申し入れる」


『…なら、良いわよ。今回のお使いはタダにしてあげるわ』


 なんだかルディアナを除け者にして、ノアレイアスとアノンで話がまとまったようだ。ルディアナはどこから質問をして良いのか分からなく、戸惑いの表情を浮かべた。


「ねぇ、さっきから、話が良く見えないんだけれど」


 ルディアナがノアレイアスの袖を軽く引っ張って抗議をすると、ノアレイアスはたちまち嬉しそうに微笑んだ。


(ーー!)


 あまりの王子様然とした美しい表情に、ノアレイアスを見慣れていたはずのルディアナでも、ぶわっと顔が赤くなり、胸がきゅっとなる。


『あらあら…。これは本当にいい傾向だわ…!』


「ルディ、話はまた今度に。今日はゆっくり寝て体を休めることだ。アノンも、ルディがゆっくり過ごせるように、余計な事は言うな」


 アノンがルディアナの反応に、にまにまと笑いながら2人を見ていたが、ノアレイアスはふわっと微笑みを深めただけで、話を切り上げてしまった。


「でも、カトリーヌ様にも公爵様にも、まだ挨拶もしてないし…」


「大丈夫。ルディの体調不良は父上にも母上にも既に知らせてある。体調が回復してからの挨拶で構わない」


 ルディアナの戸惑いにも、ノアレイアスはあっさりと返して、話は終わりだと席を立った。


「何かあれば、侍女達に何なりと申し出てくれてくれ。今、軽食を運ばせるから、今日は薬を飲んで、早く寝るように」


「でも、ノア、あの…」


 怒濤のごとく何か大きな流れに流されているようでルディアナはどんどん不安になり、席を立ったノアレイアスを呼び止めた。


「大丈夫、心配ない」

「ーー! ◇#∇∞◇…!!」


 不安顔でノアレイアスを見上げるルディアナに一言告げて、ノアレイアスはルディアナの額に軽いキスを落とした。

 予想にしていなかったノアレイアスの行動に、ルディアナは口をパクパクして、言葉にならない悲鳴をあげる。


 アノンはそんな2人をヒューと口笛で茶化すと、ポンっと、また姿を消した。

読んで頂きありがとうございました!

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