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解術師は公爵家で倒れる①

いつもありがとうございます!

話はまだまだ続きます!



 皇宮のティーパーティから数日後、ルディアナはコーエン公爵一人息子ノアレイアスからの招待を受けた。皇宮に程近い場所にあるコーエン公爵邸は、公爵夫人とルディアナの母が交流があるということで、小さい頃より良く訪れており馴染み深い場所だ。


「とっても、素敵な庭園なのは分かるんだけれど…。相変わらず、門から玄関が遠いわね。ふぅ、玄関が遥か先に見えるわ…」


 ルディアナはコーエン公爵邸の門番にノアレイアスからの招待状を見せて邸に足を踏み入れた。ルディアナは現在、皇宮の寮で生活しているため、そこから歩いて公爵邸までやって来たのだ。


『…門番の騎士が目をひんむいて驚いてたわよ…。どこの令嬢が、公爵子息直々の招待状を携えて、徒歩でやって来んだって……やっぱり、馬車くらい乗せるべきだったかしら…』


 アノンの非難とも言えるぼやきに、ルディアナはその通りだと理解しながらも、反論を返す。


「…あのね、アノン。馬車は、維持費がかかるのよ? アルム家には今は馬車は1台しかないの知ってるでしょ? 私が馬車を使っていたら、いざという時、お父様や兄様が困るでしょう?」


 アルム家には元々3台の馬車があったのだが、数年前の農作物の不作の年に、少しでもお金にしようと馬車2台を売り払っていたのだ。

 公爵家まで、辻馬車を利用しようとも、お金がかかる。今日は幸いにも雲1つない晴天だったので、ルディアナは健康のためにもなるからと、ここまで歩いてきていた。


『じゃぁ、ノアレイアスに馬車で、寮まで迎えに来させれば良かったのに。そうすればお金もかからないでしょ?』


「公爵子息を皇宮の寮まで迎えに来させては、噂の元じゃない!!」


『そう? ルディのためなら、噂なんてノアレイアスは気にしないわよ。ルディの元に喜んで駆けつけて、なんなら、そのまま跪きそうだけれど?』


 アノンの面白可笑しくからかう様子に、ルディアナはむすっとしたが、怒ると余計にからかわれると悟った。そしてこれ以上、アノンの話に構うものかと、前方を見据えてすたすた歩き続ける。


『ーー、それにしても、遠いわね…。ちょっと、私が先に行って、訪問を誰かに伝えてこようか?』


「…大丈夫よ、」


 ルディアナは口数少なくアノンに応えた。暑さのせいで、疲れが押し寄せてくる。


(せめて、高職管理課の制服を着てくれば良かったかしら…?)


 いつも着ている制服は機能性に富んでおり、とても動きやすい。しかし、今日のルディアナは公爵家にお呼ばれしたために、清楚なワンピースを着ていた。そのせいで、コルセットがきつく風通しも悪くて、暑いこと、この上ない。


 いくら皇宮から近いとはいえ、コーエン公爵家のお屋敷入り口までは、かなりの距離を歩くことになってしまった。ルディアナは後悔しながら、晴天を恨み仰いだ。

 

 アノンには大丈夫と応えたが、疲れてルディアナの足取りがどんどん重くなっていた。ときおり、アノンのルディアナを心配する視線が痛い。


(『ほんと、素直じゃないわね…。あら? ノアレイアスってば、玄関にいるじゃない…!』)


 ふと、アノンが視界を屋敷に流せば、ノアレイアスがルディアナの訪問を、今か今かと玄関で待っている様子が思念で見えてきた。


(『もう、しょうがないわね…!!ーーノアレイアス! ちょっと、ルディを迎えにきて! 今、玄関までのアプローチを歩いてて、…』)


 快晴のためか、暑さで疲れてきたルディアナを見ていられず、アノンがノアレイアスに思念を送った。すると、アノンの言葉が終わるのを待たずして、屋敷の扉がバーンと物凄い勢いで開いた。


「なんか、遠くから、デカイ音がしたんだけれど…」


『今、迎えがやってくるわ』


 ルディアナからは、扉が開いたのは見えているが、ノアレイアスの姿までははっきりと確認できない。大きな音を不振に思い、アノンに目をやればアノンにため息ばかりの返事を返された。


「アノン、ノアを呼んだのね…?」


『大丈夫と良いながら、ルディってば、くたくたなのよ? そんな疲れ果てた状態でコーエン公爵婦人と、キャロラインに会うのは失礼でしょ?』


 ルディアナは、公爵子息のノアレイアスに迷惑をかけないように歩きたかったのだが、公爵婦人とキャロラインの名前を出されてしまっては、ぐうの音も出ない。

 確かにアノンの言う通り、気温が高いためか、さっきからルディアナは軽く頭痛を感じていたのだ。


 どうやら、アノンの思念を受けたノアレイアスは馬でこちらまで向かうことにしたらしい。一騎が猛スピードでこちらに向かってくるのが見えて、ルディアナは自然と立ち止まった。


(あぁ、ノアだわ。そんなに慌てなくても良いのに…)


「っ! ルディ!!」


 直ぐにルディアナに辿り着いたノアレイアスは、よほど慌てたのか、いつも綺麗にセットされた金色の髪がボサボサになっていた。


 ぼんやり、騎乗のノアレイアスを見上げるルディアナに、アノンも様子がおかしいと気がつく。


『ルディ?! ちょっと、本当に具合が悪いんじゃ…?!』


 すーっと、汗と血の気が引いたような気がして、ルディアナは立っていられなくなった。慌てるアノンに返事をしたくても、とても億劫で声が出てこない。

 そのままルディアナが脱力すると、間一髪の所でノアレイアスがルディアナを抱き止めた。


(…地面、直撃は、免れたわ、ね……)


『ーー、ルディ!!』


「とりあえず、屋敷に!! ルディ、しっかりするんだ!!」


 慌てふためく2人の様子をぼんやり把握しながら、何とかルディアナは力なく頷いた。

 いつもなら、おふざけで抱き締めるとかなりの抵抗をみせるルディアナが、大人しく腕に収まっている様子にノアレイアスは冷静さを失う。


「おっ、おい! ルディ!! くっそ!!」


 ノアレイアスは、アノンの霊力を借りて、何とかルディアナと馬に乗ると急いで屋敷に向かって走り出した。

読んで頂きありがとうございました!

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