4 休暇がとりやすい職場
今日も今日とて、夕飯を共にする妻マリーと夫ケビン。
「最近、ケビンさんは帰りが早いのですね」
「いえ、まあ、その……困りますか?」
「とんでもない。夕食をご一緒できて嬉しいです」
「よかった」
ニコニコ笑うマリーに、ケビンもほっとした顔でニコニコ笑う。
「自分の家なんですから、もっとたくさん居てください。ケビンさんは働きすぎですよ」
「……実は最近、職場で新婚扱いされていて」
「え?」
「新婚なんだから、効率を上げて早く帰ってやれって。お陰で少し、早く帰れるようになったんです」
「まあ」
嬉しそうな夫ケビンに、妻マリーも嬉しくなる。
「実はわたしもなんです」
「というと?」
「新婚だから、いつもなら捨ててしまう休暇もとっちゃいなーってみんなが言ってくれて。わたしが遠慮しないように、みんなで休暇を取ろうって、職場にお休みが取りやすい空気ができてるんですよ」
「ああ、私もいまそんな感じです」
二人は和気あいあいに意気投合する。
「一緒です一緒です」「休みをとりやすいと職場が明るいですよね」と盛り上がった。
「ふふふ。わたし、ケビンさんに会えてよかった」
「え?」
「ケビンさんと結婚してから、いいことばかり。わたし、幸せです。本当にありがとうございます」
ニコニコふわふわ笑う妻マリー。
真顔になる夫ケビン。
「……しも、です」
「?」
「私、も。マリーさんと、結婚できて、よかった、です」
「ふふ、よかった。ありがとうございます」
マリーは嬉しかった。いい夫を持てて、本当に幸せだ。
ニコニコ笑顔がこぼれる、通常運転である。
ケビンは嬉しかった。いい妻を持てて、本当に幸せだ。
ドクドクと主張の激しい胸の鼓動が収まらず、顔は真っ赤で、視線は泳いでいた。