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心刃一体アクトナイト  作者: 仲居雅人
大月信太郎編
97/150

第97話 夢の終わり

「クヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」

「疲れない?狂ったフリするの」

「………なんだ。気付いてたんだ」


 人形遊びをする異常者。それを演じていた信太郎がヒリヒリとする顔に手を当てていると、また真っ暗な空間に戻った。


「所詮、俺はこんなやつさ。欲に縛られていつも褒められるのを待ってる寂しい男だよ」

「そんな自分語りを聞きに来たんじゃないんだよ。僕たちは」


 啓太の真剣な表情に怖じ気付いた信太郎は一歩下がり、露骨に口数が減った。


「…」

「信太郎、くだらない維持の張り合いはここまでにしよう。もうこれ以上やっても疲れるだけだよ」

「!くだらない維持だって!?ふざけるな!俺はプライドに誇り!全部掛けてるんだ!」

「たったそれだけが…それだけで自分の首を絞めて他の人を苦しめてるのに、何がプライドだ!」

「自分のために他人に迷惑掛けるのが悪いってか!」

「そうさ!迷惑掛けることを目的にしてるんだ!悪いことに決まってるだろ!それが変わらない限り、僕たちは君を倒し続ける!」


 倒し続ける。そう、信太郎は彼らには勝てない。これから何を企んでも、啓太たちに邪魔されて失敗に終わるだろう。まるで地球を侵略しようとするメルバド星人のように。


「お前ら何なんだよ!」

「平和を守るヒーローのつもりだけど…僕はそれ以上に君の友達だ!」


 すると臆していた他の少年たちも次々と信太郎の前に姿を見せた。


「俺もだ。まあ何度も切られたことは少し腹立ってるけど」

「最初の頃は彼氏の友達だったけど…」「今はもう赤の他人じゃないって自覚、あるよ」


「忘れちゃってるだろうけど、俺たちとは校外学習で同じ班だったよな。それだけでも、俺は友達になるには充分だと思う…愛澤さんもその1人だよ」

「最初会った時も戦って、思えばこれまで共闘したことより敵として戦った時の方が多いんじゃないかしら。勝ち逃げしたいし、もうやめない?」

「ちょ、那岐ちゃん!?それ今言うこと?……………私も何か言った方がいい感じかな。大月君…さっき思い出見ちゃってさ、私のこと…好きだったんだね。ごめんなさい!気持ちは嬉しいけど………でもたったそれだけのことで大月君が怪人になったりするのは嫌だよ!きっとこの先、良いことがあるから!」


「後悔だけでなく反省もしろ。自覚はあるのだろう。自分に何が足りていなかったのか」

「認めなくないけど戸籍上兄だからな~…とりあえず、家族の恥になることはやめて。お母さん、最近調子戻って来て幸せそうだから。親孝行するつもりでもう暴れないで」








「俺の気持ちを知らないくせに!」

「なら勇気を出してその気持ち、吐き出せよ!友達によおおおおお!」


 口を塞ぐように将矢のアッパーカット。信太郎の身体が浮くほどの威力だ。


「え、今度そういう流れ…うん………つらい思いしてるなら誰にでも良いから言ってよ!ただでさえ何考えてんのか分かんないのに、分かるわけないじゃん!」


 その次に奏芽のビンタ。信太郎はまた叩かれた。


「でも今までのこと許したわけじゃないからね!」


 千夏のビンタ。今度は左の頬に入った。


「とりあえず那岐とみんながやられた分はこれで勘弁してやる」


 昇士の回し蹴り。痛かった。


「オリャアアアアア!」


 那岐は助走からのドロップキック。もっと痛かった。


「みんな、仲直りしたいんだと思うよ…言葉下手にも程があるけど。えいっ」


 芽愛がデコピンで額を叩く。ここまで受けた衝撃と同じように、優しさが込もっていた。


「問題を起こした時、組織にいた俺と那岐は修正という名目で殴られていた。歯を食い縛れ大月信太郎!修正だ!」


 剛の鉄拳が炸裂した。容赦の無い一撃に意識が飛びそうになった。


「色々殴る理由はあるけどやっぱり…キモい!そこを何とかしろ!この根暗!」


 美保の蹴りが脛に入った。先の鋭い靴により、威力は絶大だった。




「いっっってえよおおおおおおおおおお!」


 当然だ。だがこれでも足りない程、信太郎は大勢の人を傷付けて来た。


「いってえ~……………降参だ」


 言いたい放題、やりたい放題だった信太郎が今度は仲間たちから渾身の一言と共に暴力を振られて、自分の非を思い知った。

 もう抵抗する気もなく、特に痛かった脛を押さえながら立ち上がった。


「これだけか…俺が憎くないのか?」

「蹴って欲しいならいくらでもやるけど?」


 流石にもう勘弁と首を振る。落ち着いた様子だが脛を気にしているところを見るに、効いていたらしい。


「………時間をくれ。時間が…必要だ」

「分かった。信太郎の準備が出来たら、改めて話そう」


 真っ暗な空間が崩れ始めて、外からの光が射し込む。もうここにいる必要もないみたいだ。






 啓太たちは外の世界に戻って来た。


「闇が収まった…やったんだな、みんな」


 信太郎もすぐに目を覚まし、ゆっくりと立ち上がった。壊した街の惨状に、どうしようもない気持ちでいっぱいになった。別の方を見ると、さっき襲おうとしていた人々の姿が視線の先にあった。



 信太郎は両手を挙げて、パトカーの方まで歩いた。


「止まれ!膝をそのまま膝を付くんだ!」

「その前に!…俺以外のやつは街のために戦った。まずは彼らを見逃してからだ!…あいつらに罪はない!」

「お前たちには逮捕状が出ている!例外はない!」


「まあまあ、ここは見逃してあげても良いじゃないですか」


 突然の声をと共にパトカーの陰から、デスタームが現れた。


「デスターム…」

「君以外は見逃すように後で手を打っておこう。それにしても…まんまとメノルの筋書き通りに暴れたみたいだな」


「政治家だけじゃなく警察にも取り入ったか…ずいぶん地球侵略が捗ってるみたいだな」

「これまで視察に来た宇宙人たちの非礼は全て私に責任がある。それに関しては後日、テレビを通して謝罪をする」

「何の用があってここに来た」

「現地での情報操作だ。それと剛を迎えに来たが…」

「少なくとも俺は、組織のやつらよりこいつらと戦っていた方が」

「はぁ…子どもというのはこれだから困る。まあいざという時、私の命令に従ってくれるなら彼らとの協力関係を許そう」

「!…ありがとうございます」


「まあそう遠くない未来、君から私の元に戻ってくるだろうけどね」


「私も無駄な殺生は避けたい。信太郎君。このまま裁きを受けて日常生活に戻ることを勧めるよ。それでは」




 デスタームが姿を消した後、信太郎だけがパトカーに乗せられて他は現地に残された。その後、疲れていた少年たちは現地解散。記者に囲まれたりしたが各々振り切り、日常に戻って行った。

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