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心刃一体アクトナイト  作者: 仲居雅人
大月信太郎編
93/150

第93話 信太郎、動く

 もうここまで来た。平和を脅かし仲間たちを敵に回し、忌み嫌われる怪人となった。

 倒される前に1人でも多く殺さないと。これまでになかった殺人衝動が信太郎を駆り立てる。


「倒されル?そんなはずがないだロ」


「君は負けるよ。正義、勇気、絆…そんな人間の力を前に屈するんだ。絶対に勝てない」


 最近になってから幻聴は増している。それも敵に対して勝てないなど、ネガティブなことばかりだ。


「負けるって言うなら教えてくれヨ。どうしたら俺は勝てル?」


「分からないのか?君は絶対に勝てない」

「なんでそう言い切れル」

「弱体化してるからだよ。今の君は以前とは比べ物にならない程に弱い」


 そんなはずはない。現に今でもエナジーが満ち溢れていているのだ。あのバッドやタニングにだって今なら圧勝すら出来る自信がある。


「俺のどこが弱イ!」

「君そのものだよ」


 一体こいつは何が好きで否定的な言葉をぶつけてくるのか。しかし所詮は幻聴だ。しばらくすると聴こえなくなった。




 信太郎は動き出した。まず準備運動でタバコをポイ捨てした男に飛び掛かり、馬乗りになって何度も殴った。「ごめんなさい」と謝罪が聞こえたのは最初の方だけだ。


「別に謝らなくていいヨ。俺もやりたくて悪いことやってんだシ」


 鼻血が溢れ歯が飛び出す。見ていて面白かったが、気を失ってしまうと何のリアクションもせずつまらなかった。


「きゃあああああ!」


 今の光景を通りかかった人間に見られた。口封じのつもりではないが、とりあえず殴って黙らせた。


「すっきり…した?しないよね」


「ああそうダ!足りないネ!幸セ!幸せをぶち壊してやらないト!」


 その時、怪人の能力が進化した。人の多い都市部の方から良い匂いがしてきた。


「これは幸せの匂いダ!」


 幸せが多いほどその匂いは強くなる。他人の幸せを破壊したいという信太郎はその匂いに導かれて道を進んだ。



 二車線の通りに壁のようなビル郡。たまに来る場所ではあったが、こんな破壊して絵になりそうな場所なのは今初めて感じた。


「それじゃあさっそクッ!ガオオオオオオオオオ!」


 魔人の咆哮。それは街の灯りを乱し電子機器を狂わせた。何よりも道路を走っていた車が一斉に停まり、誰もが恐怖を覚えた。


「怪人だぁぁあああ!」

「逃げろぉぉおおお!」


 パニックが始まった。ペデストリアンデッキに現れた怪人の存在は瞬く間に伝わり、人々が散っていく。しかし逃走は許されない。


「なんだこれ!?黒い格子!?」

「触るな!意識を失うぞ!」


 闇の力が一帯を覆った。そこはもう完全に信太郎の射程圏。誰1人として逃れることは出来ないのである。


「お前ら全員…殺ス!」




「お母さーん!どこー!」


 すぐ近くに泣いている子どもがいた。パニックの中で親とはぐれてしまうというのはベタなパターンだ。信太郎はそばまで行くと手を差し伸べるわけでもなく、巨大な手を振りかざした。


「バーカ、そのママはお前のことを見捨てたんだヨ!死ネ!」


 デッキが割れるほどの一撃が子どもに振り下ろされた。


「チッ…来たナ」


 しかし子どもは間一髪のところで翼のアクトナイトに救出され、無事に母親と再会した。




「一致団結ってわけカ」


 アクトナイトとガーディアン、昇士と那岐と芽愛、そしてメルバナイト。信太郎の敵がここに集結し、人々を襲おうとする彼の前に立ち塞がった。


「信太郎、ここで終わりにしよう」


 戦士たちの先頭に降り立つジュピテルはまるで天使のようである。天使が正義のヒーローを引き連れて自分と対峙しているというのは、中々いい絵になるだろうと信太郎は笑みを溢した。


「ここでお前たちは終わりダ。俺が全員殺すかラ」


「やれるもんならやってみなさいよ!この馬鹿!」

「総合とは言えパワーに差が開き過ぎている。諦めるんだな」


 負けない。両者は強い気持ちを力に変えて、遂に最後の激闘が始まるのであった。

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