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心刃一体アクトナイト  作者: 仲居雅人
大月信太郎編
88/150

第88話 決別

 少年たちがアクトナイトに変身するのは怪人と戦い平和を守るため。


 メルバド星人たちがメルバナイトに変身するのは地球を侵略するため。



 ではイーヴィルアクトナイトダークネスに変身した信太郎はこれから一体なにをするのか。彼の中では既に決まっていた。


「おいそこのお前」


 まずは復讐だ。ここまで追い込まれた分は絶対にやり返さなければ気が晴れない。

 自分を論破していい気になっている記者に剣を向け、仮面の中から睨み付けた。


「ひぃっ!」


「もう俺は自分が正しいとは思わないよ。反省した。論破されるぐらいの悪人だって自覚を持てた。無責任…って言ったっけ?力があるのに逃げることを。その通りだ」


 記者たちは逃げられない。悪の超能力イーヴィルキネシスが彼らを捕まえている。


「責任持って俺を倒せよ。論破して負かす程度の力はあるんだからさ。あんた達は正義なんだろ?だったら悪の俺を逃げずに倒す責任があるよな!おい!」


「言い返す言葉がなくなったからって暴力に頼るな!それに君は手にした力の責任からも逃げてるじゃないか!一体どれだけ逃げれば気が済むんだ!?人として恥ずかしくないのか!」


「まだ口が回るか!自分の立場も分からないで!」


 この男は一撃でも受ければ死んでしまうただの人間だ。しかし怒りで冷静さを失った信太郎は、これからやろうとすることが人殺しだと認識していなかった。


「バーカ!アホアホアホアホ!くたばれカス!死ね!」



 しかし、こういう時ほど邪魔は入るものだ。現れたのはアクトナイトフレイス。火野将矢が黒い刃を受け止めた。


「剣を持つ怪人か!」

「久しぶりだな!」

「その声…お前信太郎なのか!?なんだその姿!いやどうして人を襲おうとした!」

「怪人に見える?好都合だ!正義と悪が分かりやすくていい!」


 出力が上がり暴れ出す炎から距離を取る。いつの間にか信太郎の前には見覚えのある戦士たち全員が立ち塞がっていた。


「あれが大月君…?冗談でしょ。いやでも言われるとあのいや~な感じ…そうなのかな」

「貴様…人に危害を加えようとしていたな。洗脳されているのか?それとも弱味を握られて嫌々動いているのか?答えろ」

「どっちだとしても答えられるわけないだろ!ボケるタイミング考えろよな!」


「共通の敵が出来たから共闘…って感じじゃなさそうだな。随分と仲良さげじゃん。美保と…二地だっけか?」


 これまでも少し変な部分が見受けられていた信太郎がついに狂った。少年たちは警戒を緩めず、会話を続けながらフォーメーションを組んでいた。


「何がここまで君を追い詰めたの?教えてよ」

「自慢できないような小さな不幸かな。それが積もりに積もって俺はみんなを超えた!啓太を失ったお前なんかよりよっぽど不幸で同情されるべき人間だって!」

「………」


 絶句したのは怒ってか呆れてか。千夏はもう話すことは何もないと剣を構えて示した。



 戦士たちがイーヴィルを円状に並び包囲する。上からも逃げられないように昇士と那岐が滞空して様子見していた。


 その背後には見慣れない乗り物に乗った少女の姿が。信太郎は一番弱いエナジーを感じさせる芽愛に狙いを付けた。


「面白いバイク乗ってるじゃん。それで?アクトナイトに変身しないの?」


「前の私と同じだよ…きっといい結果にならない。大月君、お願いだから武器を降ろして」


「お前自分が同じ立場になった時やめれるかよ!?分かるはずだろ!イライラして仕方ないんだよ!」


 手始めに1発。芽愛の背後に建つ建物に向かって剣を一振りし、黒色のイーヴィルエナジーを発射した。


 止められない芽愛の頭上に昇士が来る。そして両手で掴んだエナジーを握り潰そうとしたが想像以上のパワーだった。このまま受けるのもまずいと、夜空に向かって黒い花火を打ち上げた。


「信太郎…!正気じゃねえよ!狙ったのマンションだぞ!どれだけの人がいるか分かってるのか!」


「正気でいられるかよこんな追い詰められて!………ところで芽愛、どうしてお前が止めないんだ」


「芽愛が止められるわけないだろ!」

「お前が答えるんじゃねえよ!なあ、どうしてだ?どうして変身しないんだ?ヒーローらしく変身して街の盾になれよ!おい!」


「剣に触れないからに決まってるじゃん…」


 


「くっ!ハーッハッハッハッ!お前ってば!昇士だけじゃくて剣にも選ばれなかったのかよ!ウケる~!」


「それは…」

「昇士!」「那岐!」


 芽愛の代わりに2人が動く。那岐も昇士も、相手が以前まで仲間だったからと迷うことはなく、全力をぶつけるつもりだ。


「許さないから!」


 見上げずとも、2人の恐ろしい程の殺気とエナジーが感じられた。


 だが手刀と光刃、どちらもイーヴィルに到達することはなく弾かれた。


「怒ってんのか!そうか!でも俺の方が怒ってんだよぉぉおおお!」


「手が蝕まれた!?」


 途端に昇士の右腕が那岐により切り落とされる。離れた部位は黒く染まっており、地面に落ちた頃にはボロボロになって干からびていた。


「いっ…!助かった…」


「アクトナイトに治してもらうのね。それにしてもこいつ…これまでとは何かが違う」




「おいそこの若手記者!お前だよお前!」


 イーヴィルが指した記者はさっきまでずっといがみ合っている男だ。年下相手に強気だったが、今はもう何も喋ろうとはしなかった。


「これでいい記事書けそうか?ギャラは安くないぞ。覚悟しとけよな」


「待てよ!信太郎!」


 フレイスの制止に耳も貸さず、イーヴィルは高く跳んで夜の闇に身を潜めた。


「…これで解決すかね?」

「いやまだだ。怪我人がいる。アクトナイトに治療させるぞ」


「あれ…愛澤さんじゃん!」


 少年たちは怪我を負って倒れていた少女を記念公園に運んだ。




 次の日からイーヴィルアクトナイトダークネスの話題で世間は盛り上がった。


 悪に堕ちた少年VS正義の戦士たち。


 これから始まる戦いの理由。それを知らなければとても熱い見出しだが、その少年の姿はとても哀しいものだった。

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