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心刃一体アクトナイト  作者: 仲居雅人
大月信太郎編
84/150

第84話 2つのスクワッド

 信太郎はただ闇雲に走っていた。頭の中にあるモヤモヤを振り切ろうと、まるで何かから逃げているみたいに。




 3日間。まるで帰り道が分からなくなってしまったみたいに、世須賀市を走り彷徨っていた。




 一度は自宅のすぐそばまで来た。


 玄関先で両親が嫌そうな顔をしながら取材を受けていなければ、きっとそこに帰っていた…かもしれない。


 真華と過ごした住宅は跡形もなく空き地になっていた。



(寒い…寒い!)


 温もりを求める信太郎はアクトナイト記念公園を目指している。


 決して辿り着けることはないというのに。






 信太郎の目指している公園には今、戦士である少年たち全員が集まっていた。


「よし、全員揃ったな」


 全員が揃った。そこにかつて仲間だった信太郎の姿はもうない。

 シャオは公園に張っている結界を書き換え、どう足掻いても信太郎はここに来れないように細工をしたのである。


「残る2体の怪人はおそらく特殊な能力を持っていない」


「私でも1体倒せちゃいましたしね~」


「7人だから3と4に分かれるのがベストだな」


 剛は分析した事を発表し、将矢が作戦を提案する。


「いやいやいや!どうしてこの2人と共闘する流れになっちゃってんの!」


 そこにたちまち指摘が入る。剛と美保。彼ら2人に一番悪い印象を持っている昇士からだった。


「だって…先輩が戦ってるし、それに私は剣握れるし」


「地球のために戦う。それが俺のやることだからだ」



「那岐、どう思う?」


「相手がメルバド星人であるから剛が裏切ることは考えられない。まあ戦力が多いに越したことはないわ。それに今は私の方が強いから」


「うわ~しれっとマウント取っとる…那岐先輩、苛立ってるのバレバレっす」




 剛はともかく、美保は仲間意識がゼロのようであり不安で仕方がない。

 きっと那岐と本当の意味で仲間になるまでのように、色々衝突するんだろうなと、ひとり思う千夏であった。






 というわけで次の晩、2組に分かれて怪人の捜索に当たった。


「大丈夫かな…」


 宇宙船で1人待っているシャオは不安だった。というのも…


「なんでこいつと…」


「気に入らないのなら帰れ」


 昇士と那岐、剛と美保。まるで雰囲気最悪のダブルデートである。

 最初は剛に便乗する形で嫌々言っていた美保も、剛のガチギレっぷりに困惑して今はもう黙っていた。


「2人ともいい加減にしなさい。怪人との戦いに支障が出たらどうするの!」


 そうして揉めながら捜索を続けていると、夜だというのに騒がしい住宅地に辿り着くのだった。




 一方その頃、アクトナイト3人のチーム。その後ろにはこれまでに見たことのないマシンが走っていた。


「乗り心地どう?」


「う~ん、あんまり」


 シャオと剛が移動用にという名目で暇潰しに開発したバイク型飛行マシン、ペガスター。それの試験運用も兼ねて、芽愛が捜索に参加していた。

 フロントにはエナジー弾を発射するライフルが左右に2挺ずつ取り付けられている。ヘリコプターの様に動けるので、これで援護の幅が広がるかもしれなかった。


「エナジーセンサー起動!」


 ペガスター後方のレーダーが起動する。航海用レーダーと同じ見た目のそれはクルクルと回りだし、一定値以上のエナジーを持つ存在を次々と探知していった。



「えっ!?」


 エナジー反応はマシンを中心に前方に3つ。そして自分と重なっている物が1つ。

 咄嗟にブレーキを掛けた瞬間、足元から何が跳ね上がってきた。


「みんな!怪人だよ!」


「分かってる!」


 獲物を狙う肉食獣の様な動きを見せた怪人は傾いた屋根の上で肩を回している。

 足元には一軒家があるので、まずはこの場から引き離す必要があった。


「だったら私が行く!」


 そう宣言したビヴィナスが怪人のそばへ飛び移り剣を振った。怪人はボクシング選手が相手のパンチを避けるように刃を回避。がら空きの脇に強烈なフックが入った。


 屋根から千夏を叩き落とした怪人は次の相手を使命するようにアーキュリーに指を向けた。だがこんな挑発に乗る必要はない。


 芽愛は狙いを定めて射撃ボタンに触れている指に力を加えた。そして発射されたエナジー弾は、怪人を通り過ぎて屋根に大穴を開けた。


「やっちゃった!」






「やりやがったな!」

「射線上に立つお前が悪いんだろう」


 芽愛がミスしていた頃、戦闘中にガーディアンが昇士に誤射してしまったことで目的の怪人は蚊帳の外。2人が一戦始めそうになっていた。


「ちょっと先輩たち!怪人逃げちゃいますよ!」


「2人とも真剣にやりなさい!」


 揉めている間にも怪人は距離を取っている。美保が逃げていると言っているが実際は違った。


「攻撃が来る!」


 那岐はサートゥーンだけ抱えて上昇。飛んできた火の玉は残り2人のそばに着弾すると大爆発を起こした。


「あーあ…先ぱーい、大丈夫すかー?」


「馬鹿だから痛い思いしないと分からないわよ」








「お前らあああああ!ちゃんとやれえええええ!」


 シャオの怒声が剣を握る4人だけでなく、戦士たち全員の心に届いた。

 意識した時には既に全員の心が繋がり、考えていることなどが共有出来るようになっていた。


 そして全員注目したのがシャオの怒りだった。


「お前たちがやってるのはお前たちにしか出来ない事なんだ!ちゃんとやらないで失敗したら誰が怪人を倒すんだ!失敗したあと誰か死んでからじゃ遅いんだぞ!分かってんのか!」


 それは戦いに限られず当たり前のことだった。なにか起こった後では遅い。なにかを今やらなければならないのである。


「守りたいって気持ちは一緒なんだろ!だったら一緒に戦うぐらいやってみろ!」


 そうだったと2人は目を覚ました。喧嘩は後でやればいい。自分たちはまず街の人たちを守らなければならないんだと。



「作戦も必要ない相手だな」


「油断するな。俺の推測に反し敵は能力を持っていた」


 どちらが先に倒せるか。競ってるつもりはないが2人同時に凄い勢いで走り出した。


 サートゥーンは路上の砂塵を横に掃けて走りやすい道を作る。

 注意を逸らそうと街の人に向けて再度発射した火の玉は那岐に切り裂かれ、到達する前に消滅した。


「はぁぁあああ!」


 昇士のアッパーカットでフライの軌道で打ち上がる怪人。それにアクトウェポンを向けたガーディアンは、最大出力でエナジーを発射した。


 そして直撃を受けた怪人は爆発。爆炎の中から再び現れるようなことはなかった。






「芽愛!慌てんな!心が繋がった今なら分かるだろ!1人じゃない!みんなで倒すんだ!」


「うん!これなら攻撃のタイミングも合わせられる!」


 そしてもう1組にも動きがあった。芽愛をサポーターとしか見ていなかったアクトナイト達も、トドメを彼女に任せて攻撃に出た。


「まずは私が!」


 ビヴィナスが瓦礫を浮かせて怪人を取り囲む。彼女が拳を握ったのを合図に、瓦礫は敵に集中して衝突した。大したダメージにはならないが、目的は攻撃じゃない。


「もらった!」「せーのでいくよ!」


 瓦礫に気を取れていた怪人が2人の接近を許した。


 フレイスとアーキュリー。それぞれの刃が炎と水の力を乗せて、怪人を天高く打ち上げた。


 

 連携を意識していた芽愛はマシンを上に傾けていた。ライフルのエナジーもチャージが完了していて、あとはターゲットが良い位置にまで上がったら発射するだけだ。


「ここだ!」


 そして芽愛の放った攻撃は全て怪人に命中。花火のような爆発をして散っていった。


「私にも出来た!」


「やるじゃん!…けど…」



 一軒家の穴から住人たちがこちらを覗いていた。その後、4人は屋根に穴を開けたことを謝罪しに行った。






 公園に戻ると今回の反省会が始まった。色々と褒められ指摘されたが、シャオは理不尽なことやいちゃもんを付けたりはしなかった。


「これからは基本的に2人での戦闘を心掛けるように!別にお前らが1人じゃ弱いとかじゃなくて、仲良くなって欲しいからだ勘違いするなよ!」


 だが流石にこの謎ルールにはブーイングの嵐だった。


「無理!絶対喧嘩になる!」

「だな。特に俺とお前が」


「絶対しばらくしたら元のメンバーで固定になるって。意味ないって」


 そう言われると思って、シャオは予め先端に色の塗られた割り箸を用意していた。


「くじ引きだ」


 割り箸は色の付いた部分を底に筒の中へ。隠している右手にはセルナマテリアルを握っており、自分の手で組み合わせる気満々だった。




 そして出来上がったペアがこれだ。



「よ、よろしくね!」

「ふふん。大船に乗った気持ちでいなさい!」


 関係良好の芽愛、那岐ペア。



「どういうペア?」

「あんま話したことないよね。よろしく」


 何とも空気の言えない奏芽、昇士ペア。



「足手まといにはなるなよ」

「お、おう…」


 1人で戦うつもりの剛と、これから何をするべきか悟った将矢。



「速さと硬さ!これ最強じゃないすか!」

「あ~うん。よろしく」


 そして美保、千夏ペア。これに関してはノーコメント。




「というわけで今夜は解散!仲良くなっとけよお前ら!」


 果たしてこのペアというシステムがこれから先、良い影響を及ぼすのか?


 分厚い本を何冊も読んでこれを思い付いたシャオは絶対に上手く行くと自信に溢れている。だがその時になるまでは、結果は分からない。

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