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心刃一体アクトナイト  作者: 仲居雅人
情動の力編
73/150

第73話 本性

 目が覚めた時には夜だった。路上で倒れていた信太郎は剛たちを探す。しかし既に周りには誰も残っていない。


「チッ…」


 だが収穫はあった。アクトガーディアンの武器とマテリアルの一式をトロワマテリアルに収納すると、今度は奏芽を探しに歩き始めた。






「利害の一致ってことで今回は助けてやる。けどな、お前らがやったこと、忘れてねえからな」


 信太郎に襲われた剛たちはアクトナイト記念公園へ。剛はシャオの治療を受けていた。


「俺も仲間になるつもりはない。利用できる物を利用ししているだけだ」

「てめぇな…」

「まあまあ先輩。今は助けてもらってるんですからね。柔らかく行きましょうよ?」

「お前が那岐にやったことも忘れてねえからな」

「はい、すいません」


 剛の傷が瞬く間に癒えていく。美保は不思議にその光景を眺めていた。


「…よし、治ったぞ。しかし信太郎のやつ、マジで味方狩り始めてんだな。千夏とお前のマテリアルが奪われて…後は将矢と奏芽、那岐は狙われるのか…?」



「悪いアクトナイト!俺のフレイス、もう奪われてるわ!」


 血だらけの将矢が奏芽の肩を借りて公園へやって来た。


「早く将矢を治してあげて!このままじゃ死んじゃう!」

「マジかよ!?どうやって取り返すかな…」


 これ以上、信太郎に好き勝手させるわけにもいかない。本来は怪人と戦い街を守るのが使命のアクトナイト達だが、その使命を取り戻すためにも、信太郎と戦わなければならない。


 だが自分や那岐はともかく、将矢たちが友達である信太郎と戦えるのかがシャオは心配だった。もし力を取り戻せたとしても、戦えなければ意味がないのだ。



 奏芽は治り始めた傷に触れる。当然、手には将矢の血液が付着した。


「ほら汚いから。これで拭け」




「私、大月君を倒すから」


 将矢は凍ったように固まり、ハンカチを地面に落とした。そして耳を疑った。


(奏芽が…信太郎を倒すだって?)

「駄目だ。信太郎は仲間だ…戦うにしてもそれはあくまで最後の手段として」

「仲間じゃないよ将矢。大月君は敵。千夏と将矢のことこんな風にしてさ…アクトナイトさん。もう大月君は敵ですよね?」




「そうだな」

「おいアクトナイトまで!なに言ってんだ!」


 シャオは治療を終えると将矢の肩に手を乗せて視線を合わせた。


「俺も奏芽と同じ意思だ。信太郎は…あいつは敵だ。いつか人を傷付けるようになるぞありゃ」

「そんな…でも前まであいつ、啓太みたいに優しくて周りに気を使ったりしてさ!今の信太郎、変だと思うんだ!」

「その優しさが本性を隠すための衣だったとしたら…?今のあいつ、あれが本当の信太郎なんだ。優しさは…ある種の自己顕示欲だったんだろうな」


 傷の治った将矢が立ち上がれない。今の言葉がかなりショックだったようだ。


 奏芽もくっ付くように隣に座り、静かに寄り添った。




「必殺!竜光の円激斬!」


 デストロイの放つ光輪が無数の怪人を切り裂いた。街を襲っていた怪人が倒され、平和を取り戻したデストロイは拳を掲げた。


「…いいね。決まった…」


 向けられるカメラに不快感はない。信太郎はここ最近、常に快感に浸っていた。


 誰かに褒められながら生きるのはこんなにも気持ちいいのかと、今までの人生が馬鹿の物に思えてならない。


「街の平和は俺が守る!」


 堂々と宣言すると颯爽とその場から離れる。それからすぐに信太郎はスマホを開き、ズラリと並んだ称賛の声を目の当たりにした。


「やーっべこれ!めっちゃ広まってる!」


 既に顔はバレている。だかそんなことはどうでもいい。このままじゃいつか人に囲まれながら生活するというのも時間の問題だ。


(可愛い彼女を自慢する生活…最高だ!)


 信太郎の近い未来は希望に満ち溢れているようだ。




「順調そうだネ」


 メノルが突然現れた。ゾッとして剣を抜いた信太郎から先程までの笑顔が消えていた。


「なんの用だ…」

「ううン。ちょっと様子を見に来ただけだヨ」


 信太郎は以前よりも強い。それでも、メノルの持つ不気味な何かにはこうして恐れを抱いてしまっていた。


「ねえ、仲間にならなイ?」

「断る!」


 信太郎の攻撃を避けてメノルは宙に浮いた。宇宙人だからこれぐらいのことはするだろうと、信太郎は動じていない。


「じゃあこれはどうかナ」


 メノルは手を広げると、信太郎の隣に何かが現れた。人の形をしている、忘れもしないその姿を。


「イズム…」


 自分が殺したはずのイズムが目の前に立っていた。身体に大きな傷はない。


「生き返ったのか…?」


 これには驚かずにはいられなかった。


「…ゆるさない…どうしてイズムをころしたの?」

「ひっ!違うんだ!あれはやりたくてやったことじゃなくて!みんながやれって言うから!」

「みんなにいわれてともだちをきずつけるんだ…ひどいね…」


 そう言うとイズムは消えてしまう。信太郎は手を伸ばしたが触れることすら叶わなかった。


「どウ?すごいでしョ?」

「イズムは…イズムを生き返らせることが出来るのか?」

「それは君次第かナ。僕だけじゃ無理。それじゃあまたネ」


 瞬きの間にメノルが消えた。敵がいなくなったことに安心し、信太郎はその場で崩れるように座った。



 メノルの力ならイズムを生き返らせることが出来る。


 相手は最低な侵略者ではある。だが信太郎は自分の罪を帳消しに出来るかもしれないということばかりを考えていた。

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