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心刃一体アクトナイト  作者: 仲居雅人
情動の力編
56/150

第56話 自警する昇士

「地球人がこんな強いだなんて聞いてないぞ!?」



 とある商店街で、視察に来ていた宇宙人がタコ殴りにされていた。視察と言ってもやることは他と同じで、店に並んでいる売り物を奪ったり、とにかく周りの人々を不快にすることばかりしていた。


 この星では好き放題出来るし、反抗されても返り討ちに出来ると侮っていたチュウ星人だが、一人の少年のせいでとてつもない屈辱を味わっていた。


「いいのか!俺にこんなことしてタダじゃ済まないぞ!」



「それはこっちのセリフだ!好き勝手やってタダで済むと思うなよ!」


 アクトナイトではないその少年は生身で宇宙人を圧倒していた。


 どんな理由であれ視察に来た者には手を出してはいけない。そのルールをすっかり忘れて。



 朝日星士は自分の能力の一割を完璧にコントロール出来るようになっていた。




「そこまでにしろ!でなければ撃つぞ!」


 警官たちが昇士にピストルを向けた。ピストルの弾など効くわけもないのだが、昇士は仕方なく宇宙人を見逃した。


「あいつを殺したら街の人間がどうなるか、考えてみろ。報復なんてレベルじゃ済まない。世須賀は終わるぞ」


 警察はいつも宇宙人と揉め事を起こす昇士の対応をしている。昇士は申し訳なく思いながらも反論した。


「そりゃ分かってますけど…スルーも出来ないでしょ、迷惑かかってるんですから!」

「そうではあるがな…」


「いいんだよ昇士君」


 宇宙人の被害に遭ったコロッケ屋の店員たちが昇士に声をかけた。


「仕方ないけどね…我慢するよ。やり返したら大変な事になっちゃうからねえ…」

「でもいつも街を守ってくれてありがとうね…あんまり無理して守らなくてもいいからね」


 もう街の人たちは宇宙人に関しては諦めていた。好き勝手やられるしかないというのが、街の人々が思うことだった。


「いいわけない!ここはみんなの街なんですよ!なんであんなよく分からない馬鹿に壊されなくちゃいけないんですか!」

「それもそうだけどねえで…」


 それから警察たち昇士を連行しようとするが、並外れた身体能力でアッサリと逃げられてしまった。これもいつものことなので、追いかけようとはしなかった。



「お巡りさん許してあげてね。悪いことしてるつもりはないみたいだからさ」

「分かっています。それでは我々はこれで失礼します」








「余計な事はしない方がこの星のためだ」


 現場から遠く離れた場所まで逃げた昇士の前に突如、デスタームが現れては忠告をした。


「私がフォローしてるから今は大丈夫だが、これ以上視察に来ている者たちに手を出せばどうなるか、分かっているだろう…宇宙戦争になるぞ」


「そっちが何もやらなきゃ俺だって何もしないよ。大体、視察で来てるんだっけあいつら?何が視察だよ。好き勝手やりやがって」


「彼らが視察だと言ったらあれは視察なんだ。強者には逆らわない方がいいと、忠告しておくぞ」

「強者ね…俺に傷一つ付けられないくせに」


 昇士は強くなった。その秘められた力が暴れた時には、アクトナイトより、そして那岐よりも強い。


 だが彼は自惚れていた。この力さえあれば何でも出来ると、今の自分に過信しているのだ。


「俺からも忠告しておく。視察に来てるやつら全員、俺に殺されないように気をつけるんだな…」


「ではそう伝えておこう」


 デスタームは撤退した。昇士は黙って拳を掲げて、自分はまた敵に勝ったのだと実感していた。




「どうすんのこれ」


 場所は変わりアクトナイト記念公園。那岐、信太郎、昇士と次々にメンバーが欠けているが、それでも少年たちは集まっていた。

 奏芽のスマホには昇士が宇宙人を圧倒している映像が再生されていた。


「大月君の次に朝日君。また身内に有名人が増えちゃったんだけど」

「まあいいんじゃねえの?やることやって感謝されてんだし」


 身バレした信太郎は珍獣のように扱われていたが、昇士は街のヒーローになっていた。


「視察に来た宇宙人激怒!だって。こっちの方がキレたいのにね…ヤバくない?宇宙戦争になるかもって書かれてるけど」


 盛り上がってる少年たちの横でシャオはどこか遠くを見つめていた。


「…アクトナイト?どうかしたのか?」

「ん、やること山積みで忙しくなるなって」


 ちょうどその時、パトロールに出ていたアニマテリアル達が公園に戻って来た。


「怪人のエナジーなし、暴れてる視察員は全員昇士がぶっ倒したし…やることねえなぁ」


 忙しいのかやることがないのか、シャオも今何をすればいいのか分からず頭を抱えていた。


「だぁ~!………あの人だったらこういう時、どうすんだろう」


 思い浮かぶのは恩人であるかつてのアクトナイトだった。






 宇宙人がやって来たことで世界は変わり始めている。


 混乱の中で戦士や人々に戸惑いが現れる中でたった一人。やるべきことに向かって進み続ける者がいた。


「舞台は整ったナ。後はその時が来るのを待つだけダ」


 だがそれは地球、そして宇宙の敵であるメルバド星人メノル・シルブブブゼラである。


「序章から破章に行くように、承の次へと転がり始めるように、僕たちの物語は確実に進んでいル」


 語るように独り言を口にするメノル。その言葉には何か深い意味があるようだった。



 怪人が街で暴れるとアクトナイト達が現れて街を守る。宇宙人が暴れると昇士が現れて街を守る。


 では地球人が暴れたら、誰がこの街を守るのだろうか。


「シーノの心変わりは不安要素かに思えたけど…上手く利用出来そうダ」


 この世界で今、誰よりも先を見ていたのは彼だった。



「王子!怪人の準備が整いましタ!」

「ご苦労様。名前は…そうだな、タニングにしよウ」

「いいお名前でス。それではタニング、降下させます!」



 そしてメルバド星人の宇宙人から、1体の怪人が地上へと放たれた。


 それはこれまでの敵よりも遥かに強く、何より恐ろしいものだった。

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