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心刃一体アクトナイト  作者: 仲居雅人
アクトナイト編
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第4話 仲直り

 信太郎は放課後、アクトナイト記念公園に来るのが習慣になっていた。


「よく来るな。暇なのか?」

「うん。部活入ってないしバイトやめちゃったからね」


 別に公園に来て何をするわけでもない。ベンチに寝っ転がって暇になったらスマホを開く。喉が渇いたら自販機で何か買って飲んでいた。


「家には帰らないのか?課題とかあるだろう?」

「父さんと母さんが揉めててね~…居場所がないというか」

「ならお前が仲介すればいい。仲直りさせるんだ」

「無茶言わないでよアクトナイト。もしかしたら離婚するかもって時に息子なんかが首を突っ込めないよ」


 アクトナイトはいつもここに来る信太郎から暗い感情を感じ取っており、毎日相談や愚痴を聞いていた。



 訳あって自分は戦うことが出来ない。大切なことをこんな少年達に任せてしまってると思う度に胸を痛めていた。


「…そうだアクトナイト。俺達が戦ってるメルバド星人の故郷…メルバド星かな?ってどこにあるの?」

「メルバド星は太陽系から遠く離れた星系にある惑星だ。メルバド星人は兵器開発が進んでいて、惑星そのものも兵器に改造されている恐ろしい星だ」


 メルバド星人はこれまで数々の星を侵略し、そこを植民地にしてきた。

 地球はメルバド星人に狙われた一つの星に過ぎない。宇宙人から見れば特殊なことではないのだ。


「100年前はアクトナイトが戦ってこの星を守ってくれたんだよな」

「そうだ。しかし…」



 メルバド星人が何故再び地球侵略を開始したのかはアクトナイトにも分からなかった。百年前の侵略失敗を忘れて攻めてきたのか、それともリベンジなのか。



「俺達って地球を守る大切な戦いをしてるんだよな…喧嘩なんかしてていいのか?」


 将矢と啓太が戦いでの一件で喧嘩を始めてから二週間も経っていた。


「誰にだって衝突することはあるんだ。それからどうなるかはその人達によって色々だが、二人には仲直りしてもらわないと少し困るな」


 アクトナイトは溜め息をついてそう言う。仲直りして欲しいという気持ちは信太郎も同じだ。しかしどうすれば良いかが分からない。


「まあ…水野と金石がなんとかしてくれるよな」


 自分に出来る事はないと悟った信太郎はそれ以上は考えず、暗くなるまで公園で過ごした。




 同刻、啓太と千夏はショッピングセンターの本屋に来ていた。

 二人とも漫画を読む趣味があり、時々こうして漁りに来るのだ。


「なんかこれ面白そうじゃない?」

「え~?………確かに」


 互いに読みたい本を買ってそれを貸し借りする。それが二人の楽しみ方だった。


「啓太はこれ」

「絵本じゃん…」


 千夏の取った絵本は喧嘩をした子ども達が仲直りするという内容だった。明らかに将矢との事を指していた。



「僕は別に…喧嘩とかそういうのじゃないから」


 本屋を出た後、啓太は思っていたことを千夏に吐き出していた。


「ただちょっと調子に乗ってるところがあるっていうか…そもそもこの前だって啓太が公園に行くなんて言い出さなきゃアクトナイトになることなんてなかったんだ」

「まあそう思う時はある…けど喧嘩した理由はそれじゃないよね」



 千夏が甘いものを食べたいと言い、啓太は慣れないケーキ屋に入った。


「あっ…」


 そしてどういう縁か将矢、奏芽ペアと遭遇してしまった。


「ねえ見てよこのネイル」

「わあ~綺麗じゃん」


「…………」

「…………」


 女子たちがせっかくだからと四人でテーブルを囲んでお茶することになった。だが二人がうるさいぐらい話すのに対して啓太と将矢は目も合わせずにケーキが来るのを待っていた。


「…………」

「…………」



「啓太。喧嘩の原因は?」


 それを見ていた千夏が、まるで母親のように尋ねると啓太はばつが悪そうに口を開いた。


「ごめん。あの時他人事みたいな感じで…」

「それと?」


「…これまでにも意見をコロッと変えたりしてごめんなさい。次からは気を付ける…」



「俺も小さなことで強く言い過ぎたって反省してる。すまなかった」


 二人が頭を下げているのを見て、奏芽と千夏は二人の間にあった壁が溝が埋まったように感じた。



 二人はあっさり仲直りした。それからは以前のように、適当な話題で盛り上がりながらケーキの味を楽しんだ。






「くっ!このままじゃヤバイって!」

「すまない信太郎、まだ誰とも連絡が取れないんだ。なんとか持ちこたえてくれ!」


 そのころショッピングセンターからそう遠くない高架橋では、アクトナイトセルナが剛腕怪人ゲッペンと激闘を繰り広げていた。


 セルナは利き手に重い一撃を貰っており、まともに剣が振れずに攻撃を回避する一方だった。


「危ない!」


 ゲッペンは近くの車を持ち上げると見物していた市民に向かって投げた。セルナはダッシュして市民を守ったが、当然無傷ではいられなかった。


 セルナは身体を使って跳んでくる車を受け止めた。


「ぐっ!……早く逃げて……」


 怪人に圧倒され?セルナを見ていた市民たちは、流石に身の危険を感じて遠くへと逃げ出した。


「駄目だ…もう動けない…どうしよう」

「頑張れ信太郎!」


 応援されても無理なものは無理だ。セルナは立ち上がる事が出来ずにその場で倒れたままだった。



 ゲッペンは邪魔なセルナにトドメを刺そうと歩み寄った。


「すまん信太郎!遅れた!」


 そこにアクトナイトフレイスとジュピテルが駆け付けゲッペンを斬りつけた。


「バトンタッチだ!」

「二人とも…仲直りしたんだ。よかった…」


 信太郎のソードに二人の心が伝わってくる。トゲトゲとした感情は既に消えており、硬い絆が結び直っているのを感じた。



「迂闊に近寄るな。鈍いけどあの両腕で殴られたら一溜りもないぞ」

「分かってる。だから既に仕掛けておいた」


 周囲の街路樹に変化が起きていた。ジュピテルの力によって急激に成長するそれらの枝が、鞭のように伸びてゲッペンを捕まえた。


「これであいつは動け…るな」

「だな」


 だがゲッペンは剛力で枝を全て引きちぎった。そして地面から抜けた街路樹を一本持ち上げて、ブンブンと振り回した。


「俺が行くぜ!」


 敵がどんなことをしていようと関係ない。フレイスはグリップ底を叩き刃に炎を纏わすと、力強く地面を蹴って走り出した。


「まだ緑の力は残ってる!」


 ジュピテルは折れた木々を急成長させ、ゲッペンを躓かせてハンマーのように振り回される木を受け止めた。


「決めるぜ!フレイススラッシュ!」


「加速していく紅蓮の連撃!フレイススラッシュ!」


 フレイスはゲッペンを一度斬り抜け炎上させた。そして背後から剣を乱舞させて何度も攻撃を繰り返し、最後に下から上へと振り上げて宙に浮かせた。


「パスだ啓太!」

「分かった!」


「いけ啓太!尊き命の奇跡の斬撃!ジュピテルスラッシュ!」


 マテリアルを叩いたジュピテルはゲッペンの落下地点にまで移動した。そして降って来た怪人に傷を付けた。


 一見全くダメージの入っていない攻撃のようだが、傷口から植物の芽が現われた。


「グ…ギギギ!」


 植物は花を咲かせるためにゲッペンの生命力を吸収した。ゲッペンは見る見ると細くなっていき、栄養のみならず肉や骨までもが植物に吸収され、最後には成長した花だけが残っていた。



「僕の攻撃…強すぎない?」

「強力な技だが根の埋まった部分が切り離されたり、相手が生命体でなければ発動しない通用しない技だ。気を付けろ」


 フレイスは倒れているセルナを持ち上げるとすぐにその場を後にした。




「あ、起きた」


 信太郎が目を覚ましたのはまたアクトナイトの銅像前だった。


「酷い骨折だったがもう大丈夫だぜ。俺のパワーで修正した」



「………二人とも仲直りしたんだな」


「駆けつけるの遅くなってすまん。ケーキ食ってた」


「ケーキか…甘い物食べたいなぁ」

「じゃあ今から行こうよ。ファミレスとかならまだ空いてるだろうし」


 それを聞いた信太郎はベンチから降りて荷物を持った。そして剣の入ったバッグを見るとふと思っていたことを口にした。


「アクトナイトさぁ、剣でしか連絡取り合えないって不便じゃない?」

「それな。ニュース観るまで私達も気付かなかったし」



 ゴトゴトと物音がした。先程まで信太郎が寝ていたベンチの上に5つの物体が置いてあった。


「どういう原理よ…」

「アクトパワーだ。そんなことよりこれはトロワマテリアル。3つの力を持ったマテリアルだ」


「マテリアルて…この石ってアクトナイトさんが作ったんですか?」


 信太郎たちが使うセルナマテリアルなどと同じくこれもマテリアルのようだが、その見た目はやけにゴタゴタとしていた。


「トロワマテリアルのボタンを押してみろ」


 五人は言われた通りにボタンを押すと、それぞれのアクトソードとマテリアルがトロワマテリアルへと吸い込まれた。


「機能その一、アクトソードとマテリアルを収納する鞘モード。これに触れれば以前のように心を繋げての会話も出来る。持ち運びには便利だ」


「うわー凄い。どういう仕組み何ですか?」


 千夏がポンポンと投げたりしていると、突如トロワマテリアルが巨大化して変形した。


「うわびっくりした!」

「機能その二、ボードモード。この状態のトロワマテリアルは空を飛べるスケボー、まあエアボードとでも言うべきか。それと盾としての役割を果たす」


 千夏がエアボードに乗って公園の上空を飛んでみると、アクトナイトが想像していたよりも簡単に乗りこなしていた。


「おいおい!危ないから高い場所を飛ぶのはアクトナイトに変身している時だけにするんだ」


 アクトナイトは注意するが夢のような乗り物を見て全員興奮して乗り回していた。



 それから遊び疲れた少年たちは地面に降りると、残りの機能を教えろと催促した。


「デバイスモードだ」


 トロワマテリアルのデバイスモードは手のひらサイズのボードモードと言える見た目だった。


「怪人の正確な位置はそれで伝える。それから色々調べ物は出来るが履歴は共有だから気を付けるんだ」


「せっかくだから近くのファミレス調べてみようよ」

「ありがとうアクトナイト。それじゃあまたな」


「今日もありがとう。ゆっくり休むんだぞ」



 早速奏芽がデバイスモードで近所のファミレスを調べた。そして早く行こうと公園を出て行った。

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