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心刃一体アクトナイト  作者: 仲居雅人
情動の力編
36/150

第36話 戦士たちの邂逅

「いや~ビックリしましたよ。先輩って凄かったんですね」

「隠していてすまなかった。」


 自分の彼氏である剛に別の顔があったことに、美保は驚きはしたが嫌悪感などは持たずいつも通りに接していた。


「あいつ…信太郎とか言うのはどうなった」

「あぁ~よく分かんない。戦いの後ぶっ倒れてたんですど、家に帰って来た時にはそれはもう無傷の状態で…怪物なんじゃないすかね」

「…どうする?殺すか?」

「いや流石にそこまでやんなくてもいいですよ。それに街を守るヒーローなら、今死なれると困るし」


 美保はアクトナイトセルナの正体が信太郎だということも知ってしまった。それでも嫌悪していた。


「…先輩も怪人と戦ったりするんですか?メルバドってやつと」

「もう何千も倒している」

「えぇ!?じゃあアクトナイトよりも優秀じゃん!なのにあいつらばっかニュースで取り上げられるのズルい!」

「あいつらと違って俺は社会が秘密裏に造り出した戦士なんだ。それこそニュースになればどうなるか想像もつかない」


 色々事情があるそうだが、それを知ることは今後ないだろうし、知るべきではないなと美保は考えていた。



 剛はエアコンの温度を下げた。暑がりな美保に合わせて、剛の部屋はとても涼しくなっていた。




 日光に照らされるアクトナイト記念公園では、信太郎がベンチで横になっていた。


「アクトガーディアン…まさかそんな戦士を造る技術がこの星に存在したとは」

「きっと宇宙人が関与してる…灯刀さんの両親が」


 最近、色んな事が起こった。それに対して信太郎はかなりのストレスを感じていた。


「なぁ…しばらくアクトナイト休んでもいいか?いや無理なのは分かってるんだけど」

「構わないぞ」

「いやいいんかい!」


「信太郎、お前の心は今、空気を送り過ぎて破裂する寸前の風船みたいになっている。これはとても危険な状態なんだ」

「破裂したらどうなるんだ?」

「人が変わる、何も出来なくなる…色々考えられる。少なくとも良いことは起こらない。だから今のお前にはガス抜きが必要だ」


 すると信太郎のポケットからトロワマテリアルが浮いて銅像に吸い込まれてしまった。


「ゆっくり休んでくれ、信太郎。元通りになったらまたここに来てくれ」

「分かった…それじゃあしばらく、休暇をいただくよ」


 こうして信太郎は、しばらくの間アクトナイトセルナを休むことにした。



 アパートに戻ると誰もいなかった理恵子は大切な用事、美保は彼氏とデートだと言っていた。


「くうう!のんびりしよおおお!」


 信太郎はソファにダイブした。疲れが溜まっていたのか、それから数分もしない内にぐっすりと眠ってしまった。




 その頃、記念公園には那岐と昇士が訪れていた。


「アクトナイト。まだ変身アイテムは残っているわよね。昇士にその力を貸して欲しいんだけど」

「無理だ。彼には適正がない。剣とマテリアルは適正のある人間にしか使えない」

「そっか…やっぱり俺じゃ灯刀の力にはなれないんだね」


 しょんぼりした昇士の肩に、優しく那岐の手が置かれた。意外にも、彼女は昇士を励まそうとしているのだ。


「別に落ち込む必要はないわ。それに私の助手としてよくやってると思う」

「でも…」


 いつも近くで戦いを見てきた昇士は、それがどれだけ大変なことか分かっているつもりだ。だからこそ力になれるかと期待していが、自分は変身出来ないと言われてかなりショックだった。


「敵のエナジーだ!場所は北、解体工事中のマンションだ」

「妙なところに現れたわね…まあいいわ。それじゃあ行ってくる。来なさいワシ丸!」


 那岐は念のために仮面とローブで変装をしてから、大空に舞い上がって行った



「…俺はアクトナイトに変身出来ないのか?」

「昇士、お前にはアクトソードを扱う適正がないんだ」


 バタンッと音を立てて銅像の前にアクトソードとマテリアルが現れた。


「触れてみるんだ」


 言われなくとも昇士はアクトソードに手を伸ばしていた。剣に触れることは出来なかった。途中まで伸ばした手がそれ以上剣に接近させられなかった。


「剣が俺を拒絶してる…」


 自分にはアクトナイトになる適正がない。それでも、昇士は限界まで諦めようとはず、剣に手を伸ばし続けた。




 廃棄ビルに現れた怪人には、那岐と先に戦闘を開始していたビヴィナスが戦っている。

 怪人には全身からニードルを発生させ、発射する能力が備わっていた。


 既にビヴィナスの胸部装甲は破壊され、那岐は左足の付け根に深い傷を追い動けなくなっていた。


「油断した…!」


「どうしよう…一度撤退を」

「ダメよ!こんな危ないの、野放しにしておけないわ!」


 怪人はニードルをミサイルのように発射して、二人が身を隠してた物陰に集中攻撃を浴びせた。



 柱が壊れてビルは倒壊。外へと飛び出した二人を怪人は追った。




 その時、那岐は悪感に震えた。そう、またあいつが現れることを予感した。


 後ろを振り向いた瞬間、飛来した黒い煙が怪人を捕らえた。


「あれってもしかして!」

「そうよ…」


 煙が晴れると、以前と同じようにニードルの怪人は殺されていた。例の黒い怪人によって。


「ギナタナヒ!ルヤテシロコ!スロコ!」


 怪人は那岐を狙って接近してきた?。那岐は足元の建物にビヴィナスを投げると刀を構えた。


「そんな身体で無茶だよ!」

「ここで逃げるわけには…」



「まともな判断が出来ないのは相変わらずのようだな、那岐」


 久しぶりに聞く声に那岐は動揺していた。怪人も新たな敵に気が付いて攻撃を中止した。


 アクトライフルとアクトバヨネットを両手に、剛が姿を現した。


「何でここにいる…」

「対地球外生命体組織はお前の除名を決定した。不確定要素であるアクトナイトの仲間になったお前はもう必要ないそうだ」

「そんなこと!ダディ達が黙ってると思うの!?」

「残念だが両親公認だ。悲しんでいたぞ」


 剛はアクトガーディアンに変身すると建物の上へジャンプで移り、黒い怪人の方を向いた。


「1号であるお前はもう用済みだ。これからは普通の人間らしく生きるといい」

「いきなり出てきてなんなのよ!」


「1号の運用は現時刻をもって終了及び除名。これからは2号である二地剛がアクトガーディアンとして対地球外生命体活動を実行する!」


 ガーディアンは怪人に向けて試しに発砲したが、予想通り効果はなかった。


「剛!私が用済みってどういうことよ!」

「お前もその刀も既に必要なくなったということだ」


 それでもガーディアンは怪人に反応があるまで射撃を続けた。


「まだマテリアルのパワーが低いか…調整が必要だな」




「灯刀あああ!」


 アニマテリアルを連れて、昇士が走ってやって来た。足のダメージもあり那岐は落ち葉のように地面へ降りて、倒れそうになったところを昇士がキャッチした。


「酷い怪我だ…早くアクトナイトのところで治してもらおう!」



「ゾエネャジンテケツセミ!」


 怪人は攻撃してくるガーディアンにも構わず、那岐たちの方へ急降下した。


 二人の目前まで怪人が迫ったその時、エアボードに乗って駆けつけたフレイスとアーキュリーが攻撃を阻止した。


「なんか変な奴いねえか?」

「本当だ…あれが大月君の言ってたガーディアン?」


 フレイスは炎を噴射して怪人を追い払う。アーキュリーは二人の前に立って剣を構え直した。


「って灯刀さん酷い傷!」

「昇士、灯刀を連れてアクトナイトのところまで!」


 言われるまでもなく昇士は那岐を連れてこの場を離れようと走り出した。



 だが今度は、昇士たちの前にメルバナイト達が現れた。


「同族殺しの怪人とやらを見に来たらアクトナイトがいるじゃねえカ!」


 マジクとシャインまでもが現れて場は混沌と化していた。アクトガーディアンはウェポンを分離させ、敵の攻撃に警戒した。


「アクトナイトが3人…後の1人は…」



 戦えない昇士たちを囲むようにアクトナイト達がフォーメーションを組んだ。

 空に立つ黒い怪人、信太郎を倒したアクトガーディアン、強敵メルバナイト。それらに囲まれているのは生きた心地がしなかった。


 今彼らに求められる行動はただ一つ。無事にこの場から撤退することだ。


「炎と水と岩…この3つの力でどう切り抜けるか…とりあえずやるぞ!」


 三人は一斉に剣を振って、それぞれの属性で巨大な壁を生成した。


 壁の陰にアクトナイトたちが隠れた途端、黒い怪人は動き出した。攻撃をしようと彼らの元へ急接近するが、それをガーディアンが邪魔した。


「お前はここで始末する」

「それは俺たちの役目だゼ!そいつに怪人たちはやられちまって部下たちも困ってるんダ!」


 魔法を使い一瞬で接近したマジク。ガーディアンのバヨネットを弾いて怪人を守ったかと思うと、回り蹴りで怪人を地面へ叩きつけた。



 ちょうど真下には撤退を目指して走るアクトナイトたちがいた。


「ノシタワハンクヒサア!テシエカ!」

「何か喋ってるよ!」


 水と岩が進路方向を塞ぐが、怪人は岩を砕いて水などものともせずに彼らに腕を伸ばした。


「ぶったぎる!」


 そう叫んでフレイスは剣を振り下ろすが、怪人は手を引っ込めて彼のことを睨んだ。そして感じた恐ろしい殺気に、フレイスは怯んでしまった。


「…く、ビビっちまった!」


 怪人はアクトナイト達を無視して那岐を抱える昇士の元へ。どうやら狙いは彼のようだ。


「エネャジンテッラモテシカンナコッダマサメヒオ!ンクヒサア、テテスツヤナンソ!テミヲシタワ!」

「な、何なんだよこいつは!」


 爪を立てた怪人が那岐を引き裂こうとしたその時、割り込んだシャインがその手を防いだ。


「お前…俺たちを守って…」

「やっぱりこの子は…」


 何かに気付いている様子のシャインは怪人と鍔迫り合い。少しずつ背後の昇士たちから離れていった。


「アアアアアダマャジ!」

「陽川さん…あなた、朝日君のことが好きなのね」

「アアアアア…エ………」


 誰にも聞かれないよう、シャインは小さな声で話し始めた。


「そんな気はしてたよ。校外活動のグループ、朝日君以外のメンバーはただの数合わせだったんでしょ?」

「その声は…愛澤さん?どうして宇宙人の姿を…」

「あなたは朝日君が好き。だからいつもそばにいる灯刀さんを静かに憎んでいて、心の闇を増長させてしまった。きっとそれをメノルに利用されたんだろうね…」


 怪人の姿をした芽愛の胸の中心には、真っ暗なマテリアルが。それこそ、メノルが那岐に渡したダークネスマテリアルだ。芽愛の闇を具現化し、彼女を闇怪人メイへと変身させていた。


「…アアアアアダンナラカダ!」


 怪人になってしまった。それがどうした?私は朝日と一緒にいたい。だから怪人と邪魔なもの、全てを壊して彼を守る。


 そう固く決意をした芽愛は、敵に知り合いがいたことなどどうでも良かった。


「これ以上は無理か…」


 自分にとっては友だちである芽愛を真華は殺せない。シャインの剣は急所を避けて、メイを怯ませた。


 だがメイは殺すつもりだ。両手でシャインの首を握り締め、身体を持ち上げた。


(そんな…このままじゃ!)

「リトヒハズマ!ルモマガシタワハチマノコトンクヒサア!」




「これ以上滅茶苦茶になるのは良くないヨ。ここまでにしよウ」


 オリジナルのアクトソードを持ったメノルが姿を現した。

 メノルはマジクと戦闘中のガーディアンを背後から斬りつけ、次にメイの腕を力強く蹴りシャインを解放した。


「エルビス、勝手な行動は困るヨ。」


「でもあの妙な怪人ガ!」

「あれは僕が秘密裏に作った怪人ダ。言い忘れてた、ごめんネ」

「言い忘れてたってお前ナ…」


 エルビスに謝ると、メノルは倒れていたシャインに手を貸した。


「メノル…どうして彼女を怪人に…彼女は無関係で」

「怪人が現れる街に住んでる時点で無関係じゃなイ。それに彼女のようないい素材を使わないのは勿体ないヨ」


 友達の友達を怪人にしている。メノルはその事を悪びれることもなかった。


 そしてその怪人はいつの間にかいなくなっていた。だが、また必ず姿を見せるだろう。



「絶対に取り返せ!」


 隙を狙ってアクトナイト達がメノルに強襲した。人に近い姿をしているが彼は悪の宇宙人だ。攻撃をする事に一切の迷いはなかった。


「メノル!」

「心配いらないヨ」


 メノルは剣を振り上げると突風を起こし、三人を吹き飛ばした。

 その剣にはマテリアルがセットされていたが、すぐに塵になって風に飛ばされていってしまった。


「上手くいかないナ…感情が必要なんダ」


 頭上からアクトガーディアンが仕掛けていたがそれをお見通しだった。

 メノルは身体を反らして銃弾と銃剣の両方を回避して、ガーディアンを剣で叩き跳ばした。


「くっ!」


 ガーディアンの変身は解除され、戦闘続行を不可能だと判断した剛は真顔で去っていった。


「あれって三上浜高校の制服じゃない?」

「だね。じゃあ今の人ってそこの生徒?」


 戦意のないアーキュリーとビヴィナスは呑気に会話をしており、自分たちがフレイスの上で尻もちをついていることに気が付いていなかった。



「後はお前たちだけカ…ここでぶっ殺してやル!」

「待ってよエルビス。大月信太郎君がいない今、ここでの戦いは大した意味を持たなイ。時間の無駄だしお腹も空いたから帰ろウ」

「へいへイ。命拾いしたナ!」


 変身を解除したエルビスは興奮気味に剣を振り回し、メノルと一緒に宇宙船へ戻って行った。


「…仲良さそうだね」


 一言呟くと、シャインも宇宙船に移動した。




 那岐の治療のため急いで記念公園へ。今回の乱戦で全員無事だったので、結果勝利と言えるだろう。


 治療の後には今回のまとめだ。黒い怪人に他校の生徒が変身するアクトガーディアン、メノルの妙な言動と色々あった。


「あの黒い怪人は…」

「俺と灯刀を狙って来た感じだった…けど…」


 その怪人に狙われた昇士には引っ掛かる部分があった。


「あの怪人…俺を殺す意思はなかったと思うんだ」

「何言ってるの?私たち、引き裂かれそうになったじゃない。敵が乱入しなきゃ殺されてたわよ」


「いや…あの爪は灯刀だけを狙ってた気がするんだ」

「その根拠は?」

「俺に対しての殺意が感じられなかった」


 その言葉に那岐は呆れてため息をついた。


「殺意が感じられなかったって、戦いの心得もないあんたに人の意思なんて読み取れるわけないでしょ」

「かもしれないけど…多分あの怪人は俺を殺すつもりはなかった。それに初めて会った気がしない…むしろよく出会ってるような…」


「…考えても無駄ね。そこまでになさい」


 これ以上考えたところで黒い怪人の対策などは出来ないだろう。時間が勿体ないので、今度はアクトガーディアンについて。


「二地剛は私と同じ対地球外生命体組織に所属する2号戦士」

「でその2号が変身したのが、この前信太郎がボコボコにされたって言うアクトガーディアンか…」

「制服は三上浜の物で間違いないと思うよ。多分、灯刀さんと同じで表では高校生活を送りながら宇宙人と戦ってたんだと思う」

「私たちより強いよね…多分」


「アクトガーディアン…ふざけた名前しやがって!」


 普段は落ち着いた雰囲気で振る舞うアクトナイトが、口調を崩してシャオの本来の喋り方になっていた。


「アクトガーディアン…それの製造すら私は知らされていなかった。もうその時点で、私が蹴られるのは確定していたのね」


 那岐は地球を守る戦士として育てられた少女だ。だがアクトガーディアンという戦士の登場が、彼女の存在を否定した。


 用済みの彼女はもう組織には必要ない。




「ここがお前たちのアジトか。地図には記載されず、衛生カメラで捉えることも不可能。それに妙な銅像以外何もないという、科学的にも心理的にもステルス出来るこの記念公園。見つからないわけだ」


 公園の外から一人の少年が歩いて来た。ライフルとバヨネットが入った大きなケースを持ち歩き、剛が公園の中へと入って来た。


「お前!どうしてここが分かった!」

「尾行した。団体で移動していれば尾行など容易いものだ」


 戦う意思がないのを示すため、剛はケースを地面に置いた。

 だが剛は一度信太郎と敵対している。それを知っているので、気を許せるはずもなく全員武器を構えていた。


 剛は武器を気にせず話を続けた。



「アクトガーディアンが実践投入された今、もうお前たちは不要となった。アクトナイト、彼らから武器を取り上げて早く地球から撤収しろ」

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