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心刃一体アクトナイト  作者: 仲居雅人
大月信太郎編
148/150

第148話 消滅、そして…

『アクトベイト!』


 ソードの窪み一斉にマテリアルをセットする少年達。しか彼らの姿は変わらなかった。


「あれ?変身できない!?どうなってるのシャオ!」

「エナジーが感じられない…」

「私の盾も召喚出来ない…!」

「ってことは…あたしは元の姿に戻れねえ!?」


「特異点の中ではパワーは均等になる!まずはメノルをこの星から追い出すんだ!」

「だったら…袋叩きだ!」


 信太郎がメノルを掴んだ。さらにシャオが指示を出すと、彼はメノルを投げ飛ばしてそこへ少年たちが襲い掛かった。


「ぐっ!君たち!戦士の誇りとかないのか!うがっ!」

「殴れ!蹴れ!その間に俺たちはアクトーザーの準備だ!手伝え!」

「ちょっ!?こんなやり方で良いんですか!?」


 シャオはルクと一緒に宇宙船へ戻った。この惑星に到着した時に不時着した船はすぐに出発できる状態ではない。少年たちはそれまで時間を稼ぎ、さらにメノルを連れ出す準備をしなければならない。


「こんなやり方で良いのかよ!?」

「ここは特異点だ!死にやしない!傷だってすぐに治る!容赦する必要はない!」


「ちょっとあっち行ってようね~」


 流石に女子にこんな不良みたいな戦いはして欲しくない。啓太は千夏たちを追い払ってから参戦した。


「オラッ!オラッ!オラッ!オラッ!」


「ドラコ!?なんでこっちにいるんだよ!」

「1発蹴らないと気が済まねえ!こいつのせいで宇宙が滅茶苦茶になったんだろうか!アクトナイトが死んだのだってこいつが原因なんだ!」


 あまりにも酷い戦いだった。倒れたメノルを信太郎たちは踏んで蹴って、一方的だった。


「宇宙船の準備、完了しました!」

「こいつで縛れー!」


 シャオとルクが持ってきた縄。地球にはない頑丈な素材で作られた縄でメノルは拘束された。




「えっ!?特異点から出ると同時に断頭!?」

「断頭って首チョンパだろ!?処刑みたいでやだなぁ…」


「仕方ねえだろ、外に出てからフルパワーになられても困るし…」


 ルクとドラコは捕えたメノルと共に宇宙船の屋根へ乗った。



 少年たちは船内で、無事にメノルの始末が終わるのを待っていた。


「なんだか呆気ない幕切れだなぁ」

「勝ったし良かったんじゃない?」

「あのさ、帰ったら打ち上げやろうよ!」

「いいですね!」




 部屋ではこれからの事で盛り上がっているが、信太郎とシンは静かな廊下で立ち話をしていた。


「少しの間だったけど、一人の人間として過ごせて良かったよ…楽しかった」

「別に俺の中に戻らなくたって良いんだぞ。シンはシンで好きに生きていいんだ」

「良くないよ。ルクが言ってたけど、僕も混沌の原因らしいんだ。それに1つに戻ることで、君と信太郎のパワーは1つになる。この先色んな世界で戦うんだから、強い方がいいでしょ?」

「あぁ…ありがとう」


 信太郎はルクと共にこの世界から旅立つ。そしてシンはイマジナリーフレンドとしての役目を終えて、信太郎の中に戻ることを決めた。一度戻ればパワーしか残らない。模造品の魂は本物の魂の一部となる。シンは消えるのだ。


「…楽しかったな。海に行ったり焼き肉食ったり…嫌な事もあったけど、それも全部大切な思い出だ」

「陽川さんが昇士に好きって伝えた時、死にそうな心境してたよね~」

「うるせっ!やっと忘れそうだった失恋を掘り返すなバカ」


 平和を守る戦いには勝利した。しかしもう日常へは戻れない。世須賀で暮らすことも出来ない。


「…寂しくなるな」

「友達なのに一緒にいてあげられなくてごめんね」

「みんな、俺のこと思い出してくれなかったし…結局いなくなるからそれで良いのか」



 ゴウッ…


 宇宙船アクトーザーが浮上を開始した。信太郎は一度地球へ降りてから、ルクと共にこの世界を去ることとなる。


「…そうだ!ルクのやつ宇宙服着てないぞ!?それなのにメルバド星から離れて大丈夫なのか!?」

「あぁ、それなら問題ないって。メアリスには武器と能力が与えられていて、ルクはビームが出る盾と超適応能力があるんだって。だから宇宙空間でも大丈夫」

「へぇ~…じゃあ俺も何か貰えるのかな」

「だといいね」


 二人は呑気に会話をしながら、ルク達がメノルを始末して戻って来るのを待った。






「お前との因縁もここまでだなぁメノル」

「君は…誰だっけ?」

「ぬぁ!?ドラコ!ドラコだ!アクトナイトと一緒にいた超カッコいいドラゴン!忘れたのか!?」

「昔あった人の顔なんて覚えてないよ…」


 縄で拘束されているメノル。これから殺されるというのに、彼は随分と落ち着いていた。


 ルクは盾に付いている砲口をメノルの首と胸に向けていた。


「特異点の力が弱まって召喚は出来ましたけど、発射するにはもう少し離れる必要がありそうですね」

「おい、誰かに言っておきたい事はあるか?あたしからで良かったら伝えといてやるよ」



 ドラコにも優しさはある。同じ星の人間全員を兵や怪人にしたこの男に友達がいるとは思えなかったが、念のため尋ねておいた。



「そういう人は誰もいない…」

「だろうな」

「けど…君たちにはあるよ。言っておきたいこと」

「んだよ、命乞いか?負け惜しみか?見苦しいからやめとけよ」




「ラスボスである僕が断頭なんて形で終わるはずがないだろ」








「全員変身しろ!」

「ど、どうかしたの?」

「急げ!」


 船内で信太郎が叫び声をあげた。少年たちは言われた通りに変身した次の瞬間、天井で大爆発が起こった。




 宇宙船アクトーザーはメルバド星付近にて全壊した。




「みんな無事か!?」

「ねえ!昇士は!?」


「なんか俺の身体、宇宙空間でも大丈夫みたいだ!それより信太郎とシンだ!あいつらの真上で爆発したぞ!?」


 爆煙の中からアクトナイト達が現れる。コックピットにいたシャオも、翼竜に戻れたドラコの背中に乗っていた。


「ごめんしくじった!メノルが怪人になりやがったんだ!ルクが助けてくれたけど、あいつは…」

「キャッ!?」


 ドラコを庇ったというルクがグルグルと身体を回して現れた。そのまま放っておくと宇宙の彼方まで転がっていきそうだった彼女は、ドラコの口でキャッチされた。


「シン君に助けてもらったんですけど彼が!」

「うぐぁッ!?」


 次にシンが攻撃を喰らったかのように飛び出してきて、それも同じようにドラコがキャッチした。


「ナイスキャッチ!でもまだ信太郎が!」

「天丼すんな!それで信太郎はどうなった!?」


 シュゥゥゥ…


 煙が1ヶ所に集まるように消えていく。そこには怪人と、それに首を掴まれた信太郎がいた。


「ぐっ…」

「お互いに特異点の力が身体に残っていたみたいだね。けれどこうしてダメージを与えている今、君の方が先に尽きる」

「やっ…」

「力が失われたら瞬間、君は自然の法則に従ってこの宇宙空間で死ぬ。そして今度こそ、僕はこの世界を改変する」


 特異点の力が世界の法則を無視させている今、信太郎は生身の状態で宇宙空間にいられる。しかし僅かしかない力はやがて尽きてしまう。


「君は神様になれるチャンスを自ら手放した。どうしてだい?」

「やれ!ルク!」



 ピシャン!


 ドラコと合体したルクが両腕の盾を掲げた。そして頭上へ向かって、果ての見えない光の刃が発生したのである。


「まさか…やめろ!」

「スイカみたいに叩き割っちまえ!」


 これから起こることを阻止しようとするメノルだっだが、掴んでいたはずの信太郎に今度は掴まれてしまい、ただ見ているしかなかった。




 ヤイバアアアアアアアアアアア!


 振り下ろされた刃によって、メルバド星は真っ二つ…



 いや、それどころかルクは中心に到達した刃を制止。そこからさらに出力を高めたのである。


「いっげえええええええ!」


 メルバド星は光に飲み込まれ、跡形も残らずに消滅した。




 メルバド星の消滅。それはつまり、メノルの野望が潰えたということである。


「あぁ…ああああああああああああああ!?うわああああああああああ!」


「今の一撃で特異点もあそこにあったノートもなくなった。お前の野望はここまで」「これじゃあ僕は本当にラスボスじゃないか!地球での生活を謳歌するシーノは!?エルビスは最強の戦士になるはずだったんだぞ!僕は何者でもない人間として生きるはずだったのに…許さない…許さないぞ!」


 ゴワッ!


 メノルは信太郎を掴んだまま、その場から凄いスピードでどこかへ向かって移動を開始した。


「…お、追うぞ!みんな乗れ!」

「この方向…地球ですよ!メノルはおそらく地球を目指しています!」


 仲間を乗せたドラコはメノルに追い付こうと加速する。しかし遠くから感じられる異様なエナジーは、どんどん離れていく。


「おい!信太郎のやつがヤバイぞ!」

「そうだあいつ生身じゃねえか!」

「見た限り彼の身を守っていた特異点の力も僅かでした!このままだと本当に死んでしまいます!」



 スタスタスタ…


 鋼鉄の背中の上を歩いて、ドラコの頭部に誰かが近付いた。


「ドラコ、僕を打ち出して」

「シン、振り落とすぞ!座ってろ!」

「元は架空の存在の僕も今では立派な人間だ。変身してない今、死ぬのは時間の問題だよ」

「変身できないお前が先に行ってどうする!?」


「信太郎の中に戻る。別れて成長した2つの力を1つにする時が来た」


 信太郎との統合。それはシンの魂の消滅である。説明はされずともそれを察したドラコは納得出来なかった。


「黙って座ってろ!もっと加速する!」

「そんなことしたら君の身体がバラバラになる」

「この身が砕けて仲間が救えるのなら本望よ!」

「シャオを独りにするつもりか!」

「!」


 少しずつドラコが失速していく。頭を撫でながら、シンは話を続けた。


「信太郎がこの宇宙から去った後、アクトナイトの代わりに戦うのは君たちなんだよ。その使命をシャオだけに背負わせるなんて可哀想だよ」

「…後の事まで考えてらっしゃるとは、しっかり者だねぇ」

「そりゃあ、信太郎の理想の友達だからね!」


 そして遂にドラコが止まった。シンは正面にジャンプして、フワッとドラコの頭の少し上辺りに浮いた。


「少しの間だけど楽しかった。あたしは信太郎よりお前の方が好きだよ…絶対に駆けつける!後は任せとけ!」

「皆!僕の事は忘れて良いけど、信太郎の事はちゃんと思い出してよ!友達なのに忘れちゃいましたなんて酷いからね!…それじゃあ!」



 ゴゴゴゴ…


 ドラコは身体を鳴らして口を閉じた。そしてシンが良い位置に来た瞬間、ガバッと開口。そして金色の炎を一直線に放射。

 炎を受けたシンはアクトソードを抱えたまま、先程の何百倍もの速度で前進して行った。



 突然のドラマで呆気にとられる少年たち。その後ろでシャオは涙を堪えていた。






























 最終怪人メノルは視界に豆粒ほどの地球を捉えている。信太郎は首を握られながらも、未だに生きていた。


「何をするつもりだ…」

「君を殺してからあの星を滅茶苦茶にする。最期はやられてしまうだろうけど、それまでに1人でも多く殺してやる!」

「意地汚ねえ!思考まで怪人になったな!けど特異点の力が残ってる!お前に俺は殺せない!」

「それは僕も同じ!さらに残っている力は僕の方が上だ!運命を決めるこの力で君の呆気ない死を確定する!」

「やってみろカス!」


 口では強がっているが、このままでは本当に殺されてしまう。それに自分が死んだ後、もしもメノルに力が残っていたとしたら…


 焦る信太郎の拳に力が入るその時、遠くから急接近しているエナジーを感じた。


「信太郎おおおおおおおおおおお!」

「シン!?なんで金色なんだお前!」


 金色の炎に燃えるシンはメノルに隣接。信太郎が伸ばす手を力強く握った。


「無理だよ。たかが空想の産物が僕の」「うるせえ!用があるのは信太郎だ!」


 ボゴン!


 生身のシンが放ったパンチを喰らい、メノルは思わず信太郎を手放して減速した。

 それは奇跡か必然か。信太郎の一部とも言えるシンの中に、メノルを殴り飛ばせる程の特異点の力が存在していたのだ。


「信太郎、1つに戻る時だ!」

「思ってたより早いな!…良いんだな!消えても!?セルナの力で新しくシンを具現化してもそれはもうお前じゃない!」

「僕は消えない!信太郎の中で共に生き続ける!君を作った思い出たちと共に!」


 その時だった。信太郎のポケットの中から、入りきらないはずの色んな物が飛び出してきた。


 イズムの毒袋、真華のシャインマテリアル、光璃のビーズブレスレット…悲しくて忘れられない。それでも信太郎には大切な思い出が詰まっていた。

 負けて妬いて狂っては闇に堕ちた。それでも立ち上がり続け、こうして戦いに臨もうとしている。


 本当に大切な思い出たちだ。


「行け!信太郎!」

「オォ!心刃一体!」


 ドゥウウン…


 信太郎の胸の中から、かつてイーヴィルアクトナイトダークネスへの変身に使ったダークネスマテリアルが出現。


 そしてアクトソードは、マテリアルの闇と信太郎の思い出たちと融合を開始した。




 だがこれから起こる何かを黙って見過ごすつもりはない。信太郎に止めを刺そうとメノルが接近していた。


「させない!お前は死ぬんだ!僕に殺されるんだ!」




 シンの身体が光へ変わり、アクトソードはその光とも融合を始めた。


「「()たちは負けない!!」」

「この俺大月信太郎と!」

「この僕シンが!」

「「合わさってのアクトナイトだからなああああああ!!」」

「戯言おおおおおおおおおおおお!?」


 ブォン!


 動きを止めた信太郎が剣を振る。メノルの身体は後方へと飛ばされたが、すぐにブレーキを掛けた。


 その剣の名はSアクトソード(アクトソード)。信太郎の心の力を融合させた新たなるアクトソード。光と闇が混ぜ合わさり、2人の戦士の全てが詰まった剣だ。


「…残念だけどマテリアルがないみたいだよ。それじゃあ変身できないね」


 スッ


 信太郎が見せつけたのは、闇を吸われて空っぽになった力のないマテリアルだ。


 これでは変身できない。今からここに、新たな力を生み出すつもりだ。


「この宇宙空間には何もない。一体なにを力にするつもりだ」


「俺だ!」


 真っ白なマテリアルに色が付き始める。銀色という、まるで騎士の鎧のような質感を持った色だ。


「俺は戦う!俺の大好きな世界を守るために、お前を倒す!」






 初めて戦った時もそうだった。人を守るために戦わなければと、大月信太郎は剣を取って走った。



 かつてのアクトナイトもそうだった。人を守るために戦わなければと、傷付く事を恐れず勇敢に戦った。


「俺は悪と戦う騎士!アクトナイトだ!」



 アクトマテリアル!それは信太郎の行動から生まれた力!かつてのアクトナイトと同じ、誰かを助けようと取った行動から生まれた力だ!


「アクトベイト!」


 アクトマテリアルを剣にセット。すると柄を握る右手にガントレットが現れ、そこから新たなる鎧が生成された。


「心と刃を一つに!信じる正義をここに体現!Sアクトナイト(アクトナイト)!誕生!」


 ここに新たなる銀色の戦士Sアクトナイトが誕生した。


「昔のアクトナイトに似てるけど…見て呉れ(み く )だけだ!君みたいな人間は」「そうだ!俺はもうお前の知るアクトナイトじゃない!」


「Sアクトナイト…もう俺の心は折れないぞ!シン達の力を宿したこの刃と同じでな!くだらない力とまとめてぶった斬ってやる!メノル!」


 Sアクトナイトと最終怪人メノル。


 地球を守る者とそれを破壊しようとする者。最後の戦いは今、宇宙から始まる!

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