第145話 特異点メルバド星
アクトナイトの戦士達がやるべきこと。
特異点で戦い続ける2人の人間をこちら側へと連れ出し、片方を抹殺、もう片方をこの世界から旅立たせることである。
「それで、どうやってその大月信太郎ってやつに連絡するんだよ。アクトソードでも声が届かないんだろ?その特異点って場所に」
将矢が尋ねると、片付けをしていたシャオが宇宙船を指さした。
「届かないならその特異点がある場所に直接行けばいい…行こうぜ、メルバド星に」
数日後、宇宙船アクトーザーは戦士達を乗せて再び宇宙へ上がった。今回はシンとドラコ、それにルクも一緒だ。
「エルビスの話が本当ならば、おそらくそこは惑星とは呼べず、数値化の出来ない異常な空間です」
「つまり、どういうことです?」
「う~ん、メルバド星人たちから迎撃を受ける方が良かったと思える程には恐ろしい場所かと」
「うわあ、スッゴく嫌だそれ」
特異点に行くことで何が起こるかは分からない。しかし、そこから始まる戦いが、彼らの最後の戦いとなるだろう。
「それじゃあ行くぞ…!」
戦士たちを乗せた宇宙船は特異点であるメルバド星に向かってワープを開始した。
来るなら来るで早く来てくれると助かるけど…
「…お友達が来るみたいだね」
「こっちを見ろよメノル!欲しいんだろ!この力ァ!」
あいつらが特異点と呼ぶこの臭くて狭い部屋で、俺はメノルと体感100000000000000年近く殴り合いを続けていた。メノルの目的は俺の後ろに置いてある1冊のノートだ。
このノートにはこれまで起こったこととこれから起こることが物語のように書かれている。文章を書き換えれば、その通りに過去と未来が変化してしまう恐ろしいノートだ。
「いい加減にしてよ…」
「嫌だ」
「僕がやろうとしてることは…」
そうだ。メノルがやろうとしていることはきっと正しい事だ。こいつの本音を聞けば、これから来る皆もメノルの味方になってしまうかもしれない…
「だけど俺はお前を止める!俺のために!俺の生きた世界のために!」
「このわからず屋!」
ボゴン!
お互いの拳が衝突する。折れた腕は瞬く間に元通りとなって、すぐ次の攻撃へ移る。
この狭い部屋には色々ある。早速、メノルが落ちていたハサミを投げた。いくら傷付いても死ねない部屋の中で、ハサミは俺の胸を貫通した。
「痛く…ねえよ!」
俺は足元のダンベルを拾い上げた。たった2㎏だがぶつかれば痛いだろう。
ビュンッ!
逃げ場のない部屋でダンベルは顔面に命中。お互いに既に死ぬ傷を負っても、平気で戦いを続けた。
「自己中心的で保身的。それだから仲間を失った。ここは君みたいなエゴイストが立ち入って良い場所じゃないんだ」
「じゃあなんだ?お前は皆の事を考えてるってか?」
「そう言ってるじゃん…なんで分からないかな!?」
「分かんねえよ!その皆の中に俺がいねえからな!」
「だったら…君は消えるしかない!存在そのものが罪だ!」
「だったら生きて償ってやるよオオオオオ!」
俺はメノルと永遠に思えるくらいの時間の中で殴り合いを続ける。拳でも語り合えず、分かり合えない俺たちはどちらかが消える事を願っている。
俺はメノルを押し倒し、背後の壁に突き刺さっていたハサミをメノルに刺した。そしてこいつはダンベルで殴り返して来た。
「諦めて永遠に俺と殴り合ってろ!このボケが!」
「諦めない!僕は絶対に世界を変えてみせる!」
きっと永遠じゃない…俺とメノルのどちらかがこれから消えるんだ。俺とこいつの終わりの戦いは既に始まっているんだ。