第143話
ベルバージの宇宙とフィーナの宇宙による次元を超えた戦争が勃発した。ところで毎日残業させる会社ってどう思う?36協定なんて申請すれば45時間以上の残業出来るからあってもなくても変わらないよね。
「なんだ、この頭に流れ込んで来る文章は…戦いに集中できない!」
TwitterかXかなんてどうでもいいんだよ。それよりも問題なのは唐揚げにレモンを無断でぶっかけるやつらだ。どれだけ学業が良くても酷い職場に就職しちゃったら意味ないよね。
「早くエルビスを倒さないと…脳がショートする!」
「た、助け…」
かつてフライパンには取っ手がある物とない物の2種類がありました。しかし取っ手がない物を使用する超能力者たちはその能力を恐れた人間たちにより殲滅。フライパンは取っ手が付いた物だけになりました。車は乗る前にちゃんと安全確認を。トラブルがあったら楽しいドライブじゃなくなってしまいますからね。
「この野郎…俺はシン!これからお前に攻撃するぞ!剣道の選手みたいにメェーン!メェーン!ドォー!」
こいつ、今言ったこと面白いと思ってるのかな?白けてるのに気付かないで喋り続けてるんだとしたら天才だよ。流石、ゲームが両親でスマホが友達なだけはあるよ。もう話振るのやーめよ。
「剣が効かない!?チッ!てめえばっかり喋りやがって!こんな攻撃喰らうんだったらやっぱりあのノート読んで対処法を知っておくんだった!」
「俺は…死にたいっ!誰でもいい!殺してくれ!」
「エルビス!?おい!この変な文章どうにかしろ!」
差別主義家が差別して、今度はその人たちを差別する人たちが差別主義者になってこれの繰り返し。やっぱり人類みな共存なんて不可能では?そんなことさまあはさはたでも分かってるっつーの。
「いきなり!急にこうなったんだ!俺は急にメルバド星人の王子だった!?俺は…俺は一体なんなんだああああ!」
「とにかく喋るんだ!頭の中の文章に耳を傾けるな!おかしくなるぞ!」
失敗した。次はもうない。だけど失敗しちゃった。あ~あ、もうおしまい。富士の樹海は楽園だ。最期の晩餐にはグラブ・ジャムンを頂こう。
「メノルが特異点へ行って存在が消えたことで、エルビスが王子になった。けど混沌が膨大したことで…こんな状態になっているのか?」
「嫌だあああ!死ぬ前に父ちゃん母ちゃんに会わせてくれえええええええ!」
「しっかりしろ!精神攻撃の類いじゃないぞ。これは混沌!この宇宙に発生した混沌を使った攻撃だ!だったら…どうしようもないじゃないか!」
見るな。聞くな。喋るな。息をするな。金を無駄に使うな。諦めるな。寝るな。仕事を抜けるな。食事を残すな。差別をするな。
「いや、冷静になれ…うん、凄く頭が痛い。エルビスに攻撃が効かない今、僕はどうすればいいんだ?」
転生して異世界へ行こう。壮大な冒険と美少女たちが君を待ってるぞ。モンスターを倒せば強くなれる。モンスターの落とした素材で武器を強化できる。ポーションを飲んで体力を回復しよう。テイムしたモンスター、スーパーマシン、自分の流れに乗ろう。
「モンスター、マシンと来て自分の流れ!?…そうだ、頭の中に流れてくる文章を僕の言葉で追い出すことが出来れば…僕はシン!大月信太郎のイマジナリーフレンドだ!年齢は…分かんない!僕の使命はこの世界を守ること!そうだ!だからこんな変な攻撃に負けてられないんだ!」
ノーマルマン?スーパーマン?ハイパーマン!!!海外のやつらは喋りたがりだからなぁ。それに平気でリークもするし、まるで周りのことを考えてない。だから人を傷付けるメディアやヘイトクライムが止まないんじゃないのかな?今やるべきことに集中しろ!
「エルビス!お前もこんな攻撃に負けるんじゃない!両親に会いたいんだろ!」
「色んな星を襲って金は溜まったんだ!いい加減親孝行がしてえ!」
「いいねえ親孝行!信太郎と僕には親孝行する親もいないけど。あれ、この場合信太郎が僕の親になるのか…?だったら、親のためにもこんなところで負けてられないなあ!」
「シーノ!俺に力をくれえええええ!」
「信太郎!神様になってるなら僕たちを救ってみせろ!流石にこればっかりはどうしようもないぞ!」
すまない!メノルが滅茶苦茶暴れてて、こっちからじゃどうすることも出来ない!こいつを押さえるので精一杯だ!
けれど大丈夫だ!もうすぐ仲間が来る!
「信太郎なの!?」
あぁ、俺は特異点にいる。ここからだとお前達のいる世界に好き勝手できるみたいなんだ。
そしてメノルはここで宇宙を書き換えようとしている!封印しようとしてここに連れて来たのは失敗だった!全部、こいつの思惑通りだった!
これまでの出来事は全て、この時のためにメノルが仕組んだことだったんだ!メルバド星人もこいつの被害者だ!
「なんだって!?」
『せーのでっ!』
ザアアアアアアアアアアアン!
シンのいる空間が切り裂かれた。いや、彼は場所ではなく混沌というエネルギーの中に閉じ込められていたのである。
その混沌を切り裂いたのはアクトナイト達だった。
「中には少年と…メルバド星人のエルビスだ!」
宇宙戦艦はアクトナイト達によって空中で消滅させられた。それと同時に、街で暴れていた怪人たちも活動を停止。蒸発するように死んでいった。
「ありがとうシャオ…」
「オワロフに怪人の群れが攻めて来て遅くなった。それにしても余計なやつまで乗せちまったな」
シャオは宇宙船アクトーザーでシン、それとエルビスを受け止めていた。
「…あっち向いてろ。俺が首を切り落としてやる」
「あ、待ってシャオ!…メルバド星人は被害者なんだ。さっき、信太郎がそう言ってた」
「言ってたって…あいつと会ったのか!?」
シャオは混沌の中での出来事を聞いた。しかしそれだけでは情報が足りず、エルビスを生かす理由にはならない。
「宇宙戦艦を失って従える怪人もいないんだ!生かしてやってもいいだろ!」
「いいやダメだ。放っておけば母星に応援を呼ぶに決まってる。こいつはここで始末しておくべきだ!」
「全て思い出したぞ…」
エルビスは身体を起こした。シャオは警戒したが、エルビスに戦う意思はなさそうだ。
「メルバド星はもうなかったんだ」
「あ?なに言ってんだお前?」
「4年前、メノルによってメルバド星人のほとんどが怪人にさせられたんだった…」
「なに…?」
「俺は止めようとして…それなのに急に頭がおかしくなって、家族を守ることより他の惑星への攻撃を優先した…俺の両親はとっくに死んでたんだ…」
理解が追い付かなかった。自分たちは既に滅んだ惑星の人間と戦っていたのか。しかもメノル1人によって、その事態が引き起こされたという…
「しかし…帰る星がなくても、俺にはメルバド星人としての誇りがある。俺1人でもこの地球を侵略してやる…」
「てめぇまだやる気か!戦艦も帰る星もねえのに!」
「シャオ、待って…分かった。ならば僕は本気で君を討ち取る」
エルビスは疲れていたのだろう。洗脳されて世界がおかしくなって疲弊して、今回の総戦力での攻撃も、勝ち負け関係なく戦いを終わりたいという気持ちがどこかにあったからなのだろう。
全てを失った今、後は彼自身が死ねば全てが終わる。
混沌の中で消耗していたエルビスは呆気なく討ち取られた。最期の表情は何かに満足したように微笑んでいた。
第143話 決着
今回はこれにておしまい…メルバド星人という脅威はなくなった。もう地球人たちが脅威に怯える必要はない。