第138話 人知れず始まる決戦
「どういうことだ…」
遠く離れた場所からメングランを見ていたメノル。その表情には余裕がなく、これまでの出来事に困惑気味だった。
無理もなく当然の反応だ。
大量虐殺をするはずのメングランはただ街を破壊しただけ。そしてメングランを道連れに死ぬはずだった剛は新しい力を手に入れて、メングランを倒したのである。
既知の運命とは全く違う現実を目撃して、焦らずにはいられなかった。
「誤差じゃない…運命が狂っているのか!?」
「強い心の力が、俺たちの知ったちっぽけな運命を変えたってわけだ」
そんなメノルの元に信太郎は一人でやって来た。
「運命を変えるなんて…そんなことあっていいはずがない!」
「この世界にあっちゃいけないのは俺とお前だ!…もうここに俺たちの居場所はない!」
信太郎は剣を召喚して走り出し、一気に距離を詰めた。そして何の動作もしないメノルを、大きな刃で突き刺して、さらに持ち上げた。
「変わっていいはずがない…そんな簡単に運命が変わるなら…僕の今までが…全て無駄じゃないか!」
「簡単な事じゃない!皆、つらい思いをしてここまで来た!そして運命を変えた!自分たちの望む未来を切り開いたんだ!」
信太郎は空へと上がった。アクトナイトになれずとも、今だけは空を飛ぶことが出来た。
「僕をどうするつもりだ!」
「メルバド星…特異点へと案内してもらう!俺とお前との戦いはそこで終わらせる!これ以上、この世界で好き勝手はさせない!」
二人は地球を飛び出し、あっという間に太陽系の外へ。そこからまだ地球の技術では捉えられないほど離れた場所に存在する、メルバド星へと向かっていった。
そしてこの時また、世界は大きな改変を受けたのだった。
怪獣との戦いから数日後、いつかの時と同じように宇宙人の協力もあって、街は元通りになっていた。
ヒーローだと知られても、戦士の顔を持つ少年たちはこれまで通りに学校に通っている。なにかあれば、すぐに出動していた。
そして、アクトナイト記念公園には…ちょうど今、宇宙からの飛来物が降って来たところだった。
「来たな…」
シャオとドラコ、そしてシン。公園にいた3人は砂埃が収まると、地面に突き立った1本の剣に近付いた。
それはオリジナルのアクトソード。信太郎が持っていた剣である。
「改めて確認するぞ。もう俺たち以外に信太郎を覚えているやつはいない。皆に名前を聞いたら首をかしげられて滅茶苦茶恥ずかしかった」
「メルバド星人側のリーダーはメノルからエルビスに変わった。メノルの存在もこの世界から消滅したみたいだ。あたし達は変わらず、メルバド星人に勝てる様にサポートだ」
シンは剣に手を伸ばして恐る恐る握ったが、拒絶されることなかった。
「僕は信太郎の代わりにアクトナイトとして戦う。皆の負担を少しでも減らせば良いんだよね」
「そうだ。けどあんまり無茶すんなよ」
「元々信太郎のイマジナリーフレンドだった僕は身体の構造が単純なんだ。無茶するように出来てるから大丈夫だよ」
バット、シーナ、メノルがいなくなり、残るメルバド星人の幹部はエルビスただ1人。
戦いは遂に終盤へと突入する。