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心刃一体アクトナイト  作者: 仲居雅人
大月信太郎編
136/150

第136話 決めるのは剛

 怪獣からそう遠くないどこかの学校。そこには昨晩まで多くの人が避難していたが、現在その場にいるのは二人だけだった。



「やってるな…」


 剛は小さくも激しく動く戦士たちを見ていた。ウェポンは隣で何も言わず、同じように戦いを眺めていた。


「…俺に行けって言わないのか?」

「私は剛と一緒だよ…街を守る為に戦って欲しいけど、どうするかは、やっぱり剛自身で決めて欲しい。戦うなら力になる。逃げるなら…一緒に逃げよう」

「俺は…」




「見つけた!こんな場所にいたのか!」


 剛がこれからどうするか決めようとした時、タイミング悪く、信太郎がやって来てしまった。


「…剛!お前がいないとメングランは倒せない!急いで来てくれ!」

「いや…俺は戦えない。行っても無駄だ」

「なんで…!」


 剛が来ない限り戦いは終わらない。そして彼が遅れたら、その分だけ犠牲者が出る。そういう運命であることを知っているので、信太郎は焦っていた。


「お前だってアクトガーディアンだろ!」

「それは以前の話だ。力のない俺はもう戦士じゃない」

「でも…」



「見に行こうよ」

「ウェポン…お前は俺の味方じゃないのか」

「味方だよ。だからちゃんと、皆の戦ってる姿を見て考えて欲しいんだ…あっさり逃げを選んで欲しくないし、説得されただけで戦って欲しくもないから」

「………分かった」


 信太郎がどれだけ言っても無駄だったというのに、ウェポンの提案はあっさりと受け入れた剛。

 ウェポンは彼を抱き上げると、怪獣のいる方向へと高くジャンプして向かっていった。






「まだだ…まだ…」


 砂が足取りを悪くし、炎が壁となって阻む。それでも怪獣は止まることなくひたすら進もうとする。もう戦うことの出来ない戦士たちには目もくれなかった。


 怪獣は恐ろしい程に強かった。ここで剛が参戦したところで、何も変わらないだろう。




「………」


 その光景を剛は黙って見ていた。美保の変身するサートゥーンだけでなく、他の戦士たちにも目を向けていた。


「迷ってる暇なんて無いんだよ!お前が行かないと!大勢の人が犠牲になるんだ!」


 信太郎に何を言われても、剛は言い返すことなくその場に立ち竦んでいた。


「あんなのに…勝てるわけがない」

「勝てる勝てない関係ないで皆は戦ってるんだ!大勢の命を守る為に!」


 いつか喰らった鉄拳のお返しというわけではないが、信太郎は腕を引いてパンチを構えた。


 しかしそのやり方ではダメだとウェポンは首を横に振った。信太郎が拳を降ろして静かになると、彼女は剛と手を繋いだ。



「どうする?」

「俺は…」


 その時、隣にいたウェポンがドサッと崩れて膝を付いた。


「どうしたウェポン!?」

「これ以上心を維持出来ないみたい…」

「おい信太郎!お前の力でどうにかしろ!」


 言われる前から信太郎はマテリアルを向けていた。しかしウェポンは苦しそうにしたまま、剛と手を繋いだままだった。


「…ダメだ。ウェポンは消えかけている。生物としての肉体をもたず、単体で発現した心だ…本来この世界にあってはならない存在として、世界が切り離そうとしているんだ」

「おいウェポンしっかりしろ!」




「…私はね…剛と一緒に戦えて、嬉しかった。勝っても、負けても、圧勝でも、惨敗でも…私を作った大切な記憶…剛との思い出…」


 ウェポンの力が抜けていくと、剛が力強く手を握り続けた。




「ならば…また一緒に戦ってくれ。お前との思い出を俺にも記憶させてくれ!」




「俺は戦う!もう一度!ウェポンと一緒に!今度こそ勝利するために!」




 剛が戦いを決意した瞬間、ウェポンの身体に異変が起こった。

 少女の身体はみるみる内に細くなっていき、漏れ出していた心の力と共に新たなる武器を形作っていった。


 そして誕生したのが1本の槍だった。


「…アクトランス…W(ウェポン)!」


 アクトランスWを強く握り締める剛。その手で確かにウェポンを感じていた。


「あり得ない…こんな武器が誕生するなんて…」


 その始終を見届けていた信太郎は、奇跡に対しての驚きと喜びが混ざった表情をしていた。

 彼の知る運命にはウェポンの存在すらなかった。追い込まれて怪獣に特攻を仕掛けるはずだった剛はその少女を思い、そして自らの意思で戦うことを決めたのである。



「…ムン!」


 マテリアルを付ける窪みはない。剛が槍を掲げると、周りには鎧が出現し、自動的に彼の全身へ取り付いた。

 マテリアルを使用しない、全く新たな戦士がここに誕生である。


「俺たちは…アクトランサーウェポン!」


 剛はそう名乗ると怪獣の元へ勇敢に飛び立っていった。

 直前まで怯えていた彼とは全く違って、勇ましい姿はまるでヒーローだった。

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