第134話 諦めない心
信太郎が唐突に告白したのは、剛が死ぬという非情な運命だった。
「先輩が…死ぬ?」
「み、美保…」
美保たちがいないこのタイミングを狙って話したというのに、彼女は告白の瞬間にこの場所へ来てしまった。
「どうしてここに…」
「千夏さんにラインしたら、ここに皆が集まってるからって…それよりも先輩が死ぬってどういうこと…?」
「…啓太の時と同じだ。大勢の人間が殺された後、怪獣を道連れにして死ぬ」
「だ…だったら生き返るんだよね?私がピンチになったら、啓太さんみたいに強くなって戻って来るんだよね?」
「そう都合よく…奇跡が起こるわけないだろ」
信太郎は地面へ引っ張られる様に尻を降ろした。
「だったら…先輩を戦わせない。怪獣は皆で何とかしてよね」
しかし美保は意外にも平静を保っていた。それからサートゥーンに変身すると、先程の千夏たちの様に尻尾に向けて必殺技を放った。
「あのさ…このタイミングで野暮な事聞くけど」
「あーあの先輩にくっ付いてた妙な女の事ですか?冷静に考えて先輩は浮気はしないと思うし、何か事情があるのは分かってますよ。まあ説明もなしに逃げるのはどうかと思うけど」
説明せずに逃げたのはお前のせいだ、とは誰もツッコミを入れられなかった。
「先輩は大丈夫っす」
剣を握っているから伝わってくる。美保は心の底から、剛の事を信じているのだ。少しの不安はあっても、きっと死ぬことはないと。
「さて…再開しよっか!」
千夏の呼び掛けで休憩時間は終わり、再び攻撃が再開された。
その頃、シャオやその他、この星に住んでいる地球人以外の人間によって、メングランの存在が明らかになった。
情報を元に危険だと予測された地域はさらに広げられ、世須賀とその周りで避難の動きが見られるようになった。
「そろそろか…」
その光景を見下ろしていたメノルは特に何をするわけでもなかったが、メングランが動き出す予兆を感じていた。
「メングランを利用して今度こそ地球を支配してやル!」
隣で何も知らないエルビスが意気込んでいた。メノルはうるさそうに、内心では無性に腹立たしく感じていた。
そして日が昇り始めた頃、世須賀市を震源地に大きな揺れが起こったのである。