第130話 ウェポン誕生
「驚いたな…武器に心が宿るなんて」
シャオに呼ばれた信太郎はアクトウェポンの前に立って、セルナマテリアルを向けていた。
「なんだ?こうなる運命だって知ってたんじゃないのか?」
「あぁ。剛はここからフェードアウト…戦いから完全に離れると決まってた。アクトウェポンは直らないままのはずだったのに…」
剛が帰った後、シャオはアクトウェポンとの会話を続けた。どういう訳か現在の状況を理解しているウェポンに頼まれ、シャオは信太郎を呼んだのである。
「会話出来そうか?」
「セルナの力なら直接出来る。やってみるよ」
信太郎は画面を見なくてもアクトウェポンと会話が出来ると自信があった。それがセルナマテリアルの力なのだと信じているからだ。
「信太郎だね?はじめまして」
「君は何者だ?どうして存在すらしてなかった心が唐突に現れた?」
「私はずっと生きてたよ。剛と一緒に戦って来た。そういう記憶があるから」
そうして見せられたのは手元からのアクトガーディアンの映像、いや記憶だった。
「剛は可愛いんだよ。口下手だから人と仲良くなるの諦めて、私の事を大切にしてくれたんだ」
「あ~分かった分かった!信じる!君は確かに生きている!……………なんで武器にまで惚気られないといけないんだ」
「それでお願いがあるんだけどいいかな?」
運命は分からずとも、呼ばれた時点で何か頼み事があるだろうなとは察していた。
「私に身体を創って欲しいんだ。剛とちゃんと話が出来る…可愛い身体!」
「………はぁ、頼まれた物を用意するなんて、これじゃあ本当、絵に描いた様な神様だな」
断る理由は思い付かなかった。
セルナマテリアルを握る力が強まる。アクトウェポンから送られてくるイメージを元にして、この世界に新たな肉体が創造された。
瞬きすると信太郎の視界に元の風景が戻って来た。そしてアクトウェポンはなくなり、その代わりに一人の美少女が立っていた。
「ふう…疲れた」
「これが私…凄く可愛い!」
真っ黒な画面に反射する自分の美貌。それを見た少女がはしゃいでいた。
「ありがとう!これならちゃんと剛も話をしてくれるはずだよ!」
「それじゃあ俺、行くから」
用事が済むと信太郎はすぐ帰ろうとした。
「待てよ信太郎!」
シャオはそんな彼を見て声を掛けた。最初に出会った時とは全く違う、どこか寂しげな彼に。
「…まだなにか?」
「あ…いや、飯でもどうかなって」
「あぁ、それなら大丈夫。今の俺、食べなくても平気なんだ」
そうではなかった。シャオはただ食事をしたいのではなく、この先いなくなる信太郎と少しでも話をしておきたかったのだ。
(寂しさを感じてるのは…俺だけ、なのか?)
「それじゃあ私は剛のところに行くね。ちょっとの間だけど置いてくれてありがとう」
「気を付けてな…えっと…名前は?」
「ウェポン!そう名乗るよ」
身体を得たばかりのウェポンは宇宙船から出た。剛の位置はなんとなくだが感じることが出来るので、そこを目指して出発した。