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心刃一体アクトナイト  作者: 仲居雅人
大月信太郎編
129/150

第129話 私は生きてる

 ある日、怪人が街に現れた。


 ある日、大きな災害が起こった。


 ある日、何事も起こらず平和な一日を過ごせた。




 そんなある日が続いていた時、アクトナイト記念公園に一人の客が訪れた。


「お前…何のつもりだ」


「そう怖い顔をしないで欲しい。今日は別れの挨拶をしにここへ来たんだ」


 来客はデスタームだった。一度は共闘したものの、その際には何の言葉もなしに戦線離脱をしており、当然良い印象は持たれてなかった。


「きっともう、運命の改変を強く受けるこの星での商売は不可能だろうと見た。私は地球を去ることにするよ」

「目障りだ。出てくなら黙って消えやがれ」


 何度も顔を会わせているシャオは勿論、ドラコもその男を睨み付けていた。


「ただ、私が地球を去る理由はそれだけではない」

「………なんだよ。勿体ぶってないで早く言え」


「メングランが眠っている。それもこの街の地中にだ」


「メングラン…だって?」

「ビレッツはそれを排除するためにこの星に攻撃を仕掛けたのだろう。私達は地球と共に滅ぼされていた方が宇宙のためだったのかもしれないよ」


 足先からデスタームの身体が消え始める。ワープ能力を使用する際の発光現象も起こっていた。


「さようならだ。また会うことがあればお茶でもしよう」


 最後の言葉はとてもあっさりとしていた。それにデスタームは敵だ。いなくなって寂しいなどという感情は沸かなかった。




 それからしばらくすると、何の因果かデスタームと関係のある剛が、久しぶりに顔を見せた。


「久しぶりだな~!元気してたか?」

「あぁ…」


 口ではそう言うが、声色から表情までとにかく暗い。まだアクトウェポンを失った事を引き摺っているようだ。


「俺の装備は…」

「アクトウェポンの状態から分離が出来ない。何より…マテリアル2つが起動しないんだ」

「もう…直らないんだな」




 宇宙船アクトーザーに設備されている小さなラボスペース。そこにあるアクトウェポンは無数のコードで繋がれていた。


「マテリアルの演算装置も酷い状態でなぁ…」


 コードで繋がっているパソコンからはこれまでの戦闘データを元に作られた、敵の攻撃にどう対応するかという問題が送られていた。

 演算装置が正常な場合、パソコンには敵の動きを視てからの行動パターンが解答として返ってくるはずなのだ。しかし送られてくるのは、意味不明な文字列だった。


「…すまないな。今の地球にこれを直せる技術屋は…」




「…これは暗号だ」


 剛は画面に顔を近付けた。そして瞬きを我慢して、文字列に意識を集中した。


「この文字列が?確かめたけど何の規則性もなかったぞ」

「黙っていろ」


 しばらくすると、剛は小さく微笑んでいた。


「こいつは生きている!」

「なあ教えてくれよ。暗号って何なんだ?」

「瞬きせず、心を空にして画面を見続けろ」


 言われた通りにシャオは画面とにらめっこをした。しばらく待って何も起こらず、目を背けようとした時だった。




 視界を除く全ての感覚がシャットアウト。さらに目の前からは画面がなくなり、真っ白な空間に文字が浮かんでいた。それは画面の物とは違って、ちゃんと言葉になっていた。




「…はっ!なんだ今の!?」

「組織に所属していた者だけが受け取り方を知っている、催眠と洗脳の技術を使った特殊な暗号だ。この文字列を集中して見続けると、今の様に幻という形でメッセージを受け取る事が出来る」


 中々凄い技術だとシャオは感心しているが、それよりも今はメッセージである。


「私は生きている…ってどういうことだよ?」

「分からない…少し一人にさせてくれ」


 剛の頼みを聞いてシャオは別の部屋へ移った。




 剛は再び画面と向き合うことに。その前に、アクトウェポンに語り掛けた。


「生きている…お前は生きているのか?」




「そうだよ。私は生きてる。ずっとずっと昔から、君の戦いをそばで…ううん、君と一緒に戦ってたよ」


 メッセージが変わった。再び、剛はウェポンに話し掛けた。


「AIが搭載されているという情報はない。お前は一体なんなんだ?」




「AIじゃないよ。君がいつも大切にしてくれて私は嬉しかった。その喜びから感情が芽生えて、私は心を持つ事が出来たんだよ」




「そんな非現実的な事、俺は信じない」




「心から誕生する力…死者の復活…仲間たちの融合…世界の改変…君の身の回りは非現実的な事だらけだと思うけど?」




 脳に負担の掛かる会話をこれ以上は続けられなかった。汗で濡れていた額を拭い、剛は部屋を出た。

 通路にはそろそろかとシャオが待ち構えていた。


「どうだった?」

「くだらん。帰る」


 様子がさっきと全く違うので、何かあったのは明らかだった。




 そして今度はシャオが、剛を見送ってからアクトウェポンとの会話に臨むのだった。

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