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心刃一体アクトナイト  作者: 仲居雅人
大月信太郎編
124/150

第124話 VS台風

 台風がやって来た。世須賀市では暴風警報が出されていて、外出する人の姿も少なかった。


「まあ、この中が一番安全だな」


 シャオは宇宙船のテレビで外がどうなってるのか確かめていた。


「こんな日でも出勤とは頑張るなぁ」

「どんな時でも挫けない。これがこの星の人間の強さだ」

「変な所でポジティブシンキングしてんじゃねよ。災害でも働く必要があるってどんだけ切羽詰まってんだよこの社会…」


 信太郎の身体に入ったアクトナイトは、台風でも昔と変わらない日本を見て感心している。シャオは驚き、ドラコは呆れていた。


「おいシャオ、機械得意なら台風破壊装置でも造ってやれよ」

「今から造り始めても間に合わねえよ。お前のドラゴンエナジーでなんとかしろよ」

「ならばアクトナイトの少年たちに協力を要請しよう。彼らの力なら台風の破壊も用意なはずだ」

「いやいや冗談だから、間に受けんでよ」


 昨日の内に買い物は済ませてあるので、余程の事がない限り外出することはないだろう。

 今の所、怪人の出現は感じられない。今日に限ってはメルバド星人たちも動かないでいてくれるだろうか。




 地中にあるアクトーザーは台風の影響をほとんど受けなかった。心配なのは、公園に建っている銅像が倒れてしまうことぐらいだ。


 アクトナイトは読書を。シャオは万が一に備えて瞑想室で修行し、ドラコはゲームで時間を潰した。

 密室から出られないのはストレスだったが、明日になれば台風も去っていく。そう思っていた。




 しかし次の日、快晴の空を飛ぶつもりで地上に出たドラコが、濡れて戻って来た。


「台風まだいるんだけど!?」

「あぁ?そんなはずねえだろ」


 シャオはテレビを点けてニュースのやっているチャンネルに合わせる。台風がその場を通過せず止まるなんて、あり得なかった。


「マジで台風止まってんな」

「ほらな?」


 衛星からの画像が映し出される。夜中に停止したらしい台風は、世須賀を殴り付けるような位置にいた。


「珍しいこともあるもんだな…」


 こうなったら温帯低気圧になるまで待つしかない。


 自然災害を相手にやれることはないので、台風の影響を受ける地域の人間は諦めて、自宅の中で過ごすのだった。




 しかし数日経っても台風は、温帯低気圧になるどころかさらに速度を増していた。

 明らかに異常だと、文句を言いに将矢がやって来た。


「シャオ!これ怪人の仕業じゃないのか?」

「台風が来てから今まで怪人は一度も出現してない…けど、そろそろ何とかした方が良いよな」


 このまま風が強くなると、どれだけの被害が出るか想像もつかない。とりあえず台風を止めるために行動を起こすことにした。


「しかし自然を相手にかぁ…」

「だったらあたしがなんとかしてやるよ」


 ドラコはそう言うと元の姿に戻ろうとしたがここは船内だ。地上に出ると、ドラコは翼竜の姿へと変身した。

 本来の種族である流星竜は特殊な生物で、幼体の時に積んだ様々な経験を元に、自分が望んだ姿へと成長していくのだ。


 シャオは近くでドラコの姿を見て、彼女が成体になっていることに気が付いた。


「前よりもデカいしメカメカしいじゃねえか。当然、こいつとも合体出来るんだろうな」


 シャオの隣で将矢も変身。アクトナイトフレイスになり、ドラコの背中に乗った。


「当たり前だろうが。何を望んで生きて来たと思ってんだ」


 そして流星竜ドラコは大翼を動かすのではなく、自身のエナジーを放出し浮上。戦闘機のように荒れ狂う日の空に上がっていった。




「…ところでドラコさんとやら。台風なんてどうやって止めるんだよ」

「無理に止めようとすると今度はまた別の被害が出るかもしれない。あたしのドラゴンエナジーとあんたのアクトナイトの力を合わせて台風だけを何とかするんだ」

「俺だけの力で足りるか…?奏芽とかも連れて来た方が良かったんじゃ」

「足りないなら分けてもらえばいいだろ。聞いてるぞ。お前、新しいマテリアルを作ったって」

「…そうか!」


 フレイスは風に飛ばされてしまわないように注意しながら、ホープマテリアルを掲げた。


「皆の願いが届いてくる…もう休校はこりごりだ。友達と電話越しじゃなく直接話したいって…いい加減青空を見たいってよ!」


 そしてどこからか飛んでくるアクトブレイド。フレイスは逃さないように掴み取ると、人々の希望の力が集まったホープマテリアルをセット。アクトナイトホープフレイスに変身した。


「暴風警報も今日で解除だ!台風なんざぶった切ってやる!」

「フルパワーでいくぞ!」


 フレイスは走り出し、ドラコの頭から空に飛び出した。台風はまるで2人を追い出そうと勢いを増すが、所詮は風だ。希望の戦士と流星竜はビクともせず、攻撃を構えた。


「ホープフレイススラッシュ!いっけえええええええ!」

「ドラコ!ビッグレーザーカノン!カアアアアアアア!」


 ホープフレイスの放った斬撃のエナジーとドラコの光線が空中で激突した。そして2つの力が接触した途端に、台風を破壊するほどの新たな衝撃が発生。

 それに巻き込まれないように、ドラコはフレイスを咥えて離脱した。



 台風は消滅。地上にも届くほどの衝撃だが、人々が望んだのは台風だけが消滅することだ。衝撃は台風以外に何の影響を与えることなく、街には全く影響を与えることはなかった。


「やれば出来るもんだな…」

「まだだ!アレを見ろ!」


 雲が散っていき、そこから現れたのは謎の物体だった。


「あれが台風を起こした原因ってわけか…ほら!ぶっ壊してきな!」

「え?あ!ちょおおおおおお!」


 ドラコはその物体目掛けて、咥えていたフレイスを放り投げる。そしてそれを追って、彼女の左前足が身体から射出された。


「どうやって壊すんだよ!え?なにこれ!うわあくっ付いた!」


 フレイスの倍もある左足、ブレイクアームは彼の左腕を取り込むように合体した。そしてエンジンが点火し、フレイスは引っ張られるように加速した。


「負けるかよ!」


 そして剣からも推進力となる業火が放出され、フレイスはブレイクアームを制御出来る状況にまで落ち着いた。

 謎の物体は微動だにせず、ブレイクアームの見た目からやることは1つしかなかった。


「ぶっ壊す!うおおおお!」


 臆せず加速。フレイスはそのまま物体へと突進し、バラバラに砕いて通り過ぎていった。




 こうして台風の脅威は去り、街は元の日常に戻っていった。


 しかし、台風を起こしていたとされる謎の物体。それが何なのかは、誰にも分からないままだった。

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