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心刃一体アクトナイト  作者: 仲居雅人
大月信太郎編
121/150

第121話 アクトナイトとシャオ

 芽愛に命を譲渡した信太郎。そうして抜け殻になった彼の身体には今、かつて地球を守った戦士であり本物のアクトナイトの魂が宿っていた。


「しかしアクトナイト、信太郎の身体に宿った時点でどうして何も言ってくれなかったんだ?」

「私はこの少年の身体に入ってすぐ、この街の異変に気が付いた。そして街の異変を探る為、単独で行動していた」

「しかしまあこの星も宇宙人に好き勝手されてるなぁ。お前ちゃんと戦ってたのかよ?」

「うるせえよドラコ。いい加減降りて来いよ。目立つだろ」


 翼竜は地上へ降りると女性の姿に変身した。機械を使うシャオとは違い、自身の能力で擬態したようだ。




「どうしようか私たち」

「待ってるしかないんじゃない?」


 啓太と芽愛は少し離れた場所で、再開した仲間たちと話すシャオを見ていた。


「これからシャオの事はちゃんとした名前で呼ばないといけないな…」

「えっと…あれ?いつも皆にエナジーを送ってくれてたのがアクトナイトさんで…」

「いや、あっちはシャオ。アクトナイトを詐称してたことがあって、僕たちはずっとシャオって呼んでた。でも信太郎に本物のアクトナイトが宿っちゃったし、これからは本名で呼ぶようにしないと」

「え、そうだったの?私ずっとあの人がアクトナイトだって思ってたんだけど!?…そう言えば信太郎君だけシャオって呼んでたのは…」

「一番最初にシャオの正体を知ったのが信太郎だったからね」


 「あっちゃ~」っと申し訳なさそうにする芽愛。確かに名前に関してはややこしかったので、これを機会にちゃんとシャオと呼ぶべきだろう。




「待たせてしまってすまない。私はアクトナイト。今は君たちの友人である彼の身体を借りている」

「よ、よろしくお願いします」


 いつも情緒不安定だった信太郎の身体に宿った紳士にどう接すればいいか2人は困っていた。


「それで…僕たちはこれからどうするの?」

「まずはこの身体の主、大月信太郎を呼び戻す所からだ。セルナマテリアルの力に取り込まれて命を絶った彼は今、この世界の地縛霊と呼べる存在になってしまっている。そうなった信太郎は何らかの手段でこの世界に干渉し、街の問題を少しずつ解決していってるんだ」

「急にこの街のやつらが宇宙人と仲良くなったりしたのは、それが原因だったってわけか…」


 これまでのことに納得仕掛けたシャオだが、1つだけ疑問が残った。彼はギリギリで思い出したが、啓太と会話していた時の千夏ように、信太郎の存在があやふやになり始めたことだった。


「それで信太郎は、どうやったら呼び戻せるの?」

「分からない。それを可能とするセルナマテリアルも本人が握っている。その時が来るのを待つしかないだろう…」


 必ず信太郎は戻ってくる。だがそれがいつになるか、アクトナイトは分からないと告げた。




「そうだ…あの時はありがとうございました」


 不意に芽愛は、初めて会話をしたはずのアクトナイトに礼を言った。


「私が初めて変身した時に語り掛けてきたのは…アクトナイトさんですよね?」

「礼には及ばない。それに君は私のアドバイスで変身出来たんじゃない。後悔と反省。これまでの積み重ねやその心の奥底に眠っていた愛の力が、君自身を覚醒させたんだ」




「アクトナイトはともかくドラコ。お前はどうして地球に来たんだ」

「あたし?お前がここにいるって噂を聞いて来たんだよ。シャオ、昔から戦えないだろ?心配になって来てやったってわけ」

「余計なお世話だぜ…そこの啓太たちに他のやつら。地球にいる戦士は強い。お前なんかいらねえよ」


「しかし、あのメノルはそれ以上に強い」


 アクトナイトは正直に現実を突き付けた。どうやっても、今の自分たちでは彼には勝てない。それにエルビスの時と同じで、倒すことが出来ないのだ。



 啓太と芽愛は少し迷ったが、この事を他の仲間たちに伝えないことにした。きっと伝えたところで、信太郎に関して曖昧になっている現状では何の意味もないだろう。


 その時が来るまでは普通に生活するしかない。数日後、啓太は千夏と将矢と奏芽で海へ遊びに。芽愛は恋人たちと映画を観に出掛けた。




 一方でシャオは、アクトナイトとドラコに街を案内していた。


「こんなことで信太郎復活に繋がるのか…?」

「この街を知ることで信太郎の手掛かりが掴めるかもしれない。例えば…」


 やって来たのは信太郎が通っている学校だった。普通の部外者では交渉しても入れないのだが、シャオが街のヒーローである生徒たちのリーダーであると知ると、校長はあっさりと見学を許可してくれた。


「なんで1年の教室に行くんだ?あいつら、17歳なんだろ」

「信太郎は…色々あって留年しちまったんだよ」

「留年するってどんだけ成績悪かったんだよ…」


 シャオは1年生の教室を見て回った。夏休みに入って生徒はいないため、捜索は容易だった。




「信太郎の名前がどこにもなかった」

「記憶だけじゃない。彼に関係した物まで消え始めているのか…」


 本来は学生であるはずの信太郎。その存在は最初からなかったかのように、高校には彼に関する物は何1つとして残っていなかった。



「焦らずのんびり待った方がいいのか…いやいやこういう甘えた考え方こそがセルナの影響による物か…う~ん!」


 ドラコは大量購入したアイスを次々と食べていった。もちろんこれらは全て、シャオの奢りだ。


「アイスうめー!」

「ふざけんじゃねえよ!財布空じゃねえか!諭吉はどこに行ったよ!?」


「昔よりさらに暑くなったな。この星の夏は」


 信太郎の姿でアクトナイトが喋った。幼稚な信太郎の肉体は、アクトナイトには似合っていなかった。


「この街の風景、昔と違ってるか?」

「変わったり変わってなかったりしている。流石に怪獣の襲撃を受けていたのは驚いた…宇宙人たちが復興に協力しているようだが、きっとあれもセルナの力による影響だ」


 しっかりしていて常に周りを見ている。悩み事があった時も、相談に乗ってくれた。シャオにとって恩人であり、憧れのアクトナイト。

 だがかつてアクトナイトを詐称したシャオは、少年たちの悩み事に向き合ってやれなかった。そうして衝突が起きてしまった。


「アクトナイト…これからはあんたがリーダーをやってくれよ。俺はあいつらのために何もやってやれなかった…」

「残念だがそれは出来ない。私がこの身体にいられる時間は限られている。魂だけとなった私は、この世を去らなければならない」

「だよな…」


「相変わらずだなお前。やっぱり自信ねえの?自分に?」


 沢山あったはずのアイスを食べ終えたドラコは、いつの間にか自販機で買ったジュースを手に持っていた。


「俺がちゃんとしてれば、信太郎は自分を追い込まなかったんだ」

「お前がちゃんとしてたってその信太郎がちゃんとしてないんじゃ、結果は大して変わらなかっただろうよ。他人の言葉や行動だけじゃ人は変わらねえよ」


 その一言でシャオは昔の事を思い出した。アクトナイトに救われた時の懐かしい言葉を。




「私の言葉や行動だけでは君は今のままだ。自分の気持ちを言葉にして、君自身で行動しなければならない。私と一緒に来ないか?君の言葉と行動で、この宇宙で助けを待つ者たちを救って欲しい」





 あの時のことを思い出すと涙が出てくる。宇宙でヤンチャして居場所を失くしていたシャオは、その言葉に救われて振る舞いを改めた。人に迷惑を掛けるのをやめて、アクトナイトのように誰かを助けるヒーローになろうと決めたのである。


「俺に出来るのかよ…信太郎を救うなんて!」

「彼が歩こうとしないなら手を引っ張ればいい。君はそういうことが出来る強い男だ」

「そんなことねえ…俺はまだまだ弱い男だ…けれどいつか、あなたみたいに強い人間になってやる!」


 変身して戦う少年たちの後ろにいたせいで忘れていた。自分もそういう存在に憧れていたことを。

 それを思い出したシャオから迷いは消えた。少年たちを戦いに巻き込んだ責任から逃げず、信太郎を必ず助けると。

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