第120話 アクトナイト、再び
「ヒャッハー!久しぶりに暴れるぜエ!」
「あいつは…久しぶりに見るな」
上空から奇襲を狙うウイングアクトナイトジュピテル。地上ではまだ経験が浅い頃に戦った、メルバナイトマジクが暴れていた。
ジュピテルは充分な速度が得られる場所で翼を畳み、マジクへと急降下していった。
「ン…アクトナイトじゃねえカ!」
反応した時には既に遅く、ジュピテルの刃が肩から深く斬り込んでいた。
「いってェ…俺の鎧がこんな簡単ニ…」
しかし口では苦しそうにしているものの、マジクはジュピテルの腕を掴んで剣を引き抜いた。
「致命傷のはずなのになんてパワーだ!」
ジュピテルはマジクの手を振り払うと、攻撃の届かない空中へ。そして羽を発射して遠距離から攻撃した。
マジクは魔法のバリアを展開。羽は通用しなかったが、敵をその場に抑えることは出来た。
「このバリアは私が破壊する!」
アクトナイトラヴはその盾で、バリアによって弾かれた羽を次々と受け止めてパワーを溜めた。
そしてラヴシールダーへと変身し、盾に溜まったパワーを光線にして発射した。
「新しいアクトナイトだト!?」
マジクのバリアは破壊され、ラヴはその場で転倒した。怯んでいる隙にダイブして接近したジュピテルは、剣を振り上げ再びマジクを斬り付けた。
「どうだ!」
「クッ!やっぱり今の戦いについていける実力は備わっちゃいないカ…」
傷を手で押さえ、変身が解けたエルビスは膝を付いた。
「メノルの三銃士で残ったのはお前だけだ!ここで倒して、今度はメノルを倒す!」
「無理だナ」
ジュピテルが振り下ろした翼の刃。生身のエルビスを両断するかと思えたその剣は、彼のそばで制止した。
「…なんだ!?剣がこれ以上下がらない!バリアでもあるのか!」
この機会を逃してはならない。続けて走って来たラヴも容赦なく突きを狙ったが、エルビスに届かないところで停止した。
「んんん!力を入れてるのにこれ以上は…どうやっても剣が進まない!」
「それはエルビスが今死ぬ存在じゃないからだヨ」
そして最悪のタイミングで、オリジナルのアクトソードを持ったメノルが現れた。
「チッ…!」
シャオは冷静にエナジーを送ったまま、メノルと向かいあっていた。
「この街をおかしくしたのはお前か!」
「違うヨ。街がおかしくなったのは君が想像している通り、信太郎君が原因ダ」
ラヴは攻撃を受け止めようとジュピテルの前に立つ。しかし相変わらず、メノルは戦う意思を持っていなかった。
「でもそんなことどうでもよくなイ?君たちも他の皆みたいニ、幸せに過ごせればそれでサ」
「良いわけない!いなくなった友達を忘れて幸せなんて残酷過ぎる!」
「その間に地球を侵略しようって魂胆だろ。見え見えだぞ」
メノルの意識を言葉に向かせながら、シャオは心での会話で2人に作戦を出した。
「…侵略なんてどうでもいいんだよ。僕の計画さえ上手くいけばそれで」
「なんであろうが関係ねぇ。お前の野望、絶対に阻止してやるからよ!」
2人は静かにメノルの背後へ。合図を貰って走って接近し、素早く攻撃する。だが刃はエルビスの時と同じく、触れる前に止まってしまった。
「君たちに倒されるとしてもまだその時じゃなイ。今はどうやっても僕たちを倒せないかラ、諦めた方がいいヨ」
「じゃあその時まで指を咥えて大人しく見逃してろってか…嫌だね」
周囲に存在していた僅かな植物たちが変異を起こし、メノルの首に巻き付いた。ジュピテルはそのまま首を折ろうとしたが、それ以上締め付ける力を強めることは出来なかった。
メノルの剣がひとりでに動き、植物を切り離していく。解放された彼はエルビスに手を貸して立ち上がらせ、ここから去ることにした。
「やはり君は止まらないんだな…メノル・シルブブブゼラ」
この場にいる誰もが聞き覚えのある声がした。行方不明になっていたはずのその姿は、この時突然現れた。
「君ハ…」
メノルの前に立ちはだかる信太郎。そして上空には、翼を広げた翼竜が周回していた。
「大月君…生きてたんだ!」
「…ちがう!あいつは信太郎じゃない!」
啓太は彼の違和感に気付いていた。そしてシャオは信太郎ではなく空にいる翼竜を見ていた。
「ドラコ…」
その翼竜をドラコと呼んだシャオ。それではそこにいる信太郎は何なのかと、エナジーに意識を寄せた。
「凄いネ。魂だけの状態からそんな風ニ、他人の身体に憑依するなんテ」
信太郎とメノル。2人の衝撃波がぶつかり、周囲に建つ建物は大きく揺れて窓が割れた。
「セルナが私をこの地球へ導いてくれた…そして空っぽだったこの身体に、僅かな時間だが宿ることを許された」
「その常識を逸脱するセルナの力が今の戦いを起こしてるんダ。望んでいない戦いを僕たちはやっていル…なぜセルナマテリアルを創ったんダ。答えロ!」
信太郎は何も言い返さなかった。初めて怒りという感情を露わにしたメノルは、エルビスと共にその場を去っていった。いや、勝ち目のない戦士たちは見逃されたのかもしれない。
「信太郎…いや、あんたは…!」
「シャオ。ここまでよく頑張ったな」
信太郎とメノルの会話を聞いて、シャオはもう分かっていた。目の前に立っているのは信太郎ではあるが信太郎ではない。身体を借りて立っている、彼の憧れたヒーローだった。
「この人は…」
「そうだ啓太!今、信太郎の身体には別の魂が宿っている!昔この地球を守るために戦った!本物のアクトナイトだ!」