第116話 消えた信太郎
「芽愛は一度死んだ。信太郎は自分の命を代償に、彼女を生き返らせた…今生きているのは芽愛だ。信太郎はもう、死んでいる」
信太郎の身体が倒れている建物の前で、シャオが事情を全て話した。
仲間の死を受け入れるのは簡単ではない。啓太が命を落として間もない頃のように、空気が重くなっていた。
「つらいかもしれないが、ちゃんと見るんだ。一緒に戦った仲間の、一生を終えた姿を…」
開いた扉が凄く重く感じられた。シャオを先頭に少年たちは次々と建物の中に入っていった。
「…信太郎はこの後、どうするんですか?」
「警察を呼んで…戦死したって処理してもらう」
「そんな…またメディアのネタにされるじゃねえか!信太郎、散々言われてきて、それで友達なのに戦わなくちゃいけなくなったのに…!」
「でももう…あいつは死人だ」
信太郎の倒れている部屋へ、ぞろぞろと人が入ってくる。
だがそこに倒れているはずの信太郎は、どこにも見当たらなかった。
「部屋を…間違えたか?」
「そんなはずない。確かにここはさっき私たちが隠れた部屋よ」
「一体…どうなってるんだ?」
「ちょっと皆さん!アレ!」
窓の外を覗いていた美保が大声をあげた。次から次になんだと疲れた様子の面々は、空に浮かぶ艦隊を見た。
おそらく、これがデスタームの呼んだという応援だ。
「今さらかよ…」
「全くですね…」
「それより信太郎だよ!あいつどこいったんだ!?」
「もしかして生きてるとか!」
「だったら何で一言寄越さないって思ったけど…まあそういう人柄だしなぁ…」
「とりあえず捜索だ!信太郎を捜すんだ!」
艦隊に覆われた空の下で、信太郎の捜索が行われた。だがしかし、足跡1つ残さずに消えた彼を見つけることは出来なかった。
一旦シャオに捜索を任せ、少年たちはそれぞれ家族がいる避難場所にやって来た。
「街を守るために戦ってくれて、ありがとう」
集まる人間が違っていても、平和のために戦った戦士たちを迎えてくれる言葉は同じだった。
今回の戦いで、人々からアクトナイトへの印象は大きく変わったことだろう。
次の日から、街の復旧工事がスタートした。ビレッツとの戦いに間に合わなかった応援部隊は、その代わりとして工事を手伝うことになった。
それをきっかけに、世須賀市にて地球人と宇宙人たちによる本格的な話し合いが始まることが決定した。
宇宙人には、ビレッツのような悪いやつもいれば工事を手伝ってくれる彼らのような者もいる。そう、少しは理解しようとする人間も増え始めた。
(何から何まで…上手く出来すぎじゃないか?)
シャオは新たな日常に染まっていく風景を見ながらも、それを素直に喜ぶことはできずにいた。