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心刃一体アクトナイト  作者: 仲居雅人
大月信太郎編
114/150

第114話 ウォーロック、召喚

 地上の円盤が1機、また1機と破壊されていく。街を占拠しようと動いていたソルジャー達も次々に倒されていき、世須賀市内には死臭が漂っていた。



 街を襲った悪の存在ではあるが、彼らは怪人ではなく宇宙人だ。それを葬り続けている昇士だが、特に戸惑いなどは見せなかった。


 芽愛が殺されたことに憤り、そして今は八つ当たりの真っ最中である。


(来たっ!)


 走っていた昇士は足を止めて、後ろに跳んだ。すると彼の正面に、手の平サイズの深い穴が出来た。


「間違いない!陽川さんを殺したのは!」


 昇士はエナジーの力だけで身体を浮かして空へ飛んでいく。雲を突き破り大気圏を浮上して、宇宙という空間に到達した。


「見つけた!お前だなあああ!」


 そこにはビレッツの宇宙船が浮いていた。街を襲った機体と違い、長いパイプの様な物を地球に向かって延ばしていた。

 狙撃をして来た敵の正体。そんな物はどうでもよく、昇士はパンチ1発で円盤を破壊した。



 爆発を背にして、昇士は再び街へ。見渡す街には炎をあげる円盤の瓦礫が数え切れないほど存在した。


「昨日から随分と景色が変わっちゃったな…」


 避難している人たちは大丈夫だろうかと心配になる。それはもうしばらくしたら分かることだろう。

 街へ降りて、念のため誰かいないか確かめるが、せいぜい見つかったのは、愛玩動物たちの死骸ぐらいだった。


(どうしてこの星ばっかこんな目に遭わないといけないんだ!)


 気持ちが荒ぶる。そうして油断した所に、敵の魔の手が忍び寄る。




「…皆の所に戻ろう。敵は全滅させたって伝えないと」


 移動しようとする昇士。しかし足を出した途端、急に力が入らなくなってその場に倒れた。


「いって!」


「生身なのに異常な強さだって最初こそ怯えたが、それが弱点みたいだな」


 昇士が地上で出会った宇宙人たち。威嚇して追い払い逃げたと思っていた彼らは、隠れて敵が隙を見せるのをずっと待っていた。


「お前ら…まだいたのか!」

「生身で宇宙に行くなんて稀な存在だな。こいつ、科学者とかに売れば大金になるんじゃね?」

「船全部ぶっ壊されたのにどうやって宇宙に出るんだよ」


 反撃にエナジー弾をお見舞いしようとしたが、身体が痺れて上手くエナジーを練られない。足を見ると、注射針のような物が刺さっていた。


「そいつは猛毒だ。刺さったら即死の猛毒だが、それなのに生きているのを見るとお前…」

「待ってろ…逃げんなよ…今度こそぶっ飛ばしてやる!」


 立ち上がろうとする昇士のそばに球体のような頭をした宇宙人が近寄った。そして昇士の背中に座り、煙草を吸った。


「あのさぁ、立場分かってる?俺たち、すぐにでもお前のこと殺せるからさ。もう少し発言する言葉に気を付けた方がいいよ?」


 灰が頭に落ち、刺されるような熱に襲われる。腕が動けば、今すぐにでもこの宇宙人に一矢報いていた

 毒にやられるか、宇宙人に殺されるか。そんなことを考えている内に頭痛が起こった。


(毒が効いてきた…!)


 彼の強靭な肉体でも毒には勝てなかった。大量の汗が流れて吐き気もしてくる。


(ここまで…なのか!)


 命の危機が迫り、初めてピンチというものを自覚した昇士。逃げられず助けも呼べない絶望的な状況の中で考えているのは、那岐のことだった。


「ごめん…」

「あぁ!?謝って許されるとでも思ってんのかよ?お前のせいで俺たち、この星から出られなくて困ってんのよ!」




「ならもう、困らなくて済むようにしてあげる」




 一筋の閃光が走る。それは昇士に座っていた愚者の頭を跳ねた、光軍の刃だった。


「大体、他所様の星でここまで暴れたのに、生きて帰れると思ってんの?」

「ガキの加勢に来るのはガキか…」

「大人もいるぜ」


 本来の姿で現れたシャオが、昇士の頭に手を乗せる。そうして体内の毒を除去し、傷を治した。


「大丈夫か?ったく、1人で無茶すんなぁ」

「毒がなければ今頃全滅させてた。それよりこいつら、殺してもいいんだよな?」


「…ウォーロックの準備をしろ!」


 指示を受けた宇宙人が杖を掲げた。すると空の雲が異常な動きを見せた。


「あいつ!魔法使いか!何か召喚するつもりだぞ!」

「魔法なんて実在するのかよ!?」

「宇宙全体で見れば珍しくもない!それより止めるぞ!」


 シャオの合図で昇士と那岐が走り出した。だが宇宙人たちが2人の道を塞ぐ。頭上の雲は魔方陣のような形になり始めていた。


「邪魔だ!」


 昇士がエナジー弾を連射して牽制。防御が崩れた場所に、那岐が突撃した。

 それでも彼女を道を塞ごうとする宇宙人は、光軍によって簡単に切り裂かれた。


 那岐は魔法使いを目指して駆ける。行く手を阻む者は打たれ切られた。


「バリアー!」


 宇宙人たちが並んで巨大なバリアを発生させた。那岐はそれがどうしたと光軍を振るった。だが、光の刃は弾かれてしまった。


「どうだ!コンビネーションバリアの強度は!」

「そんな剣じゃ壊せないぞ!」


「行きなさい!芽愛!」




 相手はテロリストだ。絶対に何か秘策があると予想出来ていた。

 そして芽愛は、その秘策を潰すために別の方向から走って来た。魔法使いを目指す彼女の前に障害はない。


「えーい!」


 魔法の実行に集中していた魔法使いは背後から迫る芽愛に反応出来なかった。

 芽愛が初めて振り下ろしたアクトソード。その刃は背中に深く潜り、致命傷を与えた。


「うっ!」


 魔法使いが倒れ、その後ろに立っていた芽愛が現れる。状況を飲み込めていなかった昇士は、なぜ彼女がいるのかと混乱していた。


「陽川…さん!?でも、どうして…!?」




「ウォーロックだ!ウォーロックが出たぞ!」


 その場にいた誰もが空を見上げた。雲の魔方陣は既に完成され、空間を超えて悪魔のような姿をした生物が出てこようとしていた。


「はっはっはっ…これでもうこの星は終わりだ!」

「メングランと一緒に宇宙の塵になっちまえ!」



「おいおいおい…すげえエナジーだぞ!」


 10メートルもある巨大な悪魔、ウォーロックが降ってきた。

 宇宙人たちはその背後で一斉に逃げ出していったが、昇士たちは追うことが出来なかった。


 悪魔の目的はただ1つ。視界に入った全ての物を破壊し尽くすことだ。


「これ…勝てるのかよ?」




 五体満足の芽愛を見て昇士は混乱しているというのに、ビレッツの呼び出した悪魔、ウォーロックとの戦いが幕開けた。

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