第112話 謎の狙撃
「また子どもか。地球人は子どもを戦わせる下劣な種族なんだな」
「狙撃の準備まで時間が掛かりそうだが…こいつはアクトナイトじゃないぞ。ただのガキだ」
宇宙人たちは再び武器を手に持ち、正面に立つ昇士へ向けた。
そして警告もせずに発砲。昇士はそばにいた芽愛をペガスターごと信太郎のそばに移した。
「速い!?あいつ、速いぞ!」
「この程度の重力で育った生物があそこまで…全員警戒しろ!あいつ、普通じゃないぞ!」
「陽川さん、信太郎を頼む」
「うん…頑張ってね」
芽愛に信太郎を任せ、昇士は敵の前に歩いていった。
「今の動きを見て分からないか?俺には傷1つ付けられないって」
「口が達者だなぁ!」
巨大なバトルアックスを持った男が飛び出し、昇士に襲い掛かった。重量のある武器に似合わず、男は素早かった。確かに素早かったが、それ以上に昇士は速かった。
「なにっうしろ!」
「ハッ!」
昇士はカプセル状のエナジーで男を捕まえた。その後、カプセル内に充満したエナジーが爆発を起こし、男は肉片すら残さず消滅した。
「やりやがったな!」
「挟み撃ちだ!」
今度は3人、短剣やナックルなどを持った男たちが飛び出した。1人は正面から、残りの2人それぞれは左右斜め後方へと移り、昇士の死角に入った。
「無駄だって言ってるだろ」
左斜め後ろ。最初の攻撃を回避すると、そのまま男に一撃を与えて気絶させる。そのまま正面の男に向かって、身体を歪む程の勢いで投げ飛ばした。
それを見た最後の1人は足を止めて、その場でジッと立っていた。
「帰れよ雑魚。見て分かったろ?俺には勝てないって」
「くっ…撤退だ!」
恐れをなした宇宙人たちは街に散らばるように逃げていった。追って倒したいが、まずは信太郎の治療が先だった。
「信太郎!待ってろ、アクトナイトを連れて来るから!」
「お願い…なんで生きてるのか分かんない。もう感覚がない…」
自分の居場所を知らせるように、昇士が頭上に弾を放った。それを見てか、シャオと治療を終えた那岐が駆けつけた。
「芽愛…」
那岐は芽愛を見て気まずそうにしているが、シャオはそれに構わず急いで治療を始めた。
「このダメージ…セルナの力がなかったらお前は…」
「臆病だよな…死にたがって煙草とか吸ったのに、いざその時が来ると怯えるなんて…」
「それが普通なんだ。臆病でも何でもない」
はじめに、失われた視力が戻ってきた。それだけで生きていると安心できた。
脚を取り戻して立ち上がる。周りを見渡すと、空にいたはずの円盤が地上に降りていた。
「ところで今…どんな感じなの?」
「ヤバいぞ。戦艦は墜ちて将矢たちは今こっちに向かってる。デスタームの言ってた応援が来るまであと5時間もある…そもそも本当に来るのかよ…」
「大ピンチじゃん!」
その時、遠くの方から衝撃音が聞こえた。もしかしたら誰か戦っているのかもしれない。
「昇士、行けるか?」
「少し疲れてるけどまぁなんとか」
信太郎は周りを見渡した。敵があっさり退いたことに、違和感を覚えていた。
自分を追い詰めた謎の狙撃。その正体は未だ分からないままだ。
「大月君、剣忘れてるよ」
「あっそうだ」
ウッカリしていた。信太郎が振り向くと、アクトソードを拾おうとする芽愛の姿があった。
「危ない!」
剣に選ばれない人間は拒絶されて弾かれる。そのことを覚えていた信太郎が叫ぶと同時に、彼の胸が貫かれた。
「またかよっ!」
今にも消えそうな声で叫びながらも、痛みに慣れたのか倒れはしなかった。
「物陰に身を隠せ!次の狙撃が!」
だがまた1つ、信太郎の身体に穴が開いた。そうして彼は再び倒れることになった。
(そんな!?次の攻撃までには時間が必要なんじゃないのか?)
「とにかく隠れるんだ!」
シャオはいち早く物陰に隠れた。だが昇士と那岐、2人は動くのが遅かった。
「バカ!並ぶな!」
走り出したのは芽愛だった。シャオの言葉を聞いた彼女は途端に、昇士たちを目掛けて走った。彼らまで距離はないはずだが、とても遠く感じた。
(間に合わない…いや!そんなことない!)
芽愛は全力のタックルで2人にぶつかった。そして次の瞬間、彼女の頭部が弾けた。