第108話 激戦開始
平和な世須賀市。そこから見上げる空を覆い隠すように、大量の円盤型宇宙船が飛来した。
その円盤を見上げた街の人々は驚愕し、デスタームの指示により非常事態宣言が発令された。
「俺たちを集めたのはあいつらを追い払うためってわけか」
デスタームに呼び出され、シャオをリーダーに戦士たちは海の底に隠れていた戦艦ガイアスに来ていた。
「かつての組織は解体。現在は宇宙調和連合の地球軍として活動させてもらっている」
「そんなことはどうでもいいんだ。あの空の円盤は何だ?」
「彼らはビレッツ。宇宙の平和を脅かすテロ組織」
「ゴホッゴホッ!…あぁごめん。続けて続けて」
「ちょっと大月君やめなよ。ここ禁煙だよ?」
「いや、注意するところ違くない?」
千夏に止められても信太郎は構わず、次の煙草に火を付ける。デスターム達は視線を戻して話を再開した。
「ビレッツ…聞いたことある名前だな。アクトナイト…俺と宇宙を旅してたあの人が親玉を倒したって」
「ビレッツは最近になって復活を果たした。金を貰って動く彼らは今回はどんな依頼でかこの星を狙った。私としても黙って見過ごすわけにはいかない。だから今回は共闘を申し出たいのだが…」
「断る!帰るぞ皆」
「そう言われると思っていたよ。しかし戦士たちの意見を聞いていない。君たちはどうだろう。ビレッツは強敵だ。手を組まなければこの星がどうなるか…」
そう言われるとシャオを省いて少年たちは円になって話し合った。
「剛、那岐。こいつらは信用していいのか?」
「デスタームは悪人ではないわ。裏切るとかはないと思う」
「向こうは俺たちを利用するつもりだ。ならば俺たちもやつらを利用し、この星を守るだけだ」
芽愛は俯いている。視線を那岐と昇士に向けるが、首元まで視線が行くとまた床を見てしまう。こうして彼女たちが自分を見ているかまでは分からなかった。
信太郎は上を見上げて海を眺めていた。戦艦はバリアで保護してあり、海を見上げるというのは初めてで中々経験出来ないことだった。
「アクトナイト。俺たちはこいつらと一緒に戦いたい」
「まあそうしたいって言うならそれで良いか。てかお前ら、いつまで俺のことアクトナイトって呼んでるんだよ。ややこしいわ」
「まあそっちの方が呼びやすいし」
「決まったみたいだ。それではこちらへ。会議室へ案内しよう」
まだビレッツの円盤たちに動きはない。敵が動き出す前に、どれだけ対策が出来るのか。大きな戦いを前に少年たちは緊張で静かになっていた。
市外へ避難をしていく住民たちの中に雄大たちの姿があった。
剛から既に事情は聞いている。親として、子ども達が街を守ってくれると信じて残りたかったが、全力で戦うためにも避難するようにと言われてしまった。
きっと大丈夫。そう信じている両親の荷物は他の人間と比べると少なかった。きっと帰れると信じているから。
ビレッツの目的は不明なままだ。この星の破壊か、重要人物の殺害か。それを知るためにもリーダーを捕らえる必要がある。
浮上していく戦艦の中で会議は行われた。
「私たちだけでは勝てない。が心配することはない、既に外部へ応援を要請している」
「なら私たちはそれが来るまで防戦すれば良いってわけね」
「那岐の言う通りだ。だがワープドライブなどで時間を短縮しても、来るのは要請してから24時間後。あと23時間は持ちこたえる必要がある」
「23時間!寝ずに戦えってこと!?」
徹夜は珍しいことではないが、寝ずに戦うというのは啓太たちも初めてで不安が募る。声をあげるのも無理はない。
「そうだ。そこで一番頑張ってもらうのはシャオ。君になるが問題はないか?」
「俺の能力は傷、病の治癒と体力の回復だ。疲労感がなくなるかは人それぞれだ」
これまでにないハードな戦いになることが予想される。覚悟を決めた少年たちが各々支度を始めると、戦艦は海上へ出た。
「信太郎!何やってんだ!?」
明るくなった甲板では、セルナが分身を作り出しては海に放り投げていた。海へ落ちたセルナは世須賀の砂浜を目指してクロールで泳いでいた。
「ってセルナの隣に信太郎!?じゃあお前誰だよ!」
作業をしているセルナのそばで信太郎がそれを眺めていた。
「あぁ、俺の代わりでシンに戦ってもらうから」
「いやシンって誰だよ…お前、戦えるんだな?」
「…」
シンという人物は黙ったまま分身を送り続けている。街にはまだ大勢の人がいるので、彼らを戦闘の流れ弾から守るというのと、ダメージの肩代わりが分身たちの役目だ。
ガイアスはバリアポッドという防御装置を放出した。ポッドはプロペラ無しで空に滞空し、強力なバリアを展開。これで少しは街への流れ弾を防げるようになった。
ビレッツの円盤が開き、中から翼を持ったソルジャー達が出撃する。それが戦闘開始の合図となった。