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心刃一体アクトナイト  作者: 仲居雅人
大月信太郎編
102/150

第102話 変わって変わってまた変わる

 ある日の放課後、シャオに呼び出されて記念公園まで急ぎ足で帰ってきた信太郎。何かあったのかと不安を感じていたが、トラブルなどではなかった。


「シャオ、用って何?」

「あぁ、警察に押収されたら面倒になりそうだったから、こっそり取っといたんだ。もう戦えるぐらいには立ち直ってるし、渡しとく」


 信太郎が倒れ、少年たちが心へと入っていた時。シャオは信太郎からとある物を回収していた。


「これ…お前の大切な物だろ」


 キンカク星人の毒袋。信太郎が殺してしまった友達、イズムの物である。

 元から袋は頑丈に出来ているが、万が一もあるので更に丈夫になるようコーティングが施してあった。


「…変かな。友人の一部を大切な物みたいに…思い出の物として持ってるのって」

「別に…宇宙全体で見れば普通だな」

「そっか…」


 信太郎は毒袋を受け取ると、胸ポケットに入れてはその上から優しく撫でた。


「あとこれも。シーノ、いや真華のだ」

「………マテリアル」


 シャインマテリアル。イズムと同じく、信太郎に殺されたメルバド星人、シーノ・ウォウ。愛澤真華が、メルバナイトシャインに変身する際に使用していた物だ。


「他は身体と一緒に消滅したのにこれだけが残ってた…こいつも一緒に、持っといてやれ」

「俺は…そうだ。忘れちゃだめだ。友達を2回も…殺したんだ…!」


 掛ける言葉もなく慰めるように背中を叩く。信太郎は涙を拭くと、制服を脱いで剣を召喚。もう二度と過ちを犯さない程に強くなろうと、特訓を始めた。




 アクトナイトフレイスの火野(ひの)将矢(しょうや)とアーキュリーの清水(しみず)奏芽(かなめ)は中庭のベンチに座り、購買部で買った菓子を食べながら雑談していた。

 話題はもちろん、美保が提案したイメージアップのアイドル計画だ。


「もう美保ちゃん、チャンネルとか作ったって。いつか集まった時に紹介動画撮るってさ」

「ふ~ん」


 反対はしてないが別にやる気はない。将矢からすれば周りからのイメージなど、どうでもいいみたいだ。

 奏芽は細いスティック状の菓子を取ると、ボーッとしている彼氏の口に近付ける。将矢は視線を動かさず、スティックを食べた。


「将矢変わったよね。前まではこう、ガーッて感じの性格だったじゃん」

「ガーッて…馬鹿みたいだな」

「だって馬鹿じゃん」

「いや、試験の学年順位10位以内キープしてるがな」

「でも後期期末。私に負けた」


 会話の内容がスカスカだ。こういう時の奏芽は少し機嫌が悪いのだ。


「なんかやなことあったか?」

「別に」

「机に腿ぶつけた?」

「違う」

「購買で買ってきたパン、不味かった?」

「ううん。今日のソーセージエッグサンドは美味しかった」


「アクトナイトのことでなにか言われたな」

「…」

「何言われた?」

「…」

「何、言われた?」

「多分学年下の子たちに…進学とか就職楽そうだって…そんな理由で戦ってるんじゃないのに…」


 泣きそうになる奏芽にハンカチを渡す。中々フォローのしづらい言葉を言われたなと、将矢は言葉に迷っていた。


「今は色々言われるけどさ…その内変わってくるさ。そのためにイメージアップのアイドル活動するんだろ?」

「でも将矢やる気なさそうじゃん」

「俺はだってアレだ。別にイメージとかどうでもいいし」

「んんんんん!私はどうでも良くないの!」


 不良から優等生になった少年と、日陰者から優等生になった少女ではここの価値観が違っていた。


「そっか…そうだよなー…」

「…」

「……」




「………いやなに話終わった風に黙り込んでるの?てか最後のチョコ食べたでしょ!」

「あぁなんて言えばいいか分かんなくて…」(逃げられなかったか…)


 会話はそこまでだった。手が寂しかった将矢がトロワマテリアルに触れたちょうどその時、シャオから怪人の出現を伝えられた。


「剛は先に向かってるか…俺、行ってくる」

「私も行くから」


 いつか組んだペアシステムは忘れられている。結局、怪人退治に人手は多い方が良いので、奏芽も連れて行くことになるのだ。




 怪人が出現したというショッピングセンターではメルバドアル達が暴れていた。

 先に到着していた剛はもう100体も倒したというが、それでも顔を向けた先ではアルが暴れていた。

 将矢と奏芽も変身して討伐に加勢する。逃げ遅れた人もいるので、早く倒しきらなければならない。


「てか、怪人は!?」

「逃げられた。追おうにも雑兵がこれだけいるとな!」


 バヨネットは首を跳ねてライフルが頭に風穴を開ける。アクトガーディアンは客を庇いながら、確実に数を減らしていた。



「おーほっほっほ!」

「怪人だ!」


 そんな時、逃げたはずの怪人が戻って来た。フレイス、アーキュリーは挟み撃ちを狙おうと動きを変える。


(そういえばこいつの能力は何なんだろう…)


 先日の怪人は光線が当たった物を菓子に変えるという能力を持っていた。ふと気になったが、どうせもう倒してしまうのだと、将矢は考えるのをやめた。


「私はカワルガイマン!替われ~場所!」


 ドカン!アーキュリーが壁に激突した。


「奏芽!?どうしたんだ!」

「いった~!」


 さっきまで通路を走っていたはずのアーキュリーは服屋の中で倒れていた。そした、彼女が走っていたはずの場所にはマネキン人形が立っていた。


「場所を入れ替えた!?」

「そうゆこと。替われ~場所!」


 気が付いた時にはフレイスも怪人から離された場所に。どうやら、商品棚と入れ替わったらしい。


「チッ!」


 片手で雑兵に構いながらも、ガーディアンはライフルを怪人に向けて発砲。


「あー!3つ以上は無理!ギャアアア!」

将奏(しょうかな)!そいつの相手は俺がやる。お前たちはアルを倒せ!」

「いいけど、何なのその略し方!」


 将奏。それは美保が考えたカップリングの名前である。それ以外にも啓千(けいちな)昇那(しょうなぎ)など色々あるが…今はそんなことどうでもいい。

 選手交代だ。ガーディアンは怪人の前に立つと、その場でアクトウェポンに連結し、強力な弾で立ち向かった。


「入れ替えられるのは2つまでのようだな!このまま撃ち殺す!」

「痛い痛い痛い痛い痛い!」


 カワルガイマンの身体を貫通した弾が壁を破壊していく。後々文句を言われると面倒なので、剛は出力を下げた。


「んんんんん!…変われ!」


 怪人が反撃に光弾を撃って来る。避けなくても大丈夫そうな威力だが、念のためガーディアンは身体を反らして回避。しかし、背後で威力のない弾は跳弾し、ガーディアンの背中に命中した。


「ぐぬぬぬぬ!バイナラ!」

「!?」


 怪人のいた場所に突如、テーブルが現れた。このフロアにテーブルは見当たらず、まさかと思いガーディアンは外を見た。


「隣の建物に逃げられたか…!」


 追跡をしたかったが、まずは人々の安全を優先してアルを全滅させた。




「すまない、逃がした」

「そうか…てか店の中、グチャグチャにしちまったな」


 戦っていたフロアは商品が崩れ壁もボロボロだった。おそらく、ここ以外のフロアでも被害は出ているだろう。


「ねえ、もう行こうよ…」


 店員や客の視線は冷たい。残酷な程に彼らは正直だった。




 3人は店を出てから変身を解除。その時、やっと異変に気が付いた。


「とりあえず仲間を公園に集合させろ」


 自分の声を聴いて、剛はふと首を傾げる。声が少し高くなっていて、風邪かと疑った。そして目の前にいる2人が、驚いた顔で自分を見ていた。


「…なんだ?」

「む、胸…!」


 虫でも付いているのかと胸を見るが何もない。




 いやおかしい。胸が膨らんでいる。いつも下を向いたら、美保が選んでくれた靴が見えるはず。だが、胸が邪魔をしていた。


「…おい、何やってんだよ」


「…ない」

「ないって…」

「ちょっとやめてよ、そういう話…女子いるんだけど…」


「…俺も女子だ」


 男性器がなくなっていた。だがトランクスに手を入れて分かるこの感触。そうだ、美保の股と同じ感触だ。






「先輩が…女の子に…冗談ですよね?胸のそれ、ボールですよね」

「信じられないなら証拠を見せてやる」

「うわあああ!脱ぐな馬鹿!」


 女性になった剛を見ていた美保はポカーンとしている。会話が出来る状態ではないのは確かだ。


「物の位置を入れ替えたり性別を変えたり…よく分からねえ能力だな」


 それから遅れて、ジュピテルの鈴木啓太(すずきけいた)とビヴィナスの金石千夏(かないしちなつ)が走って来た。それもやけに慌てた様子で。


「大変なの!さっき怪人に光線を喰らって!」

「僕が千夏で千夏が僕で!入れ替わったんだ!」

「…場所、性別に続いて心までねぇ」


 シャオはそれほど驚かない。啓太と千夏の心が入れ替わっているが、宇宙全体で見ればそういう現象は、珍しい物でもないのだ。


「信太郎はまだか?」

「あれ、メッセ来てる…セルナの力で入れ替わった心とか性別、治してるって」

「そうか。なら今のメンバーだけで作戦立てるぞ!」



 ビスケットガイマンの時と同じなら、怪人を倒せば全ては元に戻る。信太郎が元に戻す努力をしているが、きっと怪人の出す被害の方が多いだろう。






 その頃、信太郎は怪人の被害を受けた人々を元に戻しながら、足取りを追っていた。


「あっちの方に行ったよ!」

「分かりました。ありがとうございます」


「ったく、ちゃんとやってくれねえかな?怪人退治はあんたらの専門なんだろ?」

「ちょっとユウちゃんやめなよ!」


 たった今、入れ替わっていた心を元に戻したカップルだ。男は不満をぶつけて、女はそれを止めようとしていた。


「大体怪人倒して全部元に戻るなら、俺たち治すより怪人倒せよ。馬鹿なのか?」

「…確かにその通りです」


 低い姿勢で頭を下げ、信太郎は捜索に戻った。



「やあ、信太郎」


「シン」


 信太郎の前にシンが現れた。彼はご機嫌な様子でアイスクリームを食べていた。


「怪人には逃げられたよ。一旦みんなと合流して、次逃がさないように作戦を」


「お前は何なんだ。どうしてアクトソードが使える!」


 返事はしない。あっという間にコーンも平らげ、シンは歩き出した。


「散歩しようよ。きっとどう頑張っても怪人はみつからない。肩の力抜いてさ、リラックスリラックス」

「ふざけるな。俺の質問に答えろよ!」

「答えて欲しかったら散歩しよ?…そんな警戒しなくて大丈夫。僕は君の味方だから」


 剣を収めると、信太郎はシンの背後に付いた。怪しい素振りを見せた瞬間、すぐ切れるようにと。

 それからやけにピリピリとした空気での散歩が始まるのだった。



「この街の人のこと、どう思う?」

「…」

「難しく考えなくていいよ」


「嫌いだ。戦えもしないのに好き勝手言ってきて」

「ははは、正直だね。確かに厳しい言葉ばかりだ。最初はヒーロー扱いだったのに今では厄介者だ」


 風が強まる。道は散った桜の花で色鮮やかになっていた。アクトナイトになってから、かなりの時間が経ったと思う。

 あの時から随分と変わってしまった。


「でも分かってるはずだ。その厄介者たちだけじゃない。例外なく、君はこの星に生きる愛おしい生命を守らないといけないんだ」

「分かんねえよ」




 怪人は見つからず、次の日がやって来た。


「はぁ」


 進級出来なかった信太郎は今日も静かに机に伏せて寝ていた。

 誰も声を掛けようとはしなかった。怪人として暴れて、特に大切な人を傷付けられた人は特に嫌悪していた。


 ブルル。スマホが通知を知らせようと震える。画面には将矢からの「放課後公園集合」のメッセージが表示されていた。

 特訓のため行くつもりではあった。


(めんどくさ…)


 しかし来いと言われると行く気がなくなるのが今の彼である。


(行かなくていいや)




 放課後、信太郎は公園に現れなかった。


「信太郎のやつ、体調悪いから来れないって」

「んじゃー仕方ないっすね。とりあえず私たちだけで紹介動画撮りましょう」


 美保はスマホをスタンドに立てて録画開始。カメラに収まる位置に線を引いた。


「ところで私たちって名前なに?」

「なにって…アクトナイトだろ?」

「グループ名か」


 ただ子供が集まっていただけの集団に名前などなかった。


「複数系にして()()()()()()…単純かな?」

「あぁ~良いと思いますよ。シンプルで覚えやすいと思います」


 イメージアップを提案した美保だが、もう数日前にやる気が尽きていた。しかし言い出しっぺなので「やっぱやめましょう」とも言えず、今日適当に動画を撮って編集、投稿するつもりなのだ。

 だから、自己紹介動画の台本なんて物はない。


「はいそれじゃあ撮りまーす。並んで~」

「え、このまま撮るの?今の格好制服だよ?」

「こういうのは勢いで撮った方が上手く撮れるんですよ。もう私たちとっくに身バレしてますし、むしろ制服の方が潔くて良いでしょ。あ、ボタンとかネクタイきちんとお願いしますよ」


「俺はどうなる」

「先輩は…怪人のせいで今は女性って付け加えといてください。編集で元の写真入れるんで」


 グダグダながら美保が監督の元、アクトナイトのPR動画、「アクトナイツ結成!」の撮影が開始された。






(行かなくていいやって俺、あそこに居候してるんだった)


 街をブラついている信太郎。下校してしばらく経って気付いたのだが、面倒だから公園に行かなかったと言うものの、帰る場所もそこなのだ。

 何をやっているか知らないが、いつも全員が帰る時間帯までは帰らないことにした。


 久しぶりにゲームセンターで遊んで時間を潰す。店の外に出る頃にはすっかり日が暮れていた。


 だが帰ろうとした時、すぐ近くに敵のエナジーを感知。メルバドアルも従えず、怪人カワルガイマンがこちらにステップで寄って来ていた。


「ルンルンルン!ランランラン!私ったら天才!」


 自分の存在に気付いていないのか?信太郎は死角に回り剣を召喚する。怪人の周りは見物客ばかりで闇討ちを狙うには良い環境だった。



 だが突然、背後から突然押し倒された信太郎。立ち上がろうとするも大勢の人々に押さえつけられ、怪人の元に引っ張り出された。


「どういうつもりだ!俺は味方だぞ!」


「違う!彼らは私の味方!アクトナイト推しから私推しに乗り越えたファン達よ~!…それから、あっなったも~!」


 どうやら彼らは怪人の能力によって操られているようだ。そして怪人は手を構えた。


「あなたがこれから変わるのは立場。これから街の怪人になってもらうわよ!」

「くっ…離せ!」


 押さえていた人間を放り投げた時にはもう遅かった。信太郎が怪人の光弾を受けた途端、周りの人が一斉に逃げ出した。


「怪人が2人いるわ~!」

「逃げろ~!」


「おーほっほっほっ!これであなたは怪人よ~!」

「ふざけるな!俺を元に戻せ!」

「戻したければ私を倒せば良いじゃない…まあ無理でしょうけど」


 怪人はさらにもう1発、光弾を発射。壁にぶつかり反射した弾は怪人に命中した。


「私はちょっと格好の派手な一般人…」

「ふざけるなあああ!はっ!?」


 殺気を感じた信太郎は高くジャンプ。炎と水の攻撃が足元で爆発した。


「そこまでだ!怪人め!」


 つい先日、自分を許してくれたばかりの仲間たちが武器を向けている。

 状況を既に理解している信太郎は落とした剣を回収して逃走した。




(またこうなるのかよ…)


 信太郎はまた孤立した。しかし今回は怪人を倒せば解決する。そう思うと気が楽だった。

 ネットでは2体の怪人が出現したと騒がれ、いつ撮られたのか分からない、明らかに盗撮と言える構図の自分の写真が載っている。

 変える能力。まさかここまでの物とは思っていなかった。能力のせいで怪人として認識されるようになるなど、もはや常識変換などに近い。

 危険すぎる。カワルガイマンは倒さなければいけないのだ。




 カワルガイマン出現から3日目。あれから怪人のエナジーは感知出来ない。アクトナイト同士での仲間割れを狙っているのだろうか。


「くぅ」


 寝ずに走り続けていた信太郎がとうとう転んだ。立ち上がろうにも力は入らない。


 そして怪人はこれを狙っていたのだ。


「ほ~!」

「ウボォ!?」


 跳んで現れた怪人は背中に着地。信太郎は逃げようとするが、動かせないほど怪人は重かった。


「う~ん、ピョンピョン運動やりま~す!ピョンピョンピョンピョンピョンピョンピョンピョン!」

「ああ!うああ!ぐぅ!あああああああ!」


 怪人はその場でジャンプを繰り返し、信太郎の身体を圧迫した。


「あなたを殺した次は誰を怪人にしよう。そうだ赤ちゃん!赤ちゃんを怪人にしてしまおう!自分たちの赤子を殺したとなれば、あいつらも正気ではいられない!」


「貴様あああああ!」




「憎しみだけじゃだめだ」


 シンが現れた。彼が求めると、アクトソードとマテリアルは彼の元に集まった。


「憎しみや怒り。負の感情じゃ勝てない。仲間たちに負けた君はそれをよく分かってるはずだ」


「お前がセルナに変身するもう1人の子供か!アル達!来なさいな!」


 怪人が呼ぶとメルバドアルが湧き出た。しかしシンは焦ることなく変身。


「アクトベイト!」


 見た目は変わらない。信太郎のセルナと違うのは剣の持ち方。それだけなのに、信太郎はシンのセルナから自分以上の力を感じていた。


「ふんっ!」


 セルナが分身し4人に。3人がアルと戦い道を開くと、本体の1人が怪人に真っ向勝負を挑んだ。


「フッ!ハッ!セイッ!」

「ぐわぁ!?」


 素早いが力もあるその動き。確実に敵を攻撃するという意思を感じた。


「信太郎!アクトナイトは負けちゃダメなんだ。弱い者が死ぬ弱肉強食。僕たちは野生的な狩りじゃなく、人を守る理性的な戦いをしなくちゃいけないんだ」

「戦いながら説明なんて余裕だな!」


 怪人の背中から突然、無数の鞭が伸びる。セルナは全て切り落とすと、アルを全滅させた分身を集合させて怪人を拘束した。


「あ!いつの間に!」

「君はまだセルナの力だって最大限に引き出せていない!セルナスラッシュ」

「うぎゃあああああ!?」


 説明をしながらついでのように倒される怪人。これでおそらく、色々変わっておかしくなった人たちは元に戻っただろう。


「負けてから勝つ。それを繰り返して忘れがちだけど、本来僕たちの戦いは最初で勝たないといけないんだ。そうじゃないとまたどこかで悲しむ人が出る」

「無理だろ…」

「無理とか言ってもやるしかないんだ」

「無理…違うな。俺、昇士たちみたいに戦いの才能ねえんだぞ!いいか!街を守るアクトナイトの戦いにな!俺なんか必要ねえんだよ!」




「そんなことねえよ!」


 いつの間にか後ろに昇士と那岐が来ていた。日が昇っている朝早くだというのに駆け付けたのだろう。ご苦労なことだ。


「せっかくアクトナイトに戻ったのにさ、そんな悲しいこと言うなよ!最近の信太郎は落ち着いて良くなったって思ってたけど、そんなこと思ってたのかよ!」


「俺は良くなってない…現状維持に必死だよ」


「…昨日はごめん。怪人の能力とは言え、お前にまた攻撃して。さっき、変わった皆は元に戻ったってたさ。ところでお前、誰と話してたんだ?」


 そう言われて振り返るとシンの姿はなく、剣とマテリアルが置いてあった。


「…さぁ~て、帰って寝るか」

「あんた…また学校休むつもり?」

「そりゃ徹夜で走ったし。シャワー浴びたいや」

「また留年、いや今度こそ退学になるわよ?」


「もうどーだっていいんだ。そういうの」


 フラフラと歩く信太郎だが公園への道は間違えなかった。




「良くねーよ!」

「え、昇士!?」


 昇士が飛翔。信太郎を捕まえると公園への最短距離を飛んだ。


「やっぱ退学は良くないって!とっととシャワー浴びて用意するぞ!」

「お節介する程お前、俺と仲良くないだろ」

「俺も思ったけどそれこそどーでもいいわ!この際だから言ってやるけど、俺お前が進級出来なかったのかなり悔しかったからな!そりゃ出席足りなかったし暴れたってのはあるけど、一緒に街のために戦ったのにさ!それで啓太は進級したこと後悔してるんだぞ!」


 それを聞くと少しだけ信太郎も悔しくなった。皆と一緒だったら、今がもう少し楽しかったんじゃないのかって。


「文化祭とか運動会とか一緒に楽しめるイベントはある!退学したらお前、今度こそ俺たちと関わらなくなるだろ!あと聞くけど昨日仮病使ったろ!」

「分かった分かったよ!登校するから!はぁ…」


 ここまで言われて行かないわけにはいかないので、諦めて登校を決意した。




「ところでお前たちもシャワー浴びてけよ。さっきから臭うぞ。服も乱れてるし、ヤったんだろ」

「はぁ!?そういうこと普通言う!?気付いても言わないのがマナーでしょ!」

「友達だから言ってやってんだよ!てか学校ですれ違う時たまに臭うんだよ!将矢と奏芽だってそこら辺気を付けてるのにお前ら万年発情期か!兎なのか!?」


「ははは…そうだったんだ。気を付けないと」

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