【暴食】の蠱毒たる神 IFストーリーその1
これは12話での選択をしたのが賢者たちの実験動物ではなく、王侯貴族に奴隷として売られるという選択をしたというIFです。
「私は、王族貴族に売られる方を選ぼうと思う。」
「ふぅ。あれも今となってはいい思い出だな。」
「急にどうしたんですの?そんなことを言い出して。」
「いえいえ、ここに来る直前の、もう400年も前のことを思い浮かべておりまして。」
私がそう、朗らかに笑って話すのはとある小国の一人の王女、いやもう王の血族は彼女しか残っていないのだから女王と言ってもいいだろう。
「ふふ、400年前と言えばあなたがこの王宮に執事見習いとして雇われたころでしたわよねぇ。こんな時だからこそ聞きますけど、あなたは確か今は奴隷契約は解除されてましたわよねぇ、逃げなくてもよかったんですの?」
「御冗談を。私は300年前に契約が破壊されたとき、陛下に一つの約束をしたんですよ。それからはずっと、私の命運が尽きるまで陛下の血族をお守りすると決めているんです。・・・今となっては貴女様しか忠誠を捧げる相手はおられませんが。」
「そうね、悪いわね、こんなことを聞いて。でも良いのよ?この国はもう終わる。いくらあの一神選定戦を生き延びた怨王であるあなたが居てもそれは多分変わらない。私としてはあなただけでも生き延びてほしいのだけれど。」
「それは無理な相談ですな。しかし、一神選定戦とは懐かしい話を聞きました。あの時はこの国を守り抜くのは大変でした。知り合いも友人も、・・・私をここに連れてきた賊王も、あの時に大体が死んでしまわれました。それでも、あの一神選定戦を生き延びた十大列強がいるという評判で、今までこの国を守れたのは良かったことではありますが。」
「ええ、あなたが居たおかげでこの国は小国でありながら、いくつもの大国からの干渉を撥ね退けることができた。でも、今回ばかりはあなたでも無理なのよね。」
「ええ、相手が国ならまだ何とかなりましたが、あれらが相手では勝てそうにもありませんな。そもそもあの霊神がやられた時点で私に打つ手はございません。彼の能力は私のほぼ上位互換でしたから。昔は私の方が圧倒的に強かったのですがねぇ。ああ、あの頃が懐かしくすらありますな。」
「昔に戻ってやり直したい?」
「いいえ、私はもしもう一度やり直せるチャンスがあったとしても、選択を変えることはありませんな。私は陛下の血族を守るという使命ができたことで、欠けていた自分を埋めることができた。ああ、でも、一つだけ、一つだけ心残りがあるとすればそれは・・・。」
「それは?」
「あの時救えなかった陛下に、もう一度謝罪をしたかったと思います。」
最も新しき一神選定戦から約300年、世界は奈落教団と名乗る謎の宗教組織によって滅亡の危機に陥っていた。
奈落教団は次々に信者を増やしていき、いくつもの下部組織があったと言う。
結局は、いくつもの国が協力してようやく根絶することができたが、その被害は計り知れないもので、世界の人口が10分の1になったとも言われている。
その被害者には、数多の国や英雄が含まれていたが、その中にはとある小国一つと十王の一人も含まれていたという。