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才能の差

確かにマーレィの才能はピカイチでそれは誰もが認めていた。だが、才能があるから…いや、才能があるからこそ独りよがりな態度じゃ誰も着いてこなくなる。

天才と凡人。

それぞれ抱えてる苦悶はきっと分かりあえない。

分かりあえないこそ歩みよるべきだ。


「マーレィ……、オレお前と一緒に芝居がしたい」


こう言ってしまうのは絶対に勝てない相手と認めてしまっている事でありできるなら言いたくなかった。だけど、共に同じステージに立ちその輝きを受けたいと思うのは負け犬の発想だろうか?

同じ時代同じ場所で自分より遥か上の存在と一緒にステージに立てる、それは幸せな事なのではないだろうか?


「マーレィ、オレを一緒のステージに上げてくれないか?」


「お前がステージに上がるならオレは二度とステージに立たない」


冷静を取り戻してたマーレィはいつも通り冷ややかな声で頑なにオレを拒否した。


「ここはオレのカンパニーだ。オレのやり方が気に入らないなら出ていけ」


腹の底から出てくる低く重い声。

迫力に負けてこのまま引き下がったらオレは二度とマーレィと同じ舞台に立てなくなる。

分かっていても言葉が出てこない。

それほどマーレィの表情は険しく立ち込める空気は冷たかった。

オレはマーレィと同じ舞台に立ちたい。

想いが胸から溢れ出て唇が震えて言葉が出てこない。

言葉が、セリフが出てこない。

こんな事初めてだった。芝居に、相手に呑み込まれてしまって虚構のこの世界からシャットアウトされてしまう事なんて今まで一度も無かったのに。

こんなのいつもの自分じゃない、オレは芝居を続けたかった。

一瞬、本当に一瞬、目を閉じてしまった。

それは心を落ち着かせるためにした行動だったのに。

目を開けた時そこにマーレィはいなかった。オレは完全に現実世界に戻っていた。



「おい。おい。これが本番だったらアウトだったな」


そこには頭に巻いていた白いタオルをほどき帰り支度を始めているヒカルがいた。


「え?ちょ、ちょっと待ってくれ。オレはまだできる」


「もういいよ。もう一度台本読み直してきて」


「え……」


悔しい、悔しいのに何も言い返せない。

言い返したところでそんな無様な言い訳なんになる?

ヒカルにそんなオレの気持ち分かる訳なく、


「…………、この脚本、オーナーが書いたんだよね?」


バッグに台本をしまおうとしていた手を止めてそれを見た。


「あ、ああ」


「……、だよね。オレはこの台本を見てこの舞台に出ようって決めたんだ」


「え?、あ、ああそうなの」


オーナーが書いた事知っているならなんでわざわざ聞いてきた?


「それなら益々ちゃんと読んできて。それからまた稽古付き合ってあげるよ」














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