表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コロコロコロ

作者: 無月雨景


 こいぬのコロは、ポッチャリとしたしばいぬの男の子です。



 まだ小さいので、お父さんやお母さんのように、


 とおくへおさんぽへは行けません。



 でも、おうちのにわはおおきくて、


 コロのだいすきなあそびばです。



 いつもおにわであそんでいます。



 おにわには、コロよりもずっとずっと大きな、


 イチョウの木と、カシの木がたっています。



 コロはそのあいだをはしりまわるのがだいすきです。



 その日も、コロは小さなしっぽを


 めいっぱいおおきくふってあそんでいました。



 そこへ、ヒュウっとかぜがふきました。



 「ねぇ、ぼうや、しっているかい?」



 かぜが、コロにはなしかけてきました。



 「こんにちわ!」



 コロは、おおきなこえでごあいさつしました。



 「やあ、こんにちわ」



 「なあに?」



 「もうすぐ、なつがおわるんだよ」



 かぜのいうことに、コロはにっこりとわらいました。



 「うん!しっているよ!


 きのう、ひぐらしがないていたから、


 もうすぐなつがおわるんだ!」



 コロはとくいげに、いいました。



 それは、きのうはじめてきいたひぐらしのこえに


 ビックリしてこわがっていたら、

 

 おかあさんがおしえてくれたことでした。



 かぜはコロのことばにかんしんしました。


 でも、ちょっとだけくやしそうです。



 「よくしっているね。


 では、こんなはなしはしっているかい?」



 コロはかぜのはなしにみみをかたむけ、


 めをまんまるにしました。



 「セミってやつは、あんなにうるさくないているけど、


 ほんとうはなまけものなんだ」



 コロはちいさくくびをかしげました。



 だって、セミはいつだっていそがしそうです。



 「どうして?」



 「あいつらは、じつはものすごくねぼすけなのさ。


 ほおっておいたら、


 いつまでだってつちのなかでねているんだよ。


 いまおきているのは、


 ぼうやがうまれるずっとまえからねむっていたやつらが


 ようやくおきてきたのさ」



 「へーそうなんだ」



 コロはかんしんして、しっぽをパタパタしました。



 かぜはとくいになって、つづけます。



 「では、なんであんなにうるさいとおもう?


 あれはね、めざましなんだ。


 あんまりにもねぼすけだから、


 おたがいにこえをかけあうんだ。


 あれくらいうるさくないとおきられないんだよ」



 さらにつづけます。



 「では、なんでなつになくとおもう?


 なまけものだから、冬は寒くてうごきたくないし、


 はるやあきは、ここちよくてよくねむれてしまうんだ。


 だけどなつはあつくってねぐるしいだろ?


 だから、いくらねぼすけでも、


 なかにはがまんできなくておきてくるやつがいるのさ。


 でも、さいしょにおきたやつは、


 ひとりきりではさみしいだろ。


 だから、おおごえでないて、


 ほかのみんなもおこそうとするのさ。


 それでもおきないやつはいるんだけどね」



 「へーかぜさんはものしりなんだね!」



 こうなると、かぜはだいとくいです。



 「セミのなかでも、いちばんのなまけものは、


 ひぐらしさ。


 おっきなこえで、みんなをおこすのがいやだから、


 さいごなのさ」



 コロははなしをききながらみみのうしろがかゆくなって、


 みじかいあしをめいっぱいのばしてかきました。


 でもうまくかけなくて、ひっしにあしをのばしたから、


 コロリところがってしまいました。



 かまわずかぜはつづけます。



 「だからアイツらはこうなくのさ。


 そろそろみんなおきたカナ?


 あつくないカナ?


 おきたほうがいいカナ?


 ナツもおわるカナ?


 ってカナカナないているだろう?」



 やっとおきあがれたコロは、


 にくきゅうではくしゅしました。



 「かぜさんって、ほんとうにものしりだ!」



 かぜはきもちよくなって、


 わらいながらさっていきました。



 そのようすをみていたイチョウの木が、


 しんぱいそうにこえをかけました。



 「かぜのいうことをぜんぶしんじてはいけないよ」



 「どうして?」



 コロはききました。



 「アイツらはしょせんどこふくかぜさ。


 いきさきのないたびびとなんだ。


 だから、かれらのはなしにも、


 いきつくさきなんてないのさ。


 しょせんはかぜ。


 わたしたちとちがって、ねもはもないのさ。


 それよりも、私のしっているもっとみになるはなしは、


 どうだい?」



 イチョウの木がなにかはなしたそうにしていました。



 でも、コロはこんどははんたいがわのみみのうしろが


 ムズムズしてしかたありません。



 イチョウの木のようすに、


 となりのカシの木がわらいだしました。



 「ハハハハハ!


 たしかにかぜのはなしにはねもはもないのはさんせいだ!


 だが、アンタのみになるはなしは、


 いつだってうさんくさいじゃないか!


 はながあったらつまみたくなる!」



 いっしょうけんめいあしをのばしたコロは、


 またコロリところがってしまいました。



 「ただいま!」



 「ただいま。」



 そこに、おさんぽからかえってきた、


 おかあさんとおとうさんのこえがしました。



 「おかえり!あのねあのね!」



 コロはみじかいあしをいっぱいうごかして、


 でも、ころばないようにきをつけながら、


 おうちにかけていきました。




                   おしまい


こいぬってかわいい。

こねこもかわいい。


それだけでむてき。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ