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王都潜入観光(一)

今後の展開を鑑みて念のためR15に変更しました


 図書室にて行われたスライブのセシリア幻滅作戦が見事失敗に終わったので、翌日は真っ先にマクシミリアンの元に行き次の策を考えることになった。


 スライブはランドールでセシリアに会っているはずなので、ランドールに行くように仕向け、何の成果も上げられければ流石に諦めるのではないか……というのがマクシミリアンとフェイルスの3人で絞り出した作戦だった。


 ひとしきり議論を終えて方針が決まった段階だったがフェイルスは若干難しい顔をしていた。


「そんなに上手くいくと思う?」

「いや!!行くって!!スライブにとっての私の情報なんてランドールで会ったことくらいだもの。きっと大丈夫よ!!それにスライブは私探しに目途が立ったって言ってたし、きっとランドールでの捜査の目途が立ったってことだと思うのよね!」

「そうかなぁ」


 眉間に皺を寄せているフェイルスの煮え切らない態度にセシリアは大きな声で説得した。


「フェイは変なところで悲観的!その点はマックスと同じで流石兄弟よね」

「そこは慎重派って言ってくれよ。まぁやらないよりはやった方がいい案だけど」

「でしょ!!じゃあ早速今日スライブに提案してみるね!」


 セシリアは鼻息も荒くガッツポーズをとって気合を入れた。

 それを見たフェイルスはため息交じりにしぶしぶに同意した。……セシリアが押し切ったとでも言う感じだったが。

 

 そしてフェイルスは思い出したように話を変えた。


「そう言えば、この間の刺客の件だけど。」

「何か分かった?」

「あの後をつけたんだけど……二手に分かれちゃって。どっちに行くか悩んだけどリーダーらしき人物の方を追ったら……ラバール伯爵の屋敷の方に向かって行ったんだよ。だからあの刺客は十中八九ラバール伯爵が放ったものだと思う」

「ラバール伯爵……か。狙いは私かな?」

「だと思うね。ラバール伯爵はアレクセイ派だからね」

「はぁ……セシリア様、言っておきますがくれぐれも気を付けてくださいね」


 ため息交じりにマクシミリアンは言うと、生返事のセシリアに詰め寄っていった。


「いいですか。この意味わかってますか?」

「気をつけろってことでしょ?分かってる分かってる」

「……街へのお忍びはするなということです」


 きっぱり言い切られてセシリアは内心汗をかいた。こっそり街に行こうと考えていたからだ。


「あ……あう……うん」

「いいですね!!くれぐれもですよ!!」

「信用ないわね……」

「セシリア様の返事はあてにならないですからね。だいたいですね……」

「あーじゃあ。私は執務室に行くから!!」


 これまでの行動を考えるとぐうの音も出ないセシリアだったが刺客に気を付けて街に行けばいけばいいかなぁなどと、マクシミリアンが聞いたらまた怒髪天となるだろう考えでいたのだった。


 とりあえずこのままマクシミリアンのお説教を聞くのも辛いのでセシリアは逃げるように執務室に向かったのだった。


◆    ◆    ◆


 執務室に行くと既にスライブがいて、棚から資料を取り出しているところだった。


「おはようございます」

「おはよう」



(って……まずどうやって話を切り出そう…)


 いきなりランドールの話をするのも変だと思い、それとなく日常会話を振ってみる。


「あースライブは早いね」

「陛下より遅くは来れないですからね」

「そこは気にしなくていいよ。僕も起きるタイミングによって来る時間は違うし」

「お気遣い痛み入ります」

「それで……ちょっと提案なんだけど」

「なんでしょう?」

「えっと……セシリアのことだけど。その……ランドールに探しに行くのはどうかな?」


 そう言ったセシリアの言葉に、スライブはちょっと噴き出したように見えたのが気のせいだろうか?一瞬のことだったので分からなかったがいつもの朗らかな笑顔で返事をしてきた。


「陛下はセシリアがランドールにいるとなんでわかったのですか?」


 そこでセシリアはスライブがランドールで会ったことを自分達には言っていないことに気づいた。それが失策だったことも。


(しまった!!スライブの口からランドールの話聞いてないじゃない!)


「えっと……そういう情報が入っていて……」


 慌てて誤魔化すセシリアだったがスライブは破顔してセシリアに向き直った。


「そうでしたか。陛下がセシリア探しに協力してくださるとは思いませんでした。でもいい情報ですね。ありがとうございます」

「あ……うん……」

「でも私は現在宰相代理としているので陛下のお側を離れるわけ行きません。ですからサティに行ってもらうことにしますね」


 では陛下公認で!!とスライブが出て行ってしまうのを必死に引き留めた。


「え?いや……一緒に……行った方が……」


 しどろもどろに何とか状況を取り繕うとするセシリアだったが、スライブは大仰に首を振ってセシリアの申し出を断った。


「私は将来王太子殿下の元で働きたいのです。ここでの仕事は勉強になりますし、少しでもお力になれればと。王太子殿下も了承してくれてます」

「そ、そうなんだ……」

「では、さっそくサティに伝えてきます!"陛下公認で"セシリアを探せるとあれば王太子殿下も喜びますので。では早速ちょっと行ってきます!」

「あ……ちょ……」

 

セシリアが止める間もなくスライブは執務室を走るように出て行ってしまった。


(また……失敗した……?)


 むしろ事態は変な方向に進んでいる気がする。


「あーーーー!本当どうしてこうなっちゃうのぉぉぉぉ!」


一人残された執務室にこだましたセシリアの声に返事するものはいなかった。


(まぁ……こうなったらなるようになれよね。さて、仕事するか……嫌だけど)


 こういう事態を受け入れられる順応能力の高さはセシリアの長所でもあると思う。

 よろよろと立ち上がりながらも執務机に置かれた資料に目を通す。それはこの間から気になっていた税収の資料だった。


「ラバール伯爵かぁ……刺客の狙いは私よね。でもどうして急にこんな手に出たのかなぁ?」


 その観点から見ると確かにラバール伯爵領の税収についても違和感が拭えない。その観点からもう一度資料を見てみてある点に気づいた。


 物品年貢も減少しているけど…貨幣税収の減少割合が不自然なことに気づいたのだ。

 セシリアはペンを持ち、真っ白な紙に現在の情報を書き始めた。


「まずは市中に出回っているワインの価格が高騰しているのよね」


 この間街でホットワインを飲んだ時、屋台のおじさんが言っていたことを書く。


「でも昨日見た天候の資料を見る限りでは去年と天候変更が変わった様子はないし、ブドウの収穫量が減っているとは思えないのよね」


 ということは、ワインは通常通り製造されているということで、でも価格が高騰しているってことは市中にラバール伯爵領のワインが出回ってないからだと考えられる。


「で、極めつけはラバール領での不自然な税収の減少かぁ」


 物納年貢の量はそれほどの減少ではないのに、貨幣税収は不自然なほど減少している。

 税収の減少割合を考えるとこれはおかしい。


「確かに物納年貢が減ると貨幣年貢は減るとは思うけど……こんなに減るわけはないわよね」


 そして止めは刺客を送ってきたのはラバール伯爵。これはもう何かやましいことがありますと言っているようなものだ。


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