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第16話 「勇者アヘ顔ダブルピースvs魔王軍四天王」






 モタモタ……モタモタ……






 スローモーションのような動きでこちらに迫る、マーマン二郎(じろう)。とても魔王軍四天王とは思えない間抜けさである。


「……どうします? アヘダブ様」


 リディアが呆れたような表情で話しかけてきた。


「どうするって……倒すしかないだろ」


 俺はそう答えて、スローで走る二郎に歩み寄る。


「えっ! ちょ、ちょっと待て! 卑怯だぞ!」


「知るかっ!」






 バチーーーン!!!






 俺は勢いよく、マーマン二郎(じろう)の頬をビンタした。粘膜に覆われた湿っぽい肌で手が滑り、なんだか気持ちが悪い。


「ぐぎょえぇ!?」


 目を見開き、よく分からない喘ぎ声をあげる二郎。


 そして――彼は、力なく地面に突っ伏した。


「……え、終わりですか?」


「ああ、終わりだ」


 なんともあっけない幕引きである。


 こうして俺は、無事に魔王軍四天王の2人目を倒した。











「よし、先へ進むぞ!」


「そうですね!」


 引き続き、魔王城目指して荒野を突き進む俺とリディア。


 すると目の前に、いきなり人影が現れた。


「まてまて~~~い!!!」


 飛び出してきたのは、金色の鎧に身を包んだ魔族の男であった。


 先程戦ったダークネス・タイガー(略してD・T)同様に紫色の肌を持ち、目鼻立ちのくっきりとしたハンサムなフェイスが特徴的だ。


「どうせお前も四天王なんだろ」


「よく分かったな! 俺の名はキングスナイト三郎(さぶろう)! 魔王様に忠誠を誓う魔族の騎士! ちなみに先程お前たちが倒したダークネス・タイガー略してD・Tは、俺の弟子だった! つまり俺はD・Tの師匠! お前たち、俺の可愛い弟子であるダークネス・タイガー略してD・Tを倒しやがって! 許さんぞ!」


 セリフが長いな。


 するとキングスナイト三郎は腰の鞘から剣を抜き放ち、威勢よく叫んだ。


「覚悟ォーーー!!!」











 まあなんやかんやあって無事にキングスナイト三郎を倒した俺とリディアは、引き続き魔王城目指して荒野を突き進んでいた。


「いやー、さっきのキングスナイト三郎は強かったですね!」


「ああ、たしかにな。これまでの四天王の中では一番まともだった」


 まあ例に漏れず瞬殺だったわけだが。


「アヘダブ様、残る四天王はあと1人です! そいつさえ倒せば、魔王との決戦はすぐですよ! 気を引き締めていきましょう!」


「おう、そうだな」


 と、その時。岩場の影から、またしても敵が飛び出してきた。そして重低音の声で高らかに叫ぶ。


「マチタマエ!」


 片言の言葉を話すそいつは、身長2.5メートル程の大男だった。筋骨隆々の肉体と短く刈り上げられた金髪が特徴的だ。


 更に肌の所々に銀色のパッチワークのようなものが取り付けられており、まるでフランケンシュタインかのような風貌である。


「お、大きい体ですね……!」


 リディアは思わず感嘆の声を上げた。


「お前も四天王か?」


 俺が尋ねると、その大男がコクリと頷く。


「オレの、ナマエは、“サイボーグ四朗(しろう)”! サイボーグの、カラダをモツ、ニンゲンだ!」


 ということはどうやら彼の肌についている銀色のパッチワークは、すべて鋼鉄でできているようだ。


「人間? そんな奴が何故魔王軍の元で働いているんです?」


 怪訝な表情で首をかしげるリディア。


「オレはカツテ、ニンゲン同士のハバツ争いにマキコマレ、重傷をオッテしまった……そして、生死のフチをサマヨッテいた時、タマタマ通りがかった魔王様が、サイシンのテクノロジーで、オレを、ヨミガエラセテくれたのだ!」


 最新テクノロジーでサイボーグを作り出すって、魔王軍はどんな世界観で生きてるんだよ。ここは中世ヨーロッパ風のRPG世界じゃなかったのか。


「そ、そんな……あの極悪非道な魔王が人助けをするなんて、信じられません!」


「そうか?」


 むしろ魔王に対しては“ただのいたずら好きな変な奴”程度の印象しか持っていないのだが。


「魔王様にタチムカウ、オマエタチ、タオス!」


 するとサイボーグ四朗は、その大きな上半身を丸めてファイティングポーズを取り、俺目がけて突進してきた。


「うおっ!?」


 そのタックルは、想像以上の迫力である。まるで大きな岩が勢いよく転がり落ちてきているかのようだ。


 だが、恐れてはいけない。


「ふんっ!」


 俺は鋭く息を吐いて気合いを入れると、右腕を突き出した。


 そして、迫ってくるサイボーグ四朗に“はっけい”の要領で右手を当てる。


 しかし、サイボーグ四朗に俺の即死チートは効かなかった。


「ドリャアァ!」


「ぐわぁぁー!」


 俺は、彼のタックルをもろにくらって後方へ激しく吹き飛ばされた。


「大丈夫ですか、勇者アヘ顔ダブルピース様!?」


 心配そうな声を上げるリディア。


「ああ、大丈夫だ! くそ、まさか即死チートが効かないなんて……!」


 その時、久しぶりに俺の脳裏に無機質な女性の声が響いてきた。


『勇者アヘ顔ダブルピース様。あの敵は、元は人間とはいえ現在はサイボーグです。そのため、命を持っていません』


 つまり、こいつもこの前のゴーレムみたいな感じってことか。じゃあまたどこかに弱点のような部分があるに違いない。


『ちなみに今回は四天王とのバトルなので、私から弱点を教えることはできません。自力で弱点を探して下さい』


 妙に律儀でめんどくさい設定だな。まあいい。


「リディア! こうなったら聖剣を使おう!」


「はい!」


 彼女はコクリと頷くと、腰の鞘から勢いよく聖剣を引き抜いた。美しく磨き上げられた刀身が、太陽の光を反射して輝く。


「ム、そのツルギは……!」


 聖剣を見たサイボーグ四朗は、驚きに眉をひそめた。そうか、魔王軍の前で聖剣を使うのはこれが初めてだったな。


「オドロイタ、まさか聖剣をモッテいたとは……だが、オレはマケナイ!」


 彼はそう言って、リディア目がけてタックルを仕掛けた。

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