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第12話 「勇者アヘ顔ダブルピース、遺跡へ向かう」

「凄いぞ……この石板は、ただの石板じゃない! 伝説の聖剣を手に入れるための“鍵”なんだ……!」


 古代ドワーフ族の石板を手に、興奮した面持ちで話すロランさん。


「伝説の聖剣……ですか?」


 俺は思わず聞き返した。


 するとリディアが割って入ってくる。


「知らないんですか? 勇者アヘ顔ダブルピース様! 伝説の聖剣というのは、伝説の聖なる剣のことです!」


 説明へたくそかよ。


 逆に“伝説の聖剣”が“伝説の聖なる剣”じゃなかったらなんなんだよ。


「いや、それは分かるけど……もっとこう、具体的に……」


 俺が苦笑いでそう言うと、ロランさんが真剣な表情で口を開いた。


「ここから遠く北へ向かった所に、魔王の城がある」


「え?」


 なんだよいきなり。今まで魔王がいるなんて情報一切なかっただろ。


「古くからの言い伝えによると、その魔王の城は特殊な障壁で守られていて、普通の武器や魔法では突破できないらしい」


「は、はあ……」


「だから魔王の城に入るには、高い技術を持ったドワーフ族がつくった“伝説の聖剣”が必要になると考えられているんだ」


「なるほど……その剣なら、障壁が壊せるってわけですね」


 RPGにおいて、魔王の存在はかなり重要だ。


 ありきたりな展開ではあるが、やはり王道である。


「ところで、1つ質問なんですけど……」


「うん、なんだい?」


「魔王って、そもそも倒さなきゃいけない相手なんですか?」


 一口に“魔王”と言っても、ゲームによってその姿や性格は様々だ。


 最近は“悪い存在だと思っていたが、実は普通に真面目で良いやつだった”みたいなパターンの魔王も増えている。


 フェニックスワールドにおける魔王はどのような存在なのだろうか。


 するとリディアが、眉間にしわを寄せながら口を開いた。


「勇者アヘ顔ダブルピース様……魔王というのは、そりゃあもう恐ろしい存在なんです! 数年前から、私達人類に対して様々な悪質行為を働いてきています!」


「おお、そうなのか……!」


 リディアがここまで深刻な表情をするのは初めてだ。よほど邪悪な魔王に違いない。


「例えば、どんなことをするんだ?」


「1年前なんて、手下の魔物たちを従えて私の村にやってきたことがあるんです! それで、村中の家の壁にわけのわからない落書きを書いて帰っていきました!」


 は?


「え……それだけ?」


「何を言っているんですかアヘダブ様! 人の家に落書きをするのは、立派な犯罪ですよ!」


 いやそれはそうだけども。


 すると今度はロランさんが口を開いた。


「実は王都モルゲンも、2ヶ月ほど前に魔王の軍勢に襲われたんだ。あの時は街中にバナナの皮を捨てられて、本当に後片付けが大変だったよ」


 被害がどれも中学生のいたずらレベルじゃねぇか。


「え、人的被害とかはないんですか……?」


 俺が聞くと、ロランさんはキョトンとした顔で


「いや……そう言うのは無いかな」


と答えた。


 平和かよ。


「アヘダブ様! 早速伝説の聖剣を手にいれて、魔王討伐に向かいましょう!」


「う~ん……いや、別に魔王は放置で良くないか?」


 するとその時、俺の脳裏に天の声が響いてきた。


『勇者アヘ顔ダブルピース様。魔王討伐は、このゲームにおけるメインクエストの扱いになっています。このクエストをやるかどうかはあなた次第ですが、これをクリアしないといつまでもゲームは終わりませんよ』


 なんという事だ。


 俺としては一刻も早くこのゲームを終えたいという気持ちの方が強いので、魔王討伐は避けては通れない道らしい。


「よし、魔王を倒しに行こう!」


「どうしたんですかアヘダブ様。さっきと言っていることが真逆ですよ」


「気にするな! それでロランさん、伝説の聖剣はどこにあるんですか?」


 するとロランさんは、石板をゆっくりと持ち上げて口を開く。


「この石板の記述によると、どうやらここから東へ数キロ程向かった所にある遺跡に剣が収められているみたいだ」


「遺跡……ですか?」


「この地方には、ドワーフ族の遺跡が各所に残されているんだ。そのどれもがまだ未探索だから、毎年多くの冒険者が足を運ぶ」


「なるほど……じゃあ、その聖剣が他の冒険者にとられてしまっているという可能性はありませんか?」


 俺が聞くと、彼は首を横に振った。


「ドワーフ族の遺跡には、ドワーフたちが残した特殊な罠が張り巡らされているんだ。彼らの発達した技術によってつくられた罠は非常に強力で、冒険者たちは皆それを突破できずに返り討ちにされているらしい。だから、聖剣はまだ無事だと思うよ」


 どうやら、ドワーフ族の遺跡は非常に危険なダンジョンになっているようだ。


「だから勇者アヘ顔ダブルピース君、遺跡に行くのであれば十分注意してほしい」


「分かりました、気を付けます」


 俺はそう言って、ロランさんから左手で石板を受け取った。


「さあ、アヘダブ様! 遺跡へと向かいましょう!」


「ああ!」


 俺は石板を懐に収め、旅立つ準備をする。


 目標地点はドワーフ族の遺跡。ここで俺は、なんとしても聖剣を手に入れなくてはならない。

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