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リヴァイアサン魔法高校でのドタバタ ①

ファイ君の新生活始まります。

夢のように過ぎた昨日は嘘ではなかった。起きると今までの自分とは桁外れに充実した魔力が体の中を巡っている。


「僕は…。」


一日経って思い返すと頭を抱えたくなるほどの事をしでかした。敬愛する神獣様に求婚なんて…でも、愛してしまっているーーーーーーー。


「…私は嬉しかったよ?」


「わぁ!?なんで!????」


急に隣にリサさんが現れた。心臓が止まるかと思った。


「私は神獣王。光を操って瞬時にどこにでも行ける。」


光の魔力を宿すものの中でも特に強い者のみが使える瞬間移動。力の全容は今のところ解明されていない。いいなぁ…憧れるよね、瞬間移動。


「…君もできるよ。体験すれば軽くできるようになる。どこか行きたい場所はある?体験させてあげる。」


僕の心はすぐさま惹かれた。凡庸な魔力しか持たなかった僕にとってこんな体験なんて生涯出来ないと思っていた。


「体験させてください!!」


興奮気味で答える。


「ファイ!!!うるさいよ!!学校に遅れるから早くご飯食べなさい!」


下から母親の怒鳴り声が飛んできた。


「あああ!!リサさん!とりあえず学校に行く準備をしてきます。あの、部屋を観察されるのは恥ずかしいんで、昨日の湖で待っててもらえませんか?」


「わかった。」


急いでご飯を食べよう。


「母さんおはよう!」


「はい、おはよう。ずいぶん騒がしかったけど何してたの?」


「いや、なんでもないよ!少し分からないところがあってイライラしてただけ!」


「そう…あんまり追い込みすぎるんじゃないよ?体と精神の健康が一番の宝物だからね!」


「うん!」


料理をペロリと平らげ、エアロバイクの準備をする。


「うーん、これからは風瓶買わなくても自分で充填できるのか!!やばいなー感激!!」


ファイの家は根っからの貧乏だったので、風瓶はファイ自身が学力向上のための講師としてバイトをすることで賄っていた。魔法講師が出来れば普通の6倍程度の賃金をもらえるため、こんなに苦しい経済状況になることはないが、そこも魔法国家ならではの格差であった。


「よし!いくかー」


エアロバイクを勢いよく発進させる。空を走り、風を切ることが出来るのは本当に爽快だ。

と、後ろに重量を感じた。


「え?」


「こっちの方が、楽しそう。」


「えぇ…。」


待ち合わせの場所まで行く意味であった。


「リサさんー。意味ないじゃないですかー。」


「大丈夫。このままでも、瞬間移動できるよ。だからあと少しこの感覚味わいたい。」


それなら文句はなかった。リサさんなら瞬間移動の地点確定なんて余裕だろうし。


3分程走った後、リサさんは手の甲に魔法陣を展開した。


「…じゃあ、バイクを置きたいので学校の駐輪場にお願いします。」


駐輪場といっても基本的にリヴァイアサン高校にはエリートしかおらず、駐輪場の使用はファイ一人しかいない。


「わかった。」


光の魔法陣手の甲から2人とバイクを包み込むように展開され、光に包まれた。


そして、一瞬で見慣れた地点に立っていた。


「一瞬過ぎてよくわかりませんでした。」


「光の速度での転送、それが正体だよ。認知できるようになるには光の魔力コントロールを高めるしかないかな…。」


ポロっとすごい事を聞いた気がするけど、今の僕には到底理解出来そうにない。


「リサさんありがとうございます。まだ僕には難しいですね。練習しないとです。」


「ファイ君の魔力は十分に高まってるから、あとは練習を重ねるしかないよ…私も人間だったころは強い加護を持っていたけどコントロールできずに苦しんだ。」


優しい。僕が神獣の歴史で見たリヴァイアサンは3種の魔力を利用し、他の神獣を圧倒的な力で征服する、まさに王だった。ずいぶんイメージが違う。」


「…。まあ、神獣界にも色々あるんだよ。人間界と同じようにね。」


リサさんがいたずらな笑顔を僕に向けてきた。やっぱり美しくて可愛くて…素敵だ。


「ありがとう。ところで、ファイ君、今日は君を連れて行かなきゃいけない場所があるから手を取って?」


「え、でも僕学校が…」


「大丈夫。さ、早く。」


「はい…」


また先ほどと同じように魔法陣が展開される。そして光に包まれ見るとそこは校長室だった。



——————リヴァイアサン高校 校長室————―――


「…リヴァイアサン様、ようこそおいで下さいました。」


初老ではあるが、年齢を感じさせないすごみを帯びた男性が膝を着いてリサさんに挨拶をする。校長先生だ…


「して、本日はどのようなご用件で…?」


校長先生はリサさん向かって、尋ねる。


「うん、私、このファイ君と直接加護を結んだから。専用のクラスと魔力コントロールに関する顧問を付けてあげて欲しいな。」


「ほぉ?…何故ファイ君と?」


校長先生の鋭い目線が刺さって怖い。リサさん、出来れば言わないで…もしくはうまくごまかしてー。


「私はファイ君に求婚された。だからだよ。それ以上は質問しなくていいよ。」


ひぅい!!??校長先生の眉毛がぴくぴく動いている。怖すぎる。


「…畏まりました。ファイ君には特別日程を組ませていただきます。」


「うん。よろしくね、じゃあ私は行くよ。じゃあまたねファイ君。」


そう言い残して天使は光に包まれて消えていった。そして目の前にはものすごい怒気を含んだ校長先生がいる。


「さて、ファイ君。この学園創設以来、リヴァイアサン様と直接加護を結んだのは君で二人目だ。1人目は学園創設者リンドブルム・アスフォルタ様だ。これは大変なことだよ。本来であれば今日、式典を催さなければならないが、リヴァイアサン様から仰せつかったことを真っ先に実行すべきなのだ。だからまず、特別クラス創設とそれに伴い新規カリキュラムを組む。君が直接加護を受けたことは君が魔力コントロールを会得するまで秘密だ。大事になっては授業に支障が出るしな…。」


「は、はい!!」


鋭い眼光を目の前に僕は何も言えなくなってしまった。


——————リヴァイアサン聖堂前———————


「本日、新たにリヴァイ超級クラスを編成する。人数は各学年20名。これまでのどのクラスよりも激しく、厳しく、そして栄光あるクラスとなるだろう。詳細及び選定者については昼食時にプリントを配布する。選定者は午後よりクラス移動になる。本棟5階501室に集合するように。」


朝の全体朝礼での話は生徒全体に衝撃を走らせた。僕のクラスも朝礼後その話題で持ちきりだった。


「このクラスはクリス様とステファニー様で決定ね!一学年400名16クラスですけどそのうち25名なんて、あの2人なら余裕ですよ!」


クラスの女子も男子も2人の周りで盛り上がっている。憂鬱だ。魔法の実力が伴わない僕は選ばれるはずがないけど、それは昨日までの話…。なにせリサさんが僕の為に校長先生に命じたことだ。実際、憂鬱だった。今まで底辺だった僕が超級クラス。どんな目で見られるんだろう。


ファイは頭を抱えながら席に突っ伏した。



——————教室・昼—————


担任が部屋に入ってきた。


「さて、このクラスからは4名が選ばれた。クリス・エッぺン、ステファニー・ルシア、ホムラ。そして、ファイだ。」


クリス様とステファニー様まではみんな完成を上げていたが、僕とホムラさんの時に急にシーンとなった。だろうな…


「…選定者はプリントを渡す。そのあと移動しなさい。このクラスから4名も選ばれたことを先生は誇りに思う。」


先生の話が終わった瞬間に僕は移動を開始した。クラスメイトたちのから何も言われたくない。僕とほぼ同じスピードでホムラさんが反対側の入り口から出て行った。…そういえばホムラさんは魔力が強かったけど、影が薄いタイプだったな。他人のことは言えないけど。



—————501教室—————


「さてここに75名の精鋭たちが集っているが、諸君らは本校の中でもトップであるという事を自覚して欲しい。当然、将来の聖獣戦争へも君らは中心メンバーとして出ていくこととなるだろう。いいか!トップであるという自覚を胸に、一瞬も無駄にせず、自己を高めるのだ。今この時より、君たちがわが校の顔となる!」


すごい剣幕の校長先生からの叱咤激励に、部屋にいる生徒全員が緊張していた。


「特にそれぞれ学年の中に魔法貴族以外の出の者がいる。これは何を意味するか。加護を代々受け継ぎ、力を強めてきた貴族の出の諸君であっても、気を抜けばすぐに追いつかれ追い越されるという事だ。貴族以外の者はぜひとも本学全生徒の頂点を狙って行動してほしい。このクラスは完全実力主義制だ。」


この校長先生の言葉に何人かの生徒がピクっと反応する。貴族出に逆らうと、この学校ではろくなことにならない。僕の学年では僕とホムラさん、そしてあと2名が平民出だ。貴族様には貴族名がついている。クリス様であればエッぺン、ステファニー様であればルシアだ。


「…因みに、もし私の耳に貴族の権力を使った不当な行為をこのクラス内で使用したという情報が入った場合、…覚悟すると言い。」


この校長先生の言葉に今度は多数の生徒がピクッと反応した。校長先生は元リヴァイアサン魔法軍大隊隊長の任務につき、多くの功績を上げた平民出の現貴族だ。貴族としての歴史は無いが、王から直接貴族の印を授与されたため、その権力ははっきり言ってとんでもない。この中で逆らえる生徒なんてそうはいないだろう。


まだ未成年に教えるための教育の場なのに、こんな殺伐とした環境はいいのだろうか。

僕は心の中を不安で埋め尽くしながら、新しいクラスのスタートラインに立った.



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