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私と背後霊  作者: 涼森花進
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はじめに

大学時代からの親友の家へお邪魔した私。


だが親友の住んでいる部屋に言葉を失った。


親友のポジティブな表情、言葉に誘われ部屋に入


った私。


部屋に入ると親友はさっきの明るさとは裏腹に悩


みを話し始める。



片付けられていない引きこもりが住んでいそうな


「うっ」


と、思わず口を手で覆ってしまう様な空気感

に背筋がゾクッとした。それが恐怖なのか呆れなのか私はよくわからなかった。もし恐怖なのだとすれば、廃病院や廃ホテルより感じたのは事実だ。そんな所へ行ったことが無い私の勝手な想像で怖さの程度を決めたので「わからない」と言うのが本音である。それより親友の部屋がこんななのかという感情が勝っていたのは事実で「呆れている」と言うことで済ましておこう。

しかしその時の私の顔は呆れてあんぐり口を開けていたわけではなく、引きつって少し怖い顔だったと思う。無論ドラマとかでよくあるほっぺたをピクピクさせる様な表情では無く、真顔に近い感じだった。人間はすごいショックを受けると表情がなくなるんだと学んだ。


「中に入って。」


そう促されるまで入り口で、親友が鞄を下ろして机を引っ張り終えるまで突っ立っていた事からショックが伝わってくるだろう。決して机を出すのに邪魔になるだろうとかいう気遣いは無かったと断っておく。


「ほらぁ〜、遠慮してないでさぁ〜。ほら!右足を一歩前へ!」


私は右足を後ろへ後ずさりしそうになった。無論親友の言う遠慮と私の考えた遠慮とはだいぶニュアンスが違うと思う。

慣れれば大丈夫だ、折角来たんだし楽しんで帰ろう。そう言い聞かせて一歩踏み入れる。


ぬんっ。


なんとも言えぬこの感じ。想像通りといえばその通りだが、遥か上といっても納得だ。


「個性的な部屋だね。」


我ながらいい感じの言葉が出てきたと私を褒めたかった。ここから何か話が続くのではと内心ホッとしたが、


「ゴミ屋敷みたいって思ったでしょ??」


親友のその言葉で理想は崩れた。親友とはいえ、そうだね!とは言えない。だからといって、そんな事ないよ!と言ったら嘘だと言うのは私自身はもちろん、親友だって気付く。黙っているより「そうだね」そう言えばいい。私がそう思った時には遅かった。沈黙の線がこの部屋に張り巡らされていた。無言の肯定が私から滲み出る。


「そろそろ床が抜けそうだよね。掃除しなきゃなぁ。宝探し出来そうだよね。」


そう言ってヘラヘラしている親友に救われた気がした。


「仕事は見つかった?」


とりあえず話題を見つけて拾い上げた。


「う〜ん。30のおばさんを雇ってくれる会社はそう

そうないよ。だから今はコンビニでアルバイト!」


「コンビニだけじゃ生活厳しくない?」


「貯金を崩しつつみたいな・・・。んと嫌になるよね。半年で会社辞めたっていうだけでそんなにダメなのかな。かれこれバイト生活5年だよ?次の会社落ちたら本当にまずいよ。」


必死にかける言葉を探した。


「けど今そんな人珍しくないよ。私だって今の会社入るまで2年ニートだったし・・・。」


「退職歴あるってそんなに変?」


私の話が終わるか終わらないかで親友は聞いてきた。


「世の中おかしいよ〜。」


親友は私に答えさせる気は無かった様です。


「確かにそうだね。」


なんとか同情します。親友の言うことも一理あると素直に思ったからです。確かに会社の役員、いや、世の中は退職歴、低学歴、逮捕歴と言った人の負の部分だけを拡大してみようとする。これは決して親友が社会不適合というわけではなく世の中の理不尽さの現れだと思った。だがそれを世の中に示す力が私にあるわけでも無かった。無論、親友にもその時は無かった。




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