『KADOKAWA小説投稿サイト』に纏わるちょっとしたエッセイ
10月7日に『KADOKAWA』が『小説投稿サイト』を開設するというニュースが流れ、多くのライトノベル作家、小説家を震撼させた。(と私は思う。
まず、注目すべきは、角川系列の作品の二次創作が可能となる点。
人気ライトノベルに始まり、TRPG系の投稿も許可している。
次に、Web小説コンテストの開催である。
賞金総額700万、七つのカテゴリーごとに賞金100万円と書籍化確定が用意されたコンテストが行われる。応募方法は、小説家に「なろコン」とほぼ同じである。
これらの特徴を持った小説投稿サイトに関して、私は、否定も肯定の意見とありません。これは一つの問題提起であり、可能性を話しています。
まず、二次創作可能な点としては、かつて『小説家になろう』が持っていたジャンルであり、成長と共に制限された部分でもあります。
それが『KADOKAWA小説投稿サイト』で公式で行える。これは、公開される場所が現れるということは、その作品が好きでただ自分の趣味・趣向を世界に発信したい人に向けては、一々自身のウェブサイトを作り、リンクで同種のサイトやサイト登録によって同ジャンルの二次創作の枠組みを形成するという労力が不要になる。
同時に、二次創作の作品群や昨今の出版業界の動きを見ると一つの可能性が見えてくる。
それは――二次創作の公式スピンオフ化である。
第一次公開された二次創作許可の作品群である『フルメタル・パニック』では既に『フルメタル・パニック・アナザー』としてスピンオフ作品が展開。また、TRPG化している。
また『ログ・ホライズン』では小説家になろうにて正式の許可されている二次創作作品がスピンオフ小説としての書籍化が予定されている。そして、こちらもTRPG化という形で幅を広げている。
更に、『涼宮ハルヒの憂鬱シリーズ』では、2008年前後にニコニコ動画で想像された『涼宮ハルヒ性転換シリーズ』では、それに触発され、同人誌などで様々な派生が生まれており、公式ではスピンオフ漫画として『長門有希ちゃんの消失』がアニメ化をした。
こうした事例から、二次創作は原作を破壊する可能性のあるものではなく、二次創作は売れるもの。とするなら、二次創作を作る作家が原作知識を得るために原作小説・アニメ・ファンブックなどを購入する。そして、それによって書かれた二次創作を読んだ読者が原作を知りたくて購入するという今までライトノベルを購入しなかった層が読者ではなく、創作するための資料として購入するという層が見込める。
そして、ここで一つ。私の想像とWeb小説で起こり得る事例の一つとして提示したい――公式認定のシェアワールド作品の存在を。
これは、一つの世界観を元に作家が自由に作品を作る。というものだ。私は、KADOKAWA小説投稿サイトでこれを押し出す可能性があると考えている。
現在、各レーベルでは、人気作家・人気イラストレイターを起用してのシェアワールド企画として『プロジェクト・クオリディア』とした物が出版され、その動きが見られる。
シェア・ワールド企画のの利点としては、複数の作品が一つの世界観の元に構築されているために、作りやすい点である。
設定が用意されている世界の中で自由にキャラクターを作り上げて、自分なりのストーリーを用意できれば作れる。小説版TRPGのようなものだと考える。そして、それらの作品が大量に現れることで読者の分母数が相対的に増える。
例えば、一つの小説に1000人の読者が着く作品があるとする。シェアワールド作品の場合、10作品が発信されて同じだけの読者が生まれた場合、それはシェアワールド作品の読者と計算されて1万人の読者を保持する作品と言える。
これは、少し極論的な物であるが、シェアワールドの作品数が多くなればなるほど、シェアワールドの名前を目にすることになり、また一つでも爆発的なヒットを生み出せば、相対的に他作品の読者も増えて、一つのカテゴリーとして席巻する可能性がある。
そうなれば、KADOKAWAでは、シェアワールドの設定資料を作り出して売ることで新たな層を生み出し、更にランキングによって生み出される質の高いシェア作品を書籍化する。という可能性。
これが二次創作に纏わる可能性の話である。
他にも、二次創作許可作品の枠の拡大によって、四半期ごとにアニメ人気作品の二次創作がランキングを席巻し、またスピンオフ化しやすいように構築されて作り出されるために、『小説家になろう』であった二次創作で『死んだ主人公が好きな作品のキャラクターに転生。もしくはその本来いない家族に転生』などと言った売れない作品は生まれないだろう。
そうした文化が受け継がれているのは、『転生乙女ゲー物』や『悪役令嬢もの』だろうか。
死んだ主人公が、生前やって居た架空作品の乙女ゲーのキャラクターに転生する。と言うのは、ある意味では、作中作の二次創作と言える。
ちょっと特殊な文化は、『KADOKAWA小説投稿サイト』では、生まれないと思っている。
ここまで二次創作で起こり得る可能性について語ったが、次は、Web小説コンテストに関してである。
これは、各出版社も大賞と賞金を用意して新たな才能の発掘を目指しているので、変わらないのでは? と思うかもしれませんが、これは大きく違います。
各出版社の新人賞では、編集やその時期の流行りなどを見て、選考して最後に作家・編集部を交えて決める。
これは、いわば絵画の品評会である。その筋に精通した人たちが作品を決める。のと似ているように感じる。
その一方でWeb小説コンテストは、ランキングによる実力主義が求められ、最後に残った作品を編集部が先行する。
ここでこの700万円の賞金に関して言及したい。私は、Web小説投稿サイト単独で700万円を用意しているのではなく角川系列のレーベルがそれぞれお金を分担していると感じている。
そして、その分担金は、作品獲得の権利でもある。そのためにWeb小説コンテストは、品評会ではなく、高校野球のドラフト会議のような物になる可能性がある。
各レーベルがそれぞれ自分のレーベルカラーに合った市場のニーズに合った人気作品を発掘し易い。
そして発掘しやすいと同時に、編集会議などで通り辛い作品ネタを持つプロ小説家がこのコンテストに作品をぶつけてくる可能性もある。
そうなれば、プロアマ混在する熾烈な戦いへと発展して面白い作品が生み出される。
そして、一気に放出された才能は――
――一気に引いて、後には何も残らない。
と若干ホラー要素は入れてみました。最初はオリジナルティーのある物が沢山出てくるでしょうが、次第に売れるためには、という考えのもとで固定化する可能性もあります。いわゆる「テンプレ」です。
新たな投稿サイトの誕生による様々な起こり得る未来について話しました。
当たらなかったら『作者の妄想乙』とかと笑ってください。
私は、小説投稿サイトの誕生を楽しみに思うと共に、なろうとは違う成り立ち・コンセプトの下で運営される可能性があると考えており、現在は様子見というスタンスを取っております。
作家にとっては、書籍化はモチベーションの高まる話だと思います。ですが、そのために、現在よりも熾烈な環境での作家同士の生き残りの戦いがあるのを考える必要があるのかもしれません。
最後に警告ですが『小説家になろう』で投稿をしている作家の方々は、新しい小説投稿サイトができた! それに大手の参入だ!と喜び勇んで飛びつかないようにしてください。
『小説家になろう』とは違う歴史を辿るであろう投稿サイトは、客層や価値観、作品文化が違う場所かもしれません。そこに飛び込むために『小説家になろう』についていたファンの方々を蔑ろにしては、離れてしまいます。
一度離れたファンは、元には戻らない。一部、なろう人気で今をある。という事実を受け入れて、両方の小説投稿サイトを上手く活用できるように期待しております。
最後に――だれか『涼宮ハルヒの性転換シリーズ』をやってください!
あのダルデレ系の可愛いヒロインのキョンコのご尊顔を拝したいです!
最後に、作者の心の叫びでした。
以上、拙いエッセイですが、見て頂きありがとうございます。