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Zero[外伝]  作者: 山名シン
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夢ー王の力ー

ある日の夢で、総督は龍牙打倒の為戦力をあげるために仲間を増やし続けて日々の中に、一つの一族だけ失敗した事を見た。

恐らく彼らを仲間に率いれれば、苦労せずに龍牙を倒せただろう。

彼らの長の名は、「ユピテル」。

神ゼウスの生まれ変わりを自称し、その男の仲間は「武集」と呼ばれる鋼鉄の鎧を着た屈強な戦士達だ。

4武集、8武集、16武集から成っており数字はその中の指揮を務めるどれも強者ばかり。

あえて強い順に並べると、数字が小さい方から順に強さが決まる。

四天王と呼ばれる4武集が頂点に立ち、8武集、16武集と階級が下がっていく。

それぞれは、一人ずつ100人の兵を従えており、つまり4武集は合わせて400人が。

8武集は800人、16武集は1600人いる。

計、2800人の兵隊を従えさらに頂点に立つのが、この強者どもの長である、「ユピテル」だ。


ユピテルと総督は、度々争ったが一度も勝てた事はない。

ユピテルが強い訳は、その強情さと決して武器を使わず生身で挑む勇気と、これまで伝説の力として恐れられた「陸の紋章」の所有者だからだ。

大地母神「ガイア」が、この世に陸、海、空を生んだ時に作られたとされるこの紋章の力は、代々これを正しく扱う者が現れるのを願ったものだ。

天にゼウス、海にポセイドン、深地にハデスがいるように、空を守る者、海を守る者、陸を守る者の為に紋章が授けられた。


(総督ーーーー!!!!!楽しいなぁ‼貴様との対決は!!いつまでも戦おう‼戦友よ!!!ガハハハ‼だが、結果は何度やっても同じだがな‼)

雷、水、風、火を巧みに操りながら、男が総督目掛け殴る。

殴る。殴る。殴る。殴る。

ギリギリの所で生かされたのか、それとも呆れて止めたのかは知らないが、その男は毎度毎度、あっさりと勝負を投げてしまう。

しかし、総督は樹力の使い手でもあるため、雷、水、風、火を纏った拳を紙一重で受け流しその効果を受けずに済んだ。

受けたダメージは全て、これらの自然ではなく、男の拳からだった。

だからいつも総督は、アザをつけてその場を去っていたのだ。

それを相手は分かってるのだろう、いつも笑って総督を見送った。

(ガハハハ‼いつでも来いよ‼総督!!俺はお前を待っている‼いつまでもだ‼ガハハハ‼)

男の笑い声が、うるさく響く中で、総督は目を覚ました。

起きた時、いつもの朝は寝不足で不機嫌な総督は、今朝だけは、爽快感と共に心地いい目覚めだった。

隣を見るとゲーラがいない事に気づき、自分の為に飯を作っているのだろうと思った。


始めてこの(ウォールタウン)へ足を踏み入れてから既に二年が経ち、総督は22歳になる。

ゲーラは意外にもまだ18歳だという。

二年前、始めて出会った時大人びて見えた彼女は当時16だった。

幸せな時を過ごしていた。

子供が産まれればもっと幸せだろう。

総督は、ゲーラと一緒に過ごし変わっていた。

小さな鬼神や、武神の生まれ変わりと恐れられた総督はもういない。


昔、師匠「劉」から本を貰いその内容は、荒れた大地に着いた一人の英雄の物語だ。


その英雄は、元々殺人者で逃亡生活をしていた。

ある日に、出会った同業者に「どれ程逃げても所詮悪人。どうせ逃げるなら殺してしまえ。昔のように。」と脅しをかけられていた。

英雄は逃げ延びた先で、一人の女性と出逢い恋に落ち、結婚する。

身元を隠し、長く幸せな生活を過ごし、ついに子供も産まれる。

その子を後生大事に育てていたのだが、ある日に事件が起きる。

子供が母親に殺されたのだ。

実はその母親は、夫である男の身元を前からしっていた。

そして、自分の犯した罪を自覚させる為子供を殺したのだという。

その子は本当は血が通ってなく、既に瀕死の子供だった。

可哀想だとは分かっていたが、どうしようもなく不便で何をしても手遅れという子供だった。

その事にも気付かずに男は、その子を一生懸命に育てていたが、回りの大人達の命令で母親は子を殺した。

夫の目の前で。

男は怒りに狂った。

気付いた時には、妻は冷たくなっていた。

それどころか、逃げ延びた先の村人全員を殺してしまった。

そして、思い出したのだ。

あの日に受けた同業者の言葉を。

「逃げても所詮悪人。どうせ逃げるなら殺してしまえ。昔のように。」

男は我に帰った。

「そうだ。俺は所詮悪人。幸せなんて求めちゃいけない。殺してやる。俺以外の人間全てを。殺してやる。」

しかし、数日後、男を見たのは、その男が死体の状態であった。


何故、師匠、劉が総督にそんな本を読ませたのか。

それは恐らく、一度手を染めてしまったら、その手は二度と綺麗にはならない、という教訓であろう。

その数日後に、総督が始めて戦場へ出たのだった。

7歳の頃だ。


イナズマタウンから、彦五十狭芹(ひこいさせり)族の一人が突如、総督の前に現れた。


「総督様。ペルクシムと呼ばれる蛮族が会わせろと、申していますが、通しますか?」

「ペルクシム………桃か。面白い、いいだろう。俺にだろう?二人にしてくれ。」

ミスラが頭を下げると、さっと消えていった。

しばらくすると、またミスラが戻ってきて、外へ出て欲しいと告げてきた。


総督はゲーラ一族の外へ出てペルクシムと呼ばれる男を探した。

何気なく振り向くと、やはり、ゲーラ一族の村は跡形も無く見えなくなっている。

これだけは相変わらず不思議でならない。

「剣山総督………だな?会いたかったよ。」

「……………用件は何だ?」

「いや、単純に手合わせ願いたいと思うのです。有名な剣山の者の力がどれ程のものなのか。王に相応しいのかどうか。」

何故この男は剣山家の事を知っているのか、何故総督の事を知っているのか。

王に相応しいとは何なのか。

疑念が渦巻くが、考えていると、目の前の男が突然走り出した。

「ついてきてください。遥か彼方まで。私と、貴方の絶望的な差を、教えてあげますよ。」

その言葉に、少しの怒りを覚えて、彼を追いかけた。

(絶望的な差を見せる……か。何を考えてるは知らんが、何だろうか?気になるものが多い。俺を知っている云々よりも、それほどの自信を持ち、王に相応しいかどうか?聞きたい事が増えたな。)


ペルクシムと呼ばれる男は、走りながら剣を抜き総督目掛け飛んできた。

総督も、防ぐ為に重剣山越(ちょうけんやまごえ)を抜き応戦する。

ペルクシムの剣筋はどこか、懐かしいものを感じた。

だが、見切れないものではない。

総督は、樹力を上げて相手の剣を完全に封じ込める。

総督の目は濃い緑色を帯びている。

風や、地面が総督に力をひとりでに貸し与え、総督はそれに答えるように、流れるように剣を振る。

そして、ぶつかった時に山越の力を一気に放った。

落山(らくざん)コジオスコ(2228m)! 」

すると、山越の刃の長さから、透明な道のような筋が現れ(2228m)、その道から下へ重力の塊のようなものが落ちた(2228kg)。

ペルクシムの剣は完全に吹っ飛び、彼は彼方まで消え失せるが、まだ総督の視界に入っている。

「流石は、山越の力か。並みの人間なら腹から逆にへし折れてるな。」

ペルクシムはすっくと立ち上がると拍手をしながら総督に近付いてきた。

「それ以上近付くな!」

総督は、彼を睨み付けそう言った。

「ふっ。あぁ。悪かった。お手上げだよ。」

ペルクシムは笑いながら両手を挙げて続けた。

「だが、まだ足りない。それじゃあ駄目だよ。王の力には及ばない。まぁ可能性が無い訳ではないな。」

不適な笑みを浮かべながら言うと、[雅王拳]と囁き腕を構えると、段々白く染まっていきその腕はまるで猿の腕だ。

「何だ……それは?」

総督が目を丸くして見ていると、今度は男は上空高く跳び跳ねた。

「猿の迫撃(シミヤショット)‼ 」

猿の長い指が鋭く尖り、鋭利な刃と化した。

速い。

一瞬の内に、空を切り裂き、地面に落ちる頃にはその場所が白い灰に変わった。

総督は間一髪でそれを避けるが、地面が灰になっている事に驚嘆した。

あれを喰らうと、自分も灰になってしまう。

ペルクシムが、地面に着地しすると、同時に総督目掛け横跳びして追いかける


総督は、自ら近付いてきた敵を、薙ぎ払うように、目を見開き、山越の力を目の前で使う。

「落山キリマンジャロ(5895m)‼」

透明な道が出来、ペルクシムを通りすぎる(5895m)と、同時に剣の重さが上がり(5895kg)、落ちるように地面に穴を開ける。

速かったのは総督だ。

だが、紙一重で衝撃を喰らってしまった為に一歩二歩と、後ろへ倒れ込んでしまう。

ベコンっと折れ曲がった腹を見て、引き千切れない体を見ると、相当な頑丈な男だと感心した。

しかし、ペルクシムは生きていた。

そして、最後の力を振り絞るように言った。

「………それ、では、駄目だ。王には、勝てない。………クールタウンへ……戻りユピテルと戦ってみるといい。……予言しよう。……お前はその時。死ぬ。必ずな。」

そう言い残してペルクシムは逝った。


「名も知らぬ蛮族よ。お前の予言通りにはいかないさ。どんな手を使おうとも。俺は生き延びねばならん。生きて帰られねばならん。王の力とやらを、全て手にいれて、お前に見せつけてやろう。」


こうして、総督はゲーラ一族を出る事になる。

故郷であるクールタウンへ戻り、王の力を得る為に。

しかし、総督はまだ知らなかった。

妻、トリムールゲーラのお腹に、新しい生命が宿ろうとしている事を。


それから二年間、総督はゲーラ一族に戻る事は無かった。

そして、二年間、総督とトリムールゲーラの子供は一向に産まれる気配を出さずにいた。

ゲーラは、異例の二年もの間、子を腹に宿していたのだ。

それも双子を。


この時から、総督の運命の歯車は少しずつ、狂い始めるのだった。

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