海の王者ネプチューン
5000体のシャークが一斉に水を吐き出し破裂させながら向かってくる。
上に飛ぶもの、正面を突っ切るもの、横から攻めるものの[水爆拳]が水の刃を飛ばす。
シャーク一族の体内では水をいつでも作り出す事が出来る体質を持っている。
そして吐き出した水を拳で弾く事で爆発を起こす。
常に水を吐き、連打で水を弾き爆発させる。
目を瞑り全体が赤く灯っているのが分かる。
樹力は生命エネルギーを赤色で感じる事が出来るがそれは、生物に限った話ではない。
水や風、地面でさえも赤色で感じとる事が出来る。
色が濃ければ濃いほど、黒く見えるその赤色は、生物や自然の「強さ」を物語っている。
(……薄い……)
目を開き、樹力を全身で練り上げる。
総督は、押し寄せる津波のような大爆発の中を、駆けた。
ドンッッッ‼
シャーク達には目もくれず、後ろの巨大な二頭に視線を集中する。
リヴァイアサンとバハムートの豪快な轟音が谺する。
ギャアアァァアァァァン!!!!!
像の頭にガラガラ蛇のような音を立てているバハムートが海を吸い込み壊光線を放つ。
「ガラガラガラガラガラガラ」
鱗と鱗が重なりあい唸る音が妙にうるさい。
海が総督を襲った。
仲間のシャーク一族など眼中にないのか、巻き込みながら海の壊光線を撒き散らす。
その一撃は、大陸の破片を切り落とす程だ。
浅い海から深い海の底までの水を吸い込み吐き出すので、巨大魚やら巨大岩やらが色々混ざった壊光線だ。
「ガラガラガラガラガラガラ」
バハムートが動く度に起こる鱗が擦れる音で、総督の動きを鈍くする。
ただ幸い、バハムートは視力が極端に悪く、何発も放っている壊光線は一度も総督を捉えない。
しかしそれでも技の規模が大きすぎて当たらないにしてもそれなりの被害はある。
地面が揺れ動き、立っているのがやっととの事だ。
風が吹き乱れ、水しぶきが視界を悪くする。
(……前に進めん……)
いくら樹力で全身の力を何倍にもあげようと、本物の自然災害には勝てはしない。
総督は重剣山越を無理矢理引っこ抜き、力を込めると剣の体重が増える。
「キーン」と鈍い音を立てながらその重さは、地面を深くえぐり総督の視界を完全に壁一色にしてしまうほどだ。
跳んだ。
その重たい剣を抱えてガラガラとうるさい巨大蛇に、似合わない像の頭をした魔物に最大の重力を飛ばしてやった。
「落山……エベレスト(8848m)」
剣を振るうと、透明の道が8848m現れ、バハムートを包む。
その後、8848kgの超重量が下に降下し、バハムートを海の底へと沈めてしまう。
手の力を緩め、剣の重さを元の重さに戻す。
10m程飛び上がった所からの地面に叩きつけられた。
「……はぁ……まずは一体目…」
次に待っていたのはリヴァイアサンだ。
裂かれた大陸の破片の浮島に乗り、残りのリヴァイアサンを討伐しようとするが、早々休ませてはくれないようだ。
むしろ島に浮いている事が仇となる。
既に海に潜っていたシャーク一族の数体が下から水爆拳を繰り出した。
ダダダダダダン‼
水爆拳は水を弾き爆発に変える技。
つまり水が多ければ多いほど威力は上がり破壊規模も格段と上がる。
しかも海の中だ。
四方八方全て爆発物と考えればその威力は、先の水爆拳の比ではない。
切れた大陸の破片と言えど、人が5万人は軽く入れるぐらい巨大な島だが、下からの最大規模の水爆拳で全て粉砕してしまった。
(………これでは埒があかない……流石に多いな……)
先程の地震や荒波はまだまだ続いており、バハムートもいつ戻ってくるか分からない。
あれで完全に倒したとは到底言えないだろう。
それともう一つ思うのは、リヴァイアサンの姿が見えない事だ。
目を瞑り、生命エネルギーを感知するも海は広いし、赤いといってもほとんど黒に近い赤だから見分けがつかない。
自然はそれほど強力だということを海に入ってみるとよく分かる。
観察している間にも、モルス、ミデア、ラージの三種類のシャーク一族が高速で海を泳ぎ近付いてくる。
(…仕方無い…)
総督は全身を濃い緑色に変色させ、半径10mの自然全てを操った。
総督は自然神の継承者でないので、陸の紋章の力を使ったとしても「自然に返す」作業はしなければならない。
つまり、命を削って回りの海や風大地を操っているのである。
荒れていた波が、総督の回りだけを除いてピタリと固まる。
そのまま、突き上げるように海が引いていき、総督は海の上を立っているようになる。
「な、なんだ!?浮いてるぞ‼」
シャーク達がうろたえるのがはっきりと分かった。
「落山…円…コジオスコ(2228m)」
剣を構えて、円を描くように振るうと透明の道が半径1114m出来、その真下に2228kgの超重量が落ちる。
ドッシャァァァァン‼
その円に入っていた1500程のシャーク達を一撃で重力に沈めてやった。
だが海の上では威力は半減してしまうのは仕方無い。
そして、跳んだ。
さらに海を跳ね上げようと、落山を構えるもその時背後に殺気を感じ背筋が凍る。
擬態化し完全に見えなくなっていたリヴァイアサンの口の中から、無精髭の男が三叉槍を総督目掛け突いていた。
すかさず山越を背面に寄せるも、その三叉槍は剣をすり抜き衣服もすり抜いて、総督の体だけを確実に突いていた。
背後からの一撃。
そして防げない突き。
両腰を挟むように槍が貫き、真ん中の刃は背骨を貫き、へそから突き出ている。
「残念じゃったな。陸の王者よ。」
「……うっ!?……お前は……!!」
「……察した通り。わしが海の王者、ネプチューンじゃ…!!」
その槍は、体の水分を抜き取っている。
徐々に体力を奪われながら、ゆっくりと引き寄せられ、リヴァイアサンの口の中へネプチューンもろとも消えていった。




