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一章 その捌

 今回の黒真珠卿の屋敷への潜入作戦を考えている途中で、サツキはコハクの秘密をまた一つ知った。

 ──動物を操ることができるんだよ。もちろん、その動物の持っている能力以上のことはさせられないけどね。

 生まれたときはただの狼だったコハクは、人語を話せるようになったと同時にその能力を得たと言っていた。昨年の秋に知ったコハクの秘密は、彼女が金剛狼で人に変化へんげできるということ。龍玉国にしか生息しない金剛狼は、数十年前には絶滅したと言われている。

「そうですか。それならいいんです」

 コハクにはまだまだ沢山秘密があってサツキには知りたいことだらけだが、コハクから話してくれるまで待とうという気持ちが彼の中には近頃芽生えてきていた。

「そろそろ、レイの部屋に行って明日からの予定を立てようか」

「そうですね」

 ごく自然に手鏡を出し、髪に櫛を入れて紅を直し始めたサツキを見て、コハクは苦笑いを浮かべた。


 社の入り口前で馬車から降りたアユミは、側仕えの女性二人と護衛五人を連れて石段を上っていた。屋敷からこの社までは、歩いても十五分ほど。歩いて行きたいと言ったアユミに側仕えと護衛たちは困り顔で、だが頑として馬車で行くようにと譲らなかった。

 二十段ほどの階段を上がりきると、わずかに息が弾んだ。二年前だったらこのくらいの階段は駆け上がっても平気だったのに、とアユミは自嘲する。

 目の前には白い石畳が伸び、その先に本宮ほんみやがあった。飾り気がない素朴な造りだが屋根も外壁も真っ黒で、石畳との対比もあって重厚な存在感があった。本宮の側には仲良く肩を寄せ合った男女と、まだ小さな赤子を抱いた夫婦がそれぞれ数組ずついた。アユミは赤子を見てほほ笑み、そしてうつむいた。


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