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一章 その伍

「屋敷への滞在を許す。しばらくの間、妻を楽しませてやってくれ。──テツヤ、彼らに客間を用意してやれ」

 主の決定に驚きながらも、テツヤは女中頭を呼びつけて部屋の支度を急がせる。

「ありがとうございます。奥方様に喜んでいただけるよう、精一杯努めさせていただきます」

 深く頭を下げているサキの隣で、白髪の男はぎりぎりで失礼に当たらない程度のぞんざいな礼をしている。その姿を見たテツヤの心は、どうしてかざわついていた。

 今まで来た芸人の中には、礼儀を知らずに不作法な態度をとる人間もいた。一見、この男もその中の一人のようにも思えるが、長年貴族社会に係わってきたテツヤの勘が、それとは違うと告げていた。

 ミツアキもこの男に何かを感じたのか、先程からじっと見つめたままだ。

「そこの男、名は何と言う。──わたしと以前、会ったことは無いか?」

 男は頭を下げたままで、ミツアキの方を見ようともしない。

「この者の名はレイと申します。東霞ひがしかすみに来るのは初めてですので、お会いしたことは無いと思います」

「……そうか。部屋が整ったようだな。何か不自由があれば、部屋付きの女中に言うといい」

「ご配慮ありがとうございます」

 案内の女中に続き、レイたちが歩き出す。数歩進んだところで、あれからずっと花を見たままだったアユミが声を掛けた。

「その犬の名は何ですか?」

 一番後ろにいたサキが振り返り、立ったまま答える。

「体の黒色から取って『コク』と言います」

 サキの顔には、やはり人好きのする笑みが浮かんでいた。


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